今日のひとネタ

日常ふと浮かんだことを思いのままに。更新は基本的に毎日。笑っていただければ幸いです。

PYGが井上尭之バンドだった件

2018年05月21日 | ギターと楽器のこと

 井上尭之さんの「スパイダースありがとう」という本は愛読書で、今回井上さんの訃報を聞いて「そういえば、PYGはちゃんと聞いたこと無い」と思いベストアルバムを聞いてみました。

 井上尭之さんについては、私の場合きっかけは「太陽にほえろ」「傷だらけの天使」のサントラでしたが、そのうちジュリーのバックで演奏してる姿を見て「かっこいいなぁ…」と。実はスパイダースはギリギリテレビでみた記憶があるのですが、そこでの井上さんは記憶にないので。

 「太陽にほえろ」も「傷だらけの天使」もサントラを何種類か持ってて、「太陽にほえろ」は全部大野克夫さんの作曲で、「傷だらけの天使」は井上尭之さんの曲もいくつかあります。どれも短い曲が多いので、あの感じの曲をもっと聞きたいと思ってたら、PYGのアルバムでその辺が出るわ出るわ。

 「太陽にほえろ」のサントラに詳しい方はわかるでしょうが、「尾行のテーマ」をフルートのソロではなくボーカルを入れたものとか、「怒りのテーマ」に歌詞を乗せて歌ってるものとか。思わずにんまりとしてしまいました。あのサントラに夢中だった小学生から中学生の頃にPYGを知ってて聞いてたらはまったかも。

 どの曲も井上尭之さんのギター全開ですが、ソロの音作りとかフレーズとかを聞いてて一番似てると思ったのが甲斐バンドの大森さん。もちろん当時の日本のギタリストとして井上尭之さんは当然意識される存在だったのでしょうが、甲斐バンドは昔からステージでPYGのカバーをやったり、甲斐さんは「松藤・甲斐」で「花・太陽・雨」をカバーしてたりしたので、相当リスペクトが強かったのでしょうね。私もあらためてPYG聞いてみて、凄く気に入りました。コピーバンドやってみたいくらい。

 それにしても、井上尭之さんは本当に「オレが、オレが」と出てくるタイプではなく、作曲家としてレコード大賞を獲っても映画音楽で賞を貰っても大御所のようにはふるまわず、「太陽にほえろのテーマ」については「作曲は大野克夫さんだから」といい、ジュリーの「危険なふたり」も「レコードではオレじゃなくて松木恒秀さんが弾いてるの」とあっさり言いますし、まったく人の褌で相撲を取るタイプの人ではないですね。

 「スパイダース ありがとう!」という本は、私はたまたま発売当時に書店で見かけて買ったのですが、これは本当にいい本です。井上尭之さんがどういう人で、どういう思いで活動していたかを知るにはこれが一番。これを読むとWikipediaでいかに適当なことを書かれているかがわかります。

 PYGについて解説すると、グループサウンズのスーパースターだったジュリーとショーケンとをツートップにして、演奏の方はタイガース、テンプターズ、スパイダースから実力派のメンバーが集まった当時としてはスーパーグループでした。デビュー曲のレコーディングには100時間を要し、音作りも当時の日本としては画期的な方式を取り入れてたそうです。井上さんの著書によると「それは決してわがままではなく、ミュージシャン主導の制作へと、すべてのシステムを変えていこうとしていたのです。その先にあったのは、良いものを作りたいという一心でした。」とのこと。

 しかし、「いざを開けてみるとどこの公演会場もガラガラ。逆にお客が満杯の野外フリー・コンサートに出演すれば『帰れ!』コールに、空き缶、空き瓶、ゴミの集中砲火を浴びる始末」だったそうです。結局PYGは半年間の活動で1000万円の赤字を出して、自然消滅となったとのこと。その後、失意の中でジュリーのバックバンドとなったわけですが、読んでいて辛い部分も多かったり。

 PYGが成功しなかったことでその後の音楽人生が大きく変わった気がしますが、前述の著書は本当に正直にいろいろ書かれているので、まったく飾らない人柄なのだとよくわかります。

 晩年は体調が良くなかったようですが、GSのギタリストがいかにして独学でオーケストラのスコアまで書けるようになったか、その情熱とかノウハウについてもっともっと語って欲しかった気はします。私にとって憧れの人でした。合掌。