その日も朝から暑い日でした。その河原に行くための道路は、先に橋があるという理由で大変混みます。ですから七時すぎには河原の駐車場に車を止めていました。
カメラの支度をして河原に出て歩きはじめました。暑くなる雰囲気でしたが、草の生えているところはまだ朝露が残っており、ズボンのすそを濡らしております。前日から想定していた撮影ポイントを探しながら、広い河原の川沿いの草地を上流に向かって歩いておりました。
2キロほどで大きな堰にぶつかりそこで一旦歩けるような草地はなくなります。
お目当てのポイントも見つからず、そのうえめぼしい鳥もおらず、堰から下流に戻ることにしました。ずっと晴れていましたので河原の道も草地も、真っ白に乾いています。歩き始めた時にはもう30度を超えていましたが、すでに十時過ぎです、腕時計の温度計は38度近くになっていました。
収穫もなく何処かへ移動するか、しばらく休憩するかと思い、土手の並木道にある草に囲まれた小さな木陰で一休みとしました。
草地に平らな石があってちょうど腰かけるにはいい具合です。その木陰だけ草が生えていて涼しい風も時折吹きます。
土手の上ですから広い河原と広い川面、そして対岸の広い河原が一望できます。
木陰を作ってくれている木にセミが飛んできて鳴きはじめました。狭いけどナイスな木陰で、しばらく休むことにしたのです。木陰の気温は30度前半まで下がってきました。
土手のすぐ下の河原に車が来てとまりました。男女が下りてきました。男性が荷物を下ろそうとしています。女性がこちらに土手を上ってきました。
その女性が私に言いました。
『ここで楽器を弾いてもいいですか』
私がどういう事かと聞き直すと、
『主人が尺八を吹いて、私がハーモニカを吹きます』と言うではありませんか。
彼女をよく見ると譜面を立てるものとシートを持っています。
狭い木陰で、私の後ろで楽器を奏でようというわけです。
『それでは私はここから退けと言う事ですか』と尋ねると、
『そうではありません、ここで吹いてもいいですかと尋ねているのです』と言います。
『でもこんなに狭いところですよ、私は立ち退かざるを得ませんね』
どうもこの二人はいつもこの場所で楽器を吹いているらしいのです。でも今日は私がいます。暗に私に退いてほしいのです。そんな感じです。一般的に行ってこういう場合先に来た人に優先権があります。どうぞと少し動いて場所も開けることもありますが、横で楽器を鳴らされてはたまりません。
『最近公園なんかで、クラリネットやオカリナを大きな音で吹いている人がいますが、その空間には人は入れなくなってしまうよね』と言ってやりました。
下の河原で荷物を下ろしているご主人は様子を理解したのでしょうか私にしきりに会釈をしてくれています。
ところがその女性はさらに、こう言いました。
『私はバカだから言い方がわかりません。どう申し上げたらいいのですか、教えてください』
最近こういう女性がよくいると思いませんか。職場かどこかで男性と多く接しているのでしょうか、男性慣れして絶対言い負かしてやろうとする年配の女性です。
呆れ果てました。でもこちらも意地があります。『ご迷惑かけます』と挨拶がないのなら、場所を空ける気はありません。
そこで下かららご主人が、
『すみませんでした、別のところにも場所がありますからそちらへ行きます。どうも』と声を掛けてきました。女性は仕方なく車に戻っていきました。広大な河原です、他にも木陰はあるでしょうに。
最初のボタンをきちっと掛けてくれれば、すぐに譲ったかもしれないのにと思ったのでした。
カメラの支度をして河原に出て歩きはじめました。暑くなる雰囲気でしたが、草の生えているところはまだ朝露が残っており、ズボンのすそを濡らしております。前日から想定していた撮影ポイントを探しながら、広い河原の川沿いの草地を上流に向かって歩いておりました。
2キロほどで大きな堰にぶつかりそこで一旦歩けるような草地はなくなります。
お目当てのポイントも見つからず、そのうえめぼしい鳥もおらず、堰から下流に戻ることにしました。ずっと晴れていましたので河原の道も草地も、真っ白に乾いています。歩き始めた時にはもう30度を超えていましたが、すでに十時過ぎです、腕時計の温度計は38度近くになっていました。
収穫もなく何処かへ移動するか、しばらく休憩するかと思い、土手の並木道にある草に囲まれた小さな木陰で一休みとしました。
草地に平らな石があってちょうど腰かけるにはいい具合です。その木陰だけ草が生えていて涼しい風も時折吹きます。
土手の上ですから広い河原と広い川面、そして対岸の広い河原が一望できます。
木陰を作ってくれている木にセミが飛んできて鳴きはじめました。狭いけどナイスな木陰で、しばらく休むことにしたのです。木陰の気温は30度前半まで下がってきました。
土手のすぐ下の河原に車が来てとまりました。男女が下りてきました。男性が荷物を下ろそうとしています。女性がこちらに土手を上ってきました。
その女性が私に言いました。
『ここで楽器を弾いてもいいですか』
私がどういう事かと聞き直すと、
『主人が尺八を吹いて、私がハーモニカを吹きます』と言うではありませんか。
彼女をよく見ると譜面を立てるものとシートを持っています。
狭い木陰で、私の後ろで楽器を奏でようというわけです。
『それでは私はここから退けと言う事ですか』と尋ねると、
『そうではありません、ここで吹いてもいいですかと尋ねているのです』と言います。
『でもこんなに狭いところですよ、私は立ち退かざるを得ませんね』
どうもこの二人はいつもこの場所で楽器を吹いているらしいのです。でも今日は私がいます。暗に私に退いてほしいのです。そんな感じです。一般的に行ってこういう場合先に来た人に優先権があります。どうぞと少し動いて場所も開けることもありますが、横で楽器を鳴らされてはたまりません。
『最近公園なんかで、クラリネットやオカリナを大きな音で吹いている人がいますが、その空間には人は入れなくなってしまうよね』と言ってやりました。
下の河原で荷物を下ろしているご主人は様子を理解したのでしょうか私にしきりに会釈をしてくれています。
ところがその女性はさらに、こう言いました。
『私はバカだから言い方がわかりません。どう申し上げたらいいのですか、教えてください』
最近こういう女性がよくいると思いませんか。職場かどこかで男性と多く接しているのでしょうか、男性慣れして絶対言い負かしてやろうとする年配の女性です。
呆れ果てました。でもこちらも意地があります。『ご迷惑かけます』と挨拶がないのなら、場所を空ける気はありません。
そこで下かららご主人が、
『すみませんでした、別のところにも場所がありますからそちらへ行きます。どうも』と声を掛けてきました。女性は仕方なく車に戻っていきました。広大な河原です、他にも木陰はあるでしょうに。
最初のボタンをきちっと掛けてくれれば、すぐに譲ったかもしれないのにと思ったのでした。