辺野古への埋立土砂を搬出している琉球セメント安和鉱山が、森林法で義務づけられている林地開発の知事許可を受けないまま採掘行為を行ってきたことを指摘してきた(詳細は3月30日の本ブログを参照)。
下の写真は同鉱山の全景だが、赤丸の部分には以前、部間山という標高306mの山があった。しかし、その部分が林地開発の手続きもないまま削り取られてしまったのだ。
森林での開発行為については、森林法でその手続きが定められている。地域森林計画の対象となっている民有林は、保安林以外の普通林であっても、水源の涵養・災害の防止・環境の保全などの公益的機能を有していることから、1ha以上の土地の形質変更を行うためには林地開発の手続きを行い知事の許可を受けなければならない。これは、鉱山や採石場での採掘行為にももちろん適用される。違反した場合は、懲役・罰金刑まで定められている厳しい法律である。
下図は、沖縄県森林管理課で入手した安和鉱山付近の森林計画図(一部)である。名護市と本部町の境界線(下図の赤線)から北西側の本部町一帯が地域森林計画の対象として指定されている(緑色に着色した部分)。
中央部の平坦地とその北側の段状の土地はすでに採掘が行われているが、その辺りも地域森林計画の対象地である。当然、林地開発の手続きを行わないと土地の形質変更ができないのだが、琉球セメントはその手続きを行っていないことが明かになった。森林法違反の疑いが強まっている。
国土地理院の地形図(昭和56年3月発行)でも、当時、部間山(306m)があったことが分かる。
林地開発の手続きは昭和49年に制定された。従ってそれ以前から開発されていたのであれば、林地開発の手続きは必要ではない。沖縄県も、「開発の過程が分からないと違法と断言できない」という慎重な態度をとっている。しかし、この一帯は昭和54年以降に開発されたことが明かになっている。
たとえば、琉球セメントが発行した『沖縄にありて 琉球セメント20年の歩み』(昭和56年9月発行)には次のように記載されている。
「当社採鉱部では、部間山頂を目指して開鉱を進めていたが、---昭和54年には必要な土地を購入した。これらの土地取得は、山頂道路の完成と相まって、標高306mの部間本山丁場の採掘が可能となり、昭和54年5月から開鉱に着手した」
沖縄平和市民連絡会は、3月30日、沖縄県知事に対して、この問題の調査を求める要請書を提出した(3月30日のブログ参照)。県は、4月10日、琉球セメント社に事情聴取を行い、必要な資料の提出と現地への立入調査を申し入れた。
森林法第10条の3では、知事は、違法開発の事実が確認されれば、開発行為の中止や原状回復を命じることができると定められている。沖縄県の毅然とした対応を求めたい。