今回は、ちょっとマニアックな機体をご紹介いたします。
知っている人はほとんどいないでしょうね!
かなり古い機体で、かれこれ20年は前だと思います。
もともとオーストラリア、モイス社でGTRという機体が作られていましたが、それを世界戦用に改良した結果、リックダンカンが本当に世界選手権を獲ったという名機です。
しかし、この機体。性能が良いのかというと、実は前回ご紹介した「エクセル」よりは正直飛ばなかったように思えます‥。
それではなぜ、今回「名機」として紹介したのかというと‥。
ハンドリング!とにかくハンドリングなのです!!!
この当時は、機体の性能を上げるため、スパーを何重にも入れて固くして性能を出していました。
今のように、まだ「ステップダウンリーディングエッジ」の発想がなかったからです。
その結果、高性能機はどうしてもスパーが重いものとなっていました。
前回ご紹介した「エクセル」もこの例外ではありません。
スパーが重くなると、当然ハンドリングは鈍重となります。
しかし、しかしながら、モイスのワールドビータはこの鈍重さと機体のつくりがマッチして、とても良かったのです!!
今の世代の方はピンと来ないかもしれませんが、ハンドリングが鈍重ということは、それだけ安定性も良く、雑なパイロットの操作も許してくれる「扱いやすさ」を持っていたのです。
だから、確かにコントロールの効きは悪かったのですが、一度曲がり始めたら、とても扱いやすい特性を持っていたのです。
正直、初めてこの機体に乗ったときはカルチャーショックでした!!
「これ、重いだけじゃん‥」。
しかし、しばらくこの機体に乗ったら、私の印象はがらりと変わりました。
疲れない‥。一度バンクに入ったらずっと楽に飛べるよこれ‥。
実はこの機体、日本では西富士エリアのフライヤーに大人気だったのです。
理由はやはり、荒れた風の中でも楽に飛べる「安定性」を持っていたからです。
残念ながら、このワールドビータはすべて不幸な火災にあってしまい、今は一機も日本に残っていないはずです‥。
軽いハンドリングがもてはやされる現在。こんな面白いグライダーもかつてはあったということも、みなさんに知っていただきたいと思います。