今日(10月7日・土)は、久しぶりの辺野古大行動の日だったが、急な所用のために辺野古行は中止。1日中、ひたすらパソコンに向かいあった。
知事は10月4日、国土交通大臣の辺野古・設計変更申請の承認指示に対して、「期限までに承認を行うことは困難」と回答した。
ところが国土交通大臣は、知事回答の翌日(10月5日)、設計変更申請の承認を求める代執行訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。沖縄県民の声やすでに100名を超えた全国の行政法学者らの意見を聞こうともしない拙速で強引な姿勢と言わざるを得ない。
今回の代執行訴訟では、代執行の要件である、「放置することにより著しく公益を害することが明らかであるとき」(地方自治法第245条の8)に該当するかどうかの実質的審理が行われなければならない。
この点について、国は訴状で、「日米間の信頼関係や同盟関係等にも悪影響を及ぼしかねないという外交上・防衛上の不利益が生ずる」、「本件変更承認申請を承認しない状態を放置すれば、当初、予定されていた変更後の設計の概要による工事に着手する時期が遅延することにより、騒音被害等により普天間飛行場の周辺住民の生活に深刻な影響が生じていることや、同飛行場の危険性の除去が喫緊の課題であることを前提として行われている本件埋立事業の進捗を妨げることとなり、我が国の安全保障と普天間飛行場の固定化の回避という重要課題に関わるものであるから、『放置することにより著しく公益を害することは明らか』である」と主張し、第1回口頭弁論で審理を終結するよう求めている。
しかし次に述べるように、国の主張は失当である。
①大浦湾には海面下90mまで軟弱地盤が拡がっているが、国内での軟弱地盤改良工事は海面下65mの深さまでの実績しかない。さらに今回は最も深くまで軟弱地盤が続いているB27地点では地盤の強度を調べるボーリング試験が行われておらず、工事を強行しても想定外の事態のために工事が頓挫する可能性が高い。②また、政府の地震調査委員会が「南西諸島でM8級の巨大地震のおそれ」という長期評価を出しているにもかかわらず、不十分な耐震設計のままである。③他にも工事のための特殊な大型作業船の調達問題等、多くの問題があり、設計変更申請の「計画工期:9年1ケ月」(供用開始まではさらに3年)は大幅に遅れる可能性がきわめて高い。辺野古新基地建設にこだわり続けることが、普天間飛行場の危険性を長く固定化すると言わざるを得ない。
また、④2019年の辺野古新基地建設について問うた県民投票で72%もの人たちが反対の意思を表明したこと、⑤貴重な生態系の残る大浦湾の環境破壊、⑥工事区域近くの久志の沿岸でジュゴンの糞が見つかるなど、ジュゴンの徹底的な調査が必要となっていること、⑦「陸域及び海域の30%以上を保護地域にする」という「生物多様性国家戦略2023-2030」の閣議決定に抵触すること、⑧南部の遺骨混りの土砂を埋立てに使用するという人道上の問題、⑨自衛隊との共同使用等、南西諸島の軍事力強化による辺野古新基地の位置づけの変化、⑩さらには県の試算でも総工事費が2兆5千億円を超えるという底なしの公金投入等、辺野古新基地建設事業の工事強行こそが「著しく公益を害する」ものであることは明らかである。
しかし代執行訴訟に関しては心配な点も多い。
代執行訴訟の第1回弁論は提起から『15日以内』と短く、主張および証拠の申し出は、すべて第1回弁論で出す必要がある。しかし、県はこの代執行訴訟に関して消極的な姿勢が目立つと報じられているのだ。
・「行政として最高裁判決に従うべきという原則論に加え、県庁内や知事の支持層の中でさえも『代執行訴訟での勝ち目は限りなく薄い』(県幹部)との見方が大方を占める」(2023.9.27 琉球新報)
・「県サイドからは(与党県議団に)、代執行訴訟になった場合に『反論する理由が浮かばない』といった一部弁護士の見解や『何百億』にも及ぶ可能性があるという賠償が求められる可能性への懸念が説明された」(2023.9.28 沖縄タイムス)
・「県事務方は、最高裁判決に不満を持ちつつも『承認やむなし』論が支配的だった」(2023.10.5 琉球新報)
・「県庁内ではこの日も知事が承認しなかったことへの反発が漏れ聞こえる。ある県幹部は現時点で県が新基地建設を阻止する手だては乏しいと指摘。『最後まで闘ったところで、何を持って知事を続けるのか』と吐き捨てた」(2023.10.6 沖縄タイムス)
・「『県庁内での代理人登録が間に合わなかった』。県は国交省が5日に出した訴状を、その日のうちに受け取れない事態に陥った。--- 代理人は県職員を割り当てるが、県議会の一般質問が重なり、決裁をまわす余裕がなかったという。--- 『引き続き、担当していただけるとは思うが---」。訴状は県の弁護士でも受け取れたが、更新の契約が済んでいなかった」(同)
・「『熱意が伝わってこない。闘う気はあるのか』。知事を支える県政与党の県議はこう訴える。--- 県の準備不足は致命的だと嘆いた」(同)
・「玉城知事は提訴当日の5日に記者の囲み取材に応じたものの、約2分で終わった。県関係者によると6日時点で弁護士との契約をまだ交わしていない。県庁内で訴訟業務に関与した経験のある一人は、『知事の囲み取材に弁護士が同席しないなど、訴訟への消極性が垣間見える』と明かす。代執行訴訟の第1回弁論は提起から『15日以内』と短く、答弁書作成などの準備時間への影響が懸念されるが、県幹部は『新たな論点は特にない。これまでの主張を改めて訴えるだけだ』との認識を示す。職員の一人は、『職員に訴訟に関わることへの躊躇はあるだろう』と指摘。」(2023.10.7 沖縄タイムス)。
これでは、「知事が笛吹けど、職員踊らず」ではないか? 県は早急に態勢を整え、第1回口頭弁論期日で前記のような「公益」の内容について十分に主張・立証し、実質的な審理に入ることができるよう全力をあげる必要がある。
(2023.10.7 沖縄タイムス)