じゃ、僕の話をします。

『本気食聡咲』の記事は「居酒屋・和食」カテゴリーよりご覧下さい。/※各掲載店の閉店情報等は基本的に追記しておりません。

東京銀座の中心で「チョウシ屋」のコロッケを齧る。(そしてハムカツサンドも齧る)

2020-12-20 | 洋食
暫く前ですが。

東京に行く機会がありまして。

その頃はまだ、今のように諸々が大変な状況になる前でして。

むしろ、その「直前」と言うようなタイミング。

今思えば、よく行けたなと思いますけど。

そんな晩秋の東京。

その中心、銀座。

周りは当然、ビルが立ち並び、煌びやかな街並みが続く。

そんな街並みに、突然、時間が止まったかのように佇むお店が現れます。

「チョウシ屋」さんです。

創業は昭和2年という、お惣菜屋さん。

と言うか、お肉屋さんでもあるようです。

そして所謂、「お肉屋さんのポテトコロッケ」の元祖が、こちらのチョウシ屋さんらしく。

その響きだけでも自分はお腹が空くのですが(笑)、その元祖と言われるなら買わずには居られない訳で。


パッケージにも、しっかりその旨が書かれてますね。


そしてこの見た目。絶妙な揚げ上がり。

口にすればその味わいは、紛う事なき、昭和から連綿と続く清く正しい「コロッケ」。

少し厚めの衣は、ラードで揚げているからかサクサクで軽やか。お菓子のようです。

そして噛み締めて行くと、ホクホクしたジャガイモの食感と肉の旨みが溶け合う。

嗚呼、確かにコレこそがあの「肉屋のコロッケ」の源流か、と。

夕闇に包まれる銀座の路地で自販機の前に佇み、立ったままコロッケに齧り付きつつ、唸りました。

…そんな、銀座の街角で立ち尽くしてコロッケに夢中で齧り付くとか、周りから見たら怪しげだったかも知れませんが(笑)、確かにこのコロッケ、他とは違う味わい深さが。

そのシンプルさ故に、尚更、ここまで違うものかと思いました。

例えば、スーパーや地元のお肉屋さんでも当然、コロッケを売っていて、安くて美味しい訳ですが、それとはやっぱり違う。

「元祖」と聞いて食べたから、とも思いましたが、本当に違う。

ジャガイモの潰し方も、程よくゴロゴロしてるんですね。そして味付けは、一般的なものよりも微妙に若干強めの塩梅。つまり、ソース無しでも幾らでも食べられる。見事に絶妙な塩梅です。

鼻に抜ける香りも独特。スパイスが利いているのか、炒めた玉ねぎの香りなのか。

いずれにしても、食欲を加速させる香り。

これは本当に、目の前にこのコロッケが山積みにされた皿があったら、延々と食べ続けられますね。

ちなみに、お店の方とお話ししたら、この時に使っていたジャガイモは北海道の南富良野産で、玉ねぎも同じく北海道産だと。

自分も北海道から来た事を告げたら、何だか喜んで下さりまして。北海道産の農産物を使って頂いている事に、こちらからもお礼を申し上げました。

そして、「チョウシ屋」さんの名物はコロッケのみにあらず。

メンチカツやトンカツ、ハムカツもあって、それらはお願いすると目の前で揚げたてをサンドイッチにしてもらえるのです。

しかも、パンは食パンかコッペパンを選べる。

今回は、あのマツコ・デラックスさんも絶賛したと言う…


食パンで挟んだハムカツサンドを購入。「ハムカツ」もお肉屋さんならではのお惣菜ですよね。

このパッケージも渋いというか、色合いやデザインがクール。島津家の家紋(何やらお店とご縁があるとか)と思しき、丸に十字のマークがこれまたカッコいい。


裏にはこんな記載も。至る所に昭和の風情が。


パンは耳付き。むしろ耳を落としてはもったいない。味わい深さも増すってもんです。これまた清く正しい。


そして、この断面です。

ソースの染み込み具合がたまらないです。

購入後、暫くしてから食べたせいも有りますが、パンには揚げたてのハムカツから移った湯気が元であろう、程よいしっとり感が。絹のような舌触り。そもそも、食パン自体のポテンシャルが高い。

ザクッと噛むと、これまた唯一無二の味わい。

ハムの厚みもちょうど良く、噛み応えがあります。そして、やはりお店オリジナルの甘辛いソースが圧倒的に素晴らしい。

一般的なウスターソースの様なとんがった感じはなく、中濃ソースほど甘過ぎない。他には無いですね。

この断面の、ハムカツとパンの境目は、旨味の桃源郷状態です。

ハムカツ、パン、ソースと、シンプルな組み合わせだからこそ、そのバランスの良さが際立つ一品。

恐れ入りました。

ちなみにこちらのお店は、札幌ススキノのとあるイタリアンにいらっしゃる、とあるソムリエさんに教えて頂きまして。

「チョウシ屋」さんの店頭で、ボトルに詰められたオリジナルのソースも売られていたので、お土産でそれを買ってお渡ししたら、とても喜んで頂けました。

このハムカツサンドを自宅でも作れますからね。

とは言え、やはりお店で買ってすぐの味わいには敵わないんでしょうけど。

それにしてもこうしたお店に出会うと、やはり東京って凄いなぁ、と思ってしまいますね。

また訪れたいもんです。諸々落ち着いたら、ですが。
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人情と風情と「蝦天分店」の天丼。

2020-12-02 | 居酒屋・和食
札幌中心部の路地に浮かぶ「天丼」の文字。



入り口からして、佇まいが渋い。


「蝦天分店」は、昭和38年創業の老舗の天ぷら屋さん。60年近い歴史です。

入り口はもちろん、店内も渋い。昭和で時を止めた様な空気感は、とても居心地が良い。

職人さんやスタッフさん達にも、皆さん「昭和」から「令和」まで三つの時代を駆け抜けて来た、力強いオーラを感じます。つまりは皆さん所謂、「人生の先輩方」です。

職人さん達は、分業がしっかりされてる模様。天ぷらを揚げる方、その揚げ上がりを見ながら、タイミングよく丼にご飯を入れ、味噌汁などをセッティングする方、天ぷら以外の料理を準備する方…

流れよく、阿吽の呼吸で作業が進んで行きます。

カウンターとテーブル席があり、カウンターの前には天ぷらを揚げる大きな鍋が。

こちらの天ぷら、揚げ方が独特。通常は、油の中で泳がせる様に浮かべて揚げますが、ここでは鍋を斜めにして、その鍋肌で揚げ焼きするかの様に揚げるんですね。

少ない油で揚げる、イタリアンのカツレツのような感じ。

そのせいか、食べても一般的な天ぷらよりも油が軽い印象。そして、鍋肌で揚げるから、天ぷらの片面が平らになってるんですね。この形状は他には無いかと。

そんな独特な揚げ方を目の前にしつつ、お通しで瓶ビールを。一杯目は女将さんがお酌して下さいましたよ。ありがたい。


ふと見ると、カウンターの上には北海道出身の漫画家、「おおば比呂司」先生のイラストが。


おおば先生は、こちらのお店の常連だったそうです。

この絵柄、昭和世代の道民ならお馴染みでは無いかと。僕も、色々な広告で目にしました。

そのおおば先生のイラストによるアニメで、「蝦天分店」のCMも作られたとの事で、その絵コンテ的な物がカウンターの上にありました。

ビールを傾けつつ、思わず見入ってしまいます。それにしても、懐かしい絵柄です。料理を待つ間も退屈せずに済みます。

やがてかき揚げが登場。

カラッとしてる…と言うか、ザクッとした食感。おつまみには丁度良いですね。素材の旨味も封じ込まれてます。

天つゆも軽めの味わい。ちょっと付けたり、たっぷり付けたりして、その食感と風味の違いを楽しんだりして。

そして真打ちが目の前に。


「蝦天分店」の真骨頂、特上天丼。

胡麻油と、甘辛いタレの香りが渾然一体となってふわりと立ち登ります。当然、食欲を掻き立てられる。

やはり、その「揚げ方」のせいか、一般的な天ぷらより「花」が少なめ。天ぷらを揚げる時に、衣を上から振り掛けて「花を咲かせる」なんてよく言いますよね。

食べても油が軽く感じるのは、その「花」が少なめなせいもあるんでしょうね。そして、見えづらいですが天ぷらの下は平ら。

こちらも「カリッ」とした食感。サクッとふんわりした天ぷらも好きですが、食べ応えとしては個人的にはこちらも好きですね。

ふと店内を見ると、いつの間にか数組のお客さんが。皆さん、一様に天丼を掻っ込んでいます。

僕も負けじと掻っ込む。合間には冷たいビールも流し込む。それにしても、天丼は食べると元気が出ますね。

天丼を食べつつメニューをよく見ると、「蝦カレー天丼」の文字。

……今、ご想像された通りです。

メニューの写真を見ると、丼の上に蝦天が載り、カレーがかかってました。

気になるけど…頼むには勇気のいるメニューですね。
σ(^_^;)

ところで「分店」と言うからには「本店」はどこだ、と思う方もいらっしゃるかと。

「本店」はススキノ交差点の近くにあったんですが、数年前に閉店してしまったんですね。

でも、「本店」とは営業的には分離していた様で、他にも数軒「蝦天」と名の付くお店が札幌市内にあるのですが、それらも同様らしく。

それぞれ独自に、札幌の古き良き天ぷら文化を今も支えてくださってるんですね。

天丼をしっかり平らげてお勘定をしていたら、女将さんから「いやぁ、良い食べっぷりと飲みっぷりでしたねー。」と。

思わぬお褒めの(?)言葉に恐縮。

女将さんはしばらく前、テレビでお見かけしていました。

こちらのお店、札幌大通の三越地下にも出店していらして、札幌がひと頃、コロナで多くのお店が通常営業を自粛して、テイクアウト主流になっていた時期だったと思うのですが、皆に元気になって欲しいと、期間限定で格安の天丼を提供なさってたんですね。その事がテレビでも伝えられていたんです。

やっぱり、天丼って「ハレの食べ物」と言うか、テンションが上がると言うか。元気出るんですよ。食べると。

女将さんも、そんなお気持ちからだったのでは無いかと。このコロナ禍でも、ご自身が出来ることをしっかりやりたい、と言ったお話をされていたと記憶しています。人情を感じましたね。

ちなみに。

「蝦天」味の南部せんべいがありまして。おおば先生繋がりで、岩手の南部せんべいメーカーとコラボした商品らしく。

レジにあったので、この時もつい買ってしまいました。食べると本当に甘辛い天丼の味が。

ご飯挟んだら、そのまんま天丼になるんじゃ無いか、ってくらいです。

札幌三越地下の、全国のお菓子を売っているコーナーにも置いてあります。南部せんべいだからか、何故か「東北地方」の棚にありますが(笑)。興味のある方は是非。
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