グライダーの翼の下面、真ん中にあるセンターファスナー。
これが閉め忘れていたら、何が起こるか皆さんは知っていますか?
実は何度か飛行中に、私は実際に実験したのですが、ファスナーを開き始めたとたん、ノーズを下げて速度が速くなり始めるのです。
これは何故でしょうか?
センターファスナーが飛行中開いていると、そこから大量の空気が翼の中に入ってきます。
この結果、ハンググライダーはパラグライダーと同じ様に翼内の圧力が増し、最も剛性の弱い下面がふくらみます。この下面の膨らみの結果、上部のメインセールが下に引き寄せられてしまい、ウォッシュアウト、つまり、ネジりさげがなくなる動きが出てきます。
こうなるとどういうことになるでしょう。
ネジりさげがなくなるのですから、グライダーは増速します。
グライダーの増速は、更なる翼内への空気の流入へとつながり、更にネジリ下げは減少。つまりインフレーションを起こし、グライダーは一瞬の内にダイブへと入る可能性があるのです。
怖いのはこれだけではありません。
仮にこのインフレーションが途中で運良く止まり、そのまま飛行が可能であったとしても、その状態で、もし、旋回に入ってしまうと、空気にも慣性力は働きますから、翼内の空気はまるでカップのコーヒーをかき混ぜているように、外側に移動し、外側の翼内の圧力を上げます。
この結果、外側のネジリさげだけが著しくなくなり、バンクが戻らずにそのままスパイラル降下に入ってしまうことが、理論的には十分に起こり得ます。
安易に開閉できるセンターファスナー。しかし、これの閉め忘れは意外なほど怖いものなのです。
これからは、皆さんがハングで飛ぶ前は、このセンターファスナーがちゃんとしまっているか、しっかりチェックするようにしてください。