少年漫画史上、最高のアクション巨編として忘れられないのが「ワイルド7」。
私にとって特に印象深いのが「地獄の神話」だ。
航空会社経営の裏で暴力団を傘下に置き、裏ビジネスで財を成した神話3兄弟。
強引な末弟・元明は足を出し、ワイルドに処刑されるが、
長兄は復讐に燃えてワイルド抹殺を画策する。
そこに現れたのがギャング抗争鎮圧を生業とする殺し屋集団「シカゴの5本指」。
高値の売り込みにたじろぐ神話社長だったが、その実力の前に応じざるを得なかった。
目的達成の為には無関係な一般人の命さえ何とも思わない「シカゴの5本指」。
圧巻が、遠距離狙撃を得意とする黒人スナイパー・ジョー。
音で対象を察知する能力にも長ける相手に、我らが飛葉ちゃんも大苦戦。
本人も傷を負い、庇ってくれた人間は殺され、まさに「史上最強の敵」を迎えた緊迫感がヒリヒリと伝わる。
しかも、戦いの直前に交友を持った高齢の夜警は巻き添えで死んでしまう。
巻き添えというか、スナイパーが飛葉への当て付けで撃ち殺したのだ。
「もう定年で、あとは余生を静かに暮らすだけだよ」
「このオモチャも孫へのプレゼントさ」・・・そういう事を呟きながら
シンバルを叩く猿の玩具を幸せそうに見つめた夜警のオジイさん。
腹を撃ち抜かれ
「な、なぜ?」と言いたげな表情で倒れいく老いた夜警。
夜警の亡骸を抱きながら「恨みがあるならオレを撃て!」と叫ぶ飛葉。
笑って去っていくスナイパー。
何の罪もない善良な老人が虫けらのように殺されるシーン。
ここからワイルド7史上で屈指の個人対決、最高のアクションシーンの幕が開いたのだ!
遺恨を残し、スナイパーと飛葉は植物園を舞台に1対1の果し合いに挑む。
場所と時間を指定してきたのはジョー。
作者の望月三起也先生が「家族と一緒に植物園に行った時に思いついた」と語った対決の仕掛け。
「ここには身を隠せる」「ここには銃を仕込める」
750CCバイクでガラスを突き破り、植物園に乗り込む飛葉。
もちろんジョーは「こんな手にヤツは引っ掛からないだろうがな」と言いつつ
ピアノ線を張っていたのだが
飛葉は通路に丸太を投げ、それに乗り上げてジャンプして突入し、
ピアノ線でのギロチンを回避。
そこから身を潜めての狙撃戦が展開される。
時間を指定してきたのはジョー。
長い戦いの中で、暗闇になれば自分に有利と知っての事だ。
なお、決闘申し込みは、亡くなった守衛のアパート窓から投げ文として打ち込まれた。
飛葉が守衛の孫の遊び相手になっていたところ・・・。
遊んでいた道具は、守衛が孫に渡せなかった猿のオモチャだ。
普段ぶっきらぼうな飛葉ちゃんだが、こういう優しさ、人情が作風に膨らみを持たせるんだよな。
・・・とは言え、これも最後の最後、悪を撃つカタルシスへの導入部なのだから、
望月アクション漫画おそるべしである。
暗闇に潜みながら得意の長距離弾で弄り殺しを目論むジョー、
相手に気付かれないよう近付いての一撃を狙う飛葉。
緊迫の対決。
足を撃たれて引きずる音さえ察知され、飛葉は絶体絶命。
そういや、余裕の相手が急所を外して飛葉の胸を撃ち、
肺を貫通された飛葉が「き、きさま・・・」と言いかけて「ゴフッ」と血を吐くシーンもあったよな。
相手はニヤリと笑って「喋ろうとすると血が気管支から吹き出るぞ」などと言ったりして
子供だった私は、「そんな事になったりするんだ!」「貫通しても即死しないケースもあるんだ!」なんて
物凄く驚かされたものです。
ジリ貧の飛葉を見て勝利を確信したジョーは遂にその姿を現し、トドメの一撃を狙う。
万事休すかと思われた飛葉、しかし隠してあった拳銃で逆転の一発!
それでも致命傷を間逃れたジョーは「危なかった」と、再び暗闇に身を隠す。
逆転打の応酬に読者は冷や冷やドキドキ。
木にテープで貼り付けていた拳銃、バイクに装着していたショットガン。
飛葉もあらゆる手を尽くして相手を狙う。
そして・・・。
最後はカタルシス満点の結果。
「地獄の神話」では、それ以降も航空機で空中戦やったり
バイクでの路上チェイスがあったりで
アクションシーンに次ぐアクションシーンてんこ盛り。
シリーズ最高傑作の呼び声も高い人気作として
今も望月ファンたちに語り継がれています。
まぁ、「地獄の神話」以外も傑作エピソードに事欠かない作品ですけどね。
人情・アクション・悪党の魅力と暴虐・・・。
それが全て揃った「ワイルド7」
望月三起也先生が最も脂が乗っていた時期の大作。
当時としては異例の全48巻、ロングセラーとなったのも納得です。
掲載誌が少年キングだったのも良かったんでしょうね。
また読みたくなったな。
実家には全巻揃ってるから、帰った時また読み返してみよう。