もう一枚、ジョー・ヘンにお付き合いを。以前、拙HP”BLUE SPIRITS”で本作をUpした際、「TOPの‘Tres Palabras’を聴くと、こりゃ、演歌ですよ」と、頓珍漢なコメントをしている。つい最近、この曲がキューバの作曲家、オスヴァルド ・ファレスが書いた名曲と知りました。正に浅学の極みです。
本作の録音は73年ですが、リリースされたのは75年、この頃はもう「ジョー・ヘンは何処へ行ったの?」とジャズ・ファンの記憶から遠ざかっていた上に、軽目のカヴァが災いしたのか、関心度が薄い一枚だった。ただ、多重録音とかマルチ・リードで演奏するのではなく、本来のts、一本に絞っている所に好感が持て、ダメもとで拾った記憶があります。
当然のことながらパーカッションを利かせた有り触れたラテン・ジャズではなく、ファンクのスパイスを濃い目に絡ませ、時代性を確りと取り込んでている。ただ、そこにルイス・ガスカがアレンジする‘Tres Palabras’の演歌ブルース(テーマ部分)が入り込むと、多国籍・ごった煮を連想しますが、一本筋が通ったジョー・ヘンのtsが見事に吹き消している。
泣き節の後、テンポを速めたジョー・ヘンのtsが実に心地良く飛び出す。所々、ハッタリを効かせながら流動感を持たせ、「起・承・転・結」が見事に整ったソロは出色の出来です。それに音がイイ! CA、バークレーのファンタジー・スタジオで、Jim Sternというエンジニアの手で録音されていますが、ジョー・ヘンの「音色」が抜群。BNの重量感ある黒さと異なりタイトで澄み切り、それでいて密度が濃い黒さです。
B面の二曲も、J・Heardの鼓膜を強く刺激する図太いファンク・ベース、小気味よく煽るパーカッションとリズムに乗って、時折り、ダーティさを醸すジョー・ヘン節が炸裂する。それにしてもtsの鳴り具合は全キャリアの中でも指折りです。また、タイトル曲でのG・DUKEのエレピも、メリハリがあって聴かせます。
ただ、A-2のオリジナル‘Las Palmas’はやや考え過ぎ、消化不良で、B-2のラストのパーカッション・ソロは付け足し気味で長過ぎます。この辺りが上手く調整されていたならば、と思います。
このアルバムは当時の米国のジャズ・アルバムで27位にチャートインしたそうです。因みにショーターの”NATIVE DANCER”は16位とのこと。両作品の狙い所は異なるけれど、我が国の世評は月とスッポン以上の差がある。その点、本国は違和感がありませんね。個人的にも”CANYON LADY”が断然、月です。いい歳して、また、メデイァ、世間に楯を突いちゃいました(笑)。
田中禮助氏の言葉を借りれば「粗にして野だが卑ではない」ジョー・ヘンのtsが壮大に鳴り響く。
”Bluespirits20100608”
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます