我々と一緒に鑑賞しながら、つい普通の感想みたいな事を
つぶやく片渕監督に、ますます萌えてしまうワタクシ。
映画とともにコメンタリーは続く。
草津の家でお祖母ちゃんがくれた椿の着物より、すずさんが
持ってたカーディガンのほうが最後まで着る事になる。
径子さんにモンペを叱られて仕舞ってたから。
モンペ作りために着物を切ってしまうのは「間違い」。
解いて反物状にして縫い直すのが正しい。
スフは水で破れやすい。
すずさんがつぎはぎだらけのモンペ着ているのは、そのせい。
すずさんが悪いんじゃ無い。
改めて作ったモンペは少し前の良い着物が元だから破れない。
晴美ちゃんの巾着はモンペのポケットになる筈だった。
※当初は「よく余りがあったなぁ」と思ったもんだが、
すずちゃんは優しいねぇ…
径子さんのモガ・ファッション。実は少し流行遅れ。
円太郎さんが失業した時に退学して働き、古着を買った
のでは?実は堅実な人だと思う…と。
江波では近くで貝など漁れるので行商で売ったり、自宅で
食べたりしていた。
スミちゃんが入浴時の体洗うのに使ってるのは糠袋。
里帰りから戻って落ち込んだすずさんが、回覧板を出しに
行く時、畳の敷居は踏ませてない。
家を傷めるから当時の人は絶対に踏まなかった。
※少し前まではマナーとして残っていたかなぁ。
すずさんは大股では歩かないが、敷居またぎのときだけは
歩幅が広い。
埋め立てで海苔が取れなくなった後は大根を栽培。
脇を走る浦野の娘…。
憲兵さんは仁義なき戦いに出演された役者さん。最初から
キャスティングしたので本人と同じ顔になった。
いまや有名になった三ッ蔵。造り酒屋で、呉には結構お酒を
作る家があった。呉は良い水が出るのだろう。
蟻のシーン。もっと面倒だろうと思ったが意外とそうでも
なかった。
豆腐の配給も、すずさんが落っことしそうになった、あの
量で多分一家6人分。
砂糖を闇で買いに行った場所。店頭には物はなく、頼むと
奥から出してもらえた。高額で。
遊郭は古い木造と昭和モダンのアールデコが混在。
赤い塗装は古くからのもの。
※落語の「二階ぞめき」で私が連想するのは朱塗装の格子。
昔の遊郭を知るオジイさんに聞いた。でも当時は小学生で
興味本位で走り抜けただけ(笑)。
「竜宮城みたいだった」とのこと。
寿司屋も質屋もあった。(質屋がシブい!)
門の近くに交番がある。女郎さんが逃げるから。
電柱(?)にある「千福」の文字。タイアップ狙いという
わけではない。
千福は海軍にも納入していたメジャーブランドだったから。
※千福(三宅本店)HPにも記載あり。
長い航海でも風味が落ちなかったとして認められたとの事。
なお、「この世界」コラボTシャツが出たのは映画完成後。
(夕方)6時に帰ってくる周作さんのお仕事は録事。
奈良時代からある言葉で、海軍の検察。軍属で軍人に非ず。
軍で働く事務の人。でも最後の方では…。
戦況が悪くなり、沖縄から九州が戦場になるとして、国民が
死んだり負傷したりの場合を考えて身元票を付けるように
なった。輸血も想定して血液型も記載。
ただし、国民全員が血液検査してたかは不明。
※片渕監督の口から「不明」とか「分からない」とか言わ
れると驚いてしまうな、もう。
女郎さんが遊郭を出る時は首を白く塗る。すずさんは逆。
哲との一夜シーンで納屋にギターがある。
すずさんが結婚して絵を描かなくなったように周作さんも
ギターを止めたのだろう。
※周作さんは戦争の影響もあったかと…
入湯上陸は翌朝迄まで戻れば良い程度のもの。
階級が上がっている哲。この時19才だから実際のところ
タバコはダメ。タバコ包装は一色刷りのパッケージ。
物資(インク)不足が理由。
哲が歌ってるのはラバウル小唄。最近は知らない人も…。
晴美ちゃん早く寝るが、当時の子供だったら8時に寝ても
おかしくない。
哲は、けっこう戦場で「それなりの体験」をしている。
そうでもないふうだが…。
北条家を訪れた哲の心情を語る監督。
不遇と思い本気で奪いに来たのか…。
その辺は、私も予想できた範囲。
しかし、決めつけないのが片渕監督。
※確かに人の言葉や行動には「本心じゃないもの」も
含まれるからね…。
監督にとっては劇中に登場する人物も実在するような
ものだから…。
哲の声を演じる小野クンは監督に「哲はなぜ手を出さな
かったのか」質問。
監督の「いい奴だから」の返答に小野くん喜ぶ。
「オレ、いいヤツ演ってたんスね!」(客席も大笑い)
軍は意外と国民に優しかった。
不満の矛先が自分たちに向かないように考えてたのか、
ラジオにも演芸番組を増やすよう提案していた。
要一兄チャンの法要。
両親が歩く江波の海脇、当初すずさんが歩いてた道。
実はバスが通ってた。
帰りの汽車が揺れる。これはレールの継ぎ目と走る速度を
計算して3秒に1度の揺れにした。
以前は海軍兵が飲み歩くので灯火管制の甘かった呉だが、
さすがにこの頃は暗い。
機銃掃射。
すずさんと晴美を庇う円太郎が口ずさむのは、兵器を作ると
平和になるという平和軍縮前の歌。
空襲警報。
火の入ったカマドに水を掛けるのもダメ。
割れてしまう。監督がお母さんに叱られたたしいが、
やったのは「すずさん」だから…と。
落とし紙=トイレットペーパー。汲み取り式用。
新聞紙を揉んで柔らかくする。
新聞紙のインクでお尻が黒くなる。
呉港に地雷を撒かれ軍艦は出港不能に。
※ただし、後に進駐してきた米艦も入れない。
食卓に関して。
最初の雑草料理の頃、実はそこまで困窮してなかった。
すずさんは練習としてやってたのだろう。
だんだん副菜などは少なくなる。
男衆に魚があったり、親孝行で逆になったり。
お茶も色が薄くなり、終戦間際は白湯。
なぜか茶っ葉は配給になかった。自宅で採れるから?
海軍病院から家族に円太郎入院の通知が届く。
郵便局も女性を労働力として用いている。
広島放送局のアナも。
※大和撃沈情報は病院で…。
しかし「大和の錨は特殊で」などなど監督の薀蓄が
凄まじい。
呉駅は迷彩に塗られてる。※気付いてなかった…
何もしないよりイイだろうと、墨が塗られたという。
円太郎さんは士官待遇だが身元が分からず大部屋?へ。
外の運動場は今もグランド、日曜野球をやってるような
場所で、この頃は(当然)海兵が使っていた。
掛け声は実際は分からない。
代わりに海上自衛隊の号令を使った。
空爆。
民家に当たったのは流れ弾。下手。
レーダー撹乱用の錫箔テープが一緒に飛ばされている。
※鳥か何かと思っていた!
時限爆弾の炸裂。
フィルムに直接傷を付けて描く、ノーマン・マクラレンの
アニメーション手法で表現した。
※コメンタリーのおかげで、この時には泣かずにすんだ…
米軍が撒いた伝単。
爆撃があるから逃げろと言う内容で、実は呉を離れたい
すずさんの気持ちと一致していた。
しかし、
その通りにしていたらすずさんは8/6広島にいた事になる。
運命とは分からないものだ。
※この辺
監督はまるで実在の人物を語ってるかのようだった。
原爆投下。
広島の原子雲はキノコの形はしていなかった。
※どうしても例えるなら舞茸形?
長崎の原子雲は上部が丸っぽいキノコのカサ状。
呉は広島から南東20Km、これも音速と高速の時間差で
光と振動の到達点を計算した。
原爆の飛散物。北條家に広島の障子が届いているが、
むしろ北西の方面に多く飛んだと思われる。
試してみると分かるが、まず片手で草鞋は作れない。
※すずさん、やっぱり器用なんだな…
玉音放送。
上からラジオに繋がってる2本のコードがあるが、あれは
電源とアンテナ線。
放送終了と同時に径子さんはラジオを片付ける。ただし、
あの後、内容を解説する番組が放送された。
ヨーコと母の被爆。
※やっぱダメだ。ここで泣いてしまった。
周辺にも同様の人々が…。
原爆投下翌日、火災が発生して多くの人が亡くなった。
※改めて観て瓦礫を再現する美術の精巧さに驚愕する。
広島駅の駅舎は残ったが使いものにならず。駅の機能は
外に移っていた。
女たちは火をおこして食事を作る。円太郎は設計図を火に
焚べる。調整のための青鉛筆跡が多数ある。
エンドロール。
コトリンゴさんが作った曲名が「すずさん」。
「リンさんイメージ」だったはずが、どうしようと思った。
しかし、すずさんが想像するリンさんのイメージだから
これで良い…と。
最後、横に並ぶすずさんが赤でなく黒い主線なのは、鉛筆で
すずさんが描いたものだから。
エンドロール。
今まで分らなかった「男の子とオジイさん」が明らかに。
※幼少時の周作さんと…だと思っていたが違った。
未来の話だもんね…。
径子さんと周作さんは似とりんさるから当然か…。
エンドロールに文字表示される人数は増えた。
なお、作画のメイン3人はリテイクに関しても大きな働きを
してくれたとのこと。
最後の最後。
右手のバイバイでエンディング。
静かに、やがて大きく広がる拍手。
立ち上がった監督にスポットが当てられ、上映後のトークが
始まった。
(続く)