新生ビッグバードのステップアップ。その登場の裏舞台
ハンググライダーも、国産機が登場しなくなって久しくなった。
が、実は、このたび久々に国産機が登場するという喜ばしいニュースがあった。
機体名は「ステップアップ」。
この名前を聞いて、ちょっとハング歴のある方は「ん!」と思うだろう。
そう、その通り。今回ご紹介する「ステップアップ」は、あのビッグバードの名機「ステップ」の再来なのだ!!
最初はフランスのラムエッティーの機体のライセンス生産をしていたが、独自の開発で、「シルエット」や「ソルジャー」などの機体も発売。当時は競技会でも、これらの機体を愛用するコンペティターは多かった。
しかし、時代の流れと共にハンググライダーの売れ行きは低迷していき、ビッグバードというメーカーは、スタッフをそのままに、別にウルトラライト機を作るメーカーへと移行していった。
しかし、このたび、ビッグバードは久々にハンググライダーを作ることになったのである。
この新しい機体「ステップアップ」をプロデュースしたのは、あの「バーズアイビュー」である。
したがって、ステップアップの製造元は新生ビッグバード、販売元はバーズアイビューの形で、今後販売展開していく運びとなるそうだ。
ステップアップ試乗記
今回私がお借りしたのは、ステップアップの15サイズ。
ステップアップは他にも17サイズがあり、現在この2サイズが存在する。
ステップアップは、正直言って、過去ビッグバードが開発した「ステップ」とほとんど違わない。
これは、現在の日本では「耐空証明」を取ることが出来ない切実な事情がバックグラウンドにある。
現在の日本では新機が出てきても、それをテスト出来る設備がない。
昔はアメ車に治具をとりつけ、それにハンググライダーを取り付けて強度テストをしていたが、現在はそのような設備もなく、新機を国内で認可することが出来ないのである。
そのような理由があるため、ステップアップは基本的には過去にあったステップと大きく構造は変わらない。
しかし、その細部を見てみると、やはりというか、設計者のこだわりを見つけることが出来る。
まずはゼロバテンが2本となったこと。
これにより、ピッチの安定は向上する。
そして、過去ステップにはなかったノーズコーンが追加された。
翼を見てみると、バテンはすべてアルミ製。
過去、ステップで使われていたグラスファイバーロッドは使用されていない。
翼端を見ると、リミッターがなくなっている。しかし、その代わりに、ラフラインが一本追加された。
設計者の話だと、余計な慣性重量をまして、ロールのレスポンスを悪化させることを防ぐためにこの構造にしたという。
そして、コントロールバー周りは、見た目はステップと同じでも、その寸法は全面的に変わっている。
全体に取り扱いやすくなるように小さくしたそうだが、15サイズの場合、コントロールバーの付け根の位置は手前になり、ベースバー位置は以前よりも前方へと移動した。
これは結果的にスターティックバランスが改善され、それでいてフレアーも効きやすくなる好ましいものだ。
更に、ベースバーの位置が前方へと移動したことにより、他の外国機から乗り換えた時も違和感を覚えないものとなった。
以前のステップでは、ベースバーの位置がそれまでの国産機の流れを引いていたため、手前の方に位置し、このベースバーポジションで慣れたフライヤーが外国機に乗り換えた時、それまでの習慣で思わず手前にベースバーを引いてしまい、スピードを出しすぎてしまうことがあったが、今回のステップアップでは、そのような問題は起こらないであろう。
次回、試乗記へと続く。