歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

原節子さん日独合作映画『新しき土』で "日独防共協定" で第二次世界大戦 !

2024年01月25日 | 映画の話し

はい、暫くぶりの更新です。

世の中は、自民党の、パー券で、不記載で、裏金で、政治資金規正法違反で、大山鳴動鼠一匹で、幕引きで、まあ、予想通りの展開でした。

それにしても、東京地検特捜は100人の応援体制で、安部派・二階派事務所のがさ入れで、幹部を任意で取り調べで、逮捕起訴は不可避! なんて、マスコミを使っての世論操作。

しかし、結果は、見たことも、聞いたことも無い、国会議員が一名逮捕で、残り数名の議員、会計責任者の、略式とか、在宅とかの起訴で捜査は終結。

この騒ぎは、やっぱり、単なる、財務省、検察庁の安倍派への"意趣返し"だったのでしょう。それと、政治資金規正法の問題点の国民への周知ですか。

ジャニーズで、吉本で、世の中の流れが変わり、次は自民党で、その筋の頂点が、次々と崩壊? と思ったりして、でも、しかし、政治の流を変えるのは、あたり前ですが、主権者の国民です、東京地検特捜部ではありません。

それにしても、ジャニーズ、吉本、自民党安倍派パー券騒ぎ、能登半島地震と、いろいろ起きる今日この頃です。

世界は、ウクライナ・ロシア戦争で、パレスチナ・イスラエル戦争で、台湾海峡の緊張で、EU諸国も日本も、防衛予算? 戦争予算? の倍増で、第三次世界大戦の序章 ? 新しい戦前 ?

互いに危機感を煽り、不安感を煽り、軍事費を増大し、そして、そのことが、危機感・不安感はさらに拡大し、それにより軍事費も、さらに、さらに増加し、脅威の拡大サイクルが回り始め、互いに、その緊張感に耐え切れず、どちらかともなく、戦端が開かれ、いつか来た破滅への道・・・。

年明け早々ですので、明るく、にこやかにしていれば良いのですが、とても、とても、暗いお話になりました。

それで、前回、原節子さんに触れたのですが、彼女は大正9年 (1920年)  6月17日 生まれで、本名は会田昌江。

1935年に、義兄(姉の旦那)熊谷久虎監督の紹介で、日活多摩川撮影所に満年齢14歳(満年齢)で入社。同年『ためらうなかれ若人よ』で映画デビュー。この時の役名が「節子」

1936年第7回出演作品『河内山宗俊』撮影中に見学にきたドイツの監督の目にとまり、初の日独合作 "プロバガンダ" 映画『新しき土』(アーノルド・ファンク監督)のヒロイン役に抜擢される。

このとき15歳です。この写真からは、とても、とても、15歳には見えません。写真は、朝日文庫「原節子あるがままに生きて」貴田 庄 著 210年第10刷発行より転載

この年、ドイツはヒトラー政権で、日独防共協定が締結されたのです。そんなきな臭い時代に原節子は歴史に登場したのでした。

原節子は、翌年、映画宣伝のためシベリア鉄道を使ってドイツを訪問。ヒトラー、ナチ党幹部の高評価を受けて、ドイツ各地で大歓迎されたようです。

因みに、この時代の前後を調べると、

1932年、満州国設立、上海事変、5.15事件

1933年、国際連盟脱退

1934年、日本の傀儡、博儀が満州国皇帝に即位

1935年、天皇機関説問題、国体明徴声明

1936年、2.26事件、日独防共協定調印

1937年、盧溝橋事件で日中戦争勃発

1938年、国家総動員法が成立

1939年、ドイツのポーランド侵攻で第二次世界大戦

1940年、日本軍、北部仏印に武力侵攻。日独伊三国軍事同盟に調印

1941年、真珠湾攻撃で太平洋戦争開戦

1945年、敗戦

と、戦争の時代でした。

戦後の原節子の主な出演作品、私的には、成瀬己喜男監督作品『めし』が原節子の代表作品だと思っています。

原節子は、小津監督の作品、作風は、彼女の考え方とは、相容れない面があったっような事を語っていたようです。

    1949年 『青い山脈』   今井正監督   

    1949年 『晩春』     小津安二郎監督 

    1951年 『麦秋』     小津安二郎監督 

   ※1951年 『めし』     成瀬己喜男監督 

    1953年 『東京物語』   小津安二郎 監督  

    1957年 『東京暮色』   小津安二郎監督 

    1960年 『秋日和』    小津安二郎監督 

    1961年 『小早川家の秋』 小津安二郎監督 

1962年『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』稲垣浩監督の作品での、大石内蔵助の妻 "りく" 役での出演が、最後の作品となります。東宝発足30年の記念映画で、オールスターキャストの顔見世作品で、端役でした。

15歳でデビューして、42歳で引退。27年間で出演本数108本でした。戦中には戦意高揚映画に多数出演しています。

日本中が、鬼畜米英で、勝った! 勝った! で日の丸の小旗を打ち振って、提灯行列でで、戦争万歳の時代でしたからね。

敗戦間際まで、戦争は遠い外地での出来事で、まさか、自分の頭の上から、機銃掃射や、爆弾や、焼夷弾が降ってきて、家は吹き飛び焼かれ、食うや食わず、逃げ惑うとは、夢にも思っていなかったのです。  

それで、引退後は、北鎌倉の姉夫婦の家で暮らしていました。

門には熊谷の表札。

手前が熊谷家の建物、奥の別棟に原節子さんが暮らしていました。これらの写真は10年前に私が撮ったものです。この時、たぶん、原節子さんは、いや、会田昌江さんは、別棟に居たと思われます。

本日は、前回に続いて原節子さんの話となりました。

戦前の作品には興味がなかったのですが、原節子がスクリーンに登場した時代が、どんな時代であったか、それなりに興味が湧いたので調べたりしてみました。

 

それでは、また。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑯ 番外編 草壁弘子は米国のスパイだった!

2021年05月14日 | 映画の話し

番外編です。

思いつくまま、気の向くまま、これまで書いてきたことと、重複することもありますが、その点はご容赦のほどよろしく。

『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』(NHK番組HPより)

サスペンスとは、suspensus(吊(つ)るすの意)が語源だそうで、ストーリー展開において,観ている者に、不安 や 緊張を抱かせ、ハラハラ・ドキドキが、サスペンスドラマだそうです。

「スパイの妻」は「ラブ・サスペンス」であり、戦争の時代を、舞台として、背景として展開します、ですから、あまり時代背景に拘ってはいないのでした。

ですから、聡子の変化に付いて、その理由が、全くもって、その片鱗さえも、提示も、示唆も、されないで、観客にお任せなのです。

変化の動機よりも、変化することで、予想外のストリー展開になる、そのことに重点が置かれ、登場人物の性格設定とか、時代背景とかには、あまり拘りがないようです。

物語の起点となる、機密文書と文雄を憲兵隊に売り渡した聡子の動機は、いったい、何だったのか? 聡子の性格に、考え方に、行動に、とても、とても、一貫性が無いとか、そう言う疑問に深入りしては駄目なのです。

でも、そのあたりも、緻密に描かれていたら、もっと、もっと、素晴らしい作品になつていたことでしょう。

でも、しかし、この作品は、NHKの二時間ドラマなのです。いくらNHKだからと云って、製作費用と制作時間に、それなりに制約されるのです。

それにしても、気になったのが憲兵隊員です。取り調べの際、周囲にいた憲兵隊員ですが、ひとり、ひとりを見ていると、憲兵には見えないのです。

ホントに!ほんとに!、只のエキストラ丸出しで、芝居をしていませんでした。これも予算と時間の制約から?それとも演出に問題? あっ、それと各自の髪型は短髪にすべきでした。

作品にケチを付けるのはこれでお終い。

ここからは、私の妄想として、勝手にストーリーを広げて、いじくり回して楽しみたいと思います。お聞き下さい。

それで、帰国後に殺された看護婦、草壁弘子を巡るお話です。

731部隊で実験に従事していた軍医の、機密を綴ったノートと記録フィルムが、優作の手に渡った経緯と、軍医と看護婦弘子の関係です。

軍医と草壁弘子は愛人関係にあった事。軍医は内部告発しようとして処刑され、弘子の身にも危険が迫る。優作は、帰国と交換条件で弘子からフィルムを入手。

と、まあ、作品では、このような経緯となっています。

先ずは、軍医と弘子の関係ですが、作品ではとくに、触れていませんが、偶々知り合い、偶々愛人関係になったように、と言うか、馴れ初めには意味は無いとして、とくに描かれていません。

そこで、です。

わたしとしては、弘子は、それなりの目的を持って、軍医に近づいたと想像するのです。

いわゆる、弘子は「ハニートラップ」だったと考えます。

第一次大戦より、生物化学兵器の研究は各国で行っていましたし、実戦でも使用されました。

日本においても行われていた訳です。研究、実験は狭い内地ではなく、満州にその部隊を置くのは、当然の帰結。

米国も、英国も、ソ連も、当然、日本の研究を調べていた筈。ですから、各国のスパイが、満州で日本の生物化学兵器の開発研究を探っていたのです。

それで、草壁弘子ですが、彼女は、米国の末端工作員でした。実験研究従事している軍医に、色仕掛けで近づき、正義感を煽り、機密情報を手に入れていたのです。

軍医は、弘子に、いろいろ吹き込まれ、それが仇となり、予想外の内部告発に至り、弘子の身にも危険が迫ったのです。

そこに現れた、それなりに正義感のある二人、優作と文雄。飛んで火に入る夏の虫でした。

弘子は米国の末端工作員で、正規のスパイの配下で働く、現地採用の非正規スパイで、軍医の予想外の内部告発で、正規スパイは身の安全を考えて、非正規を切り捨て逃亡。

残された弘子は、優作と文雄を丸め込み、満州脱出を謀ったのです。

そもそも、文書もフィルムも、国際社会に持ち出し、国際世論に訴えたところで、そんな理由で、アメリカは参戦しません。優作の考えは甘いのです。

聡子が、いみじくも、

『あなたも文雄さんとおんなじ、すっかり変わってしまった・・・。あなたを変えたのは、あの女です。あの女が、その胸に住みついたのです』

と、優作に向かっての台詞。

女の直感です。同性の聡子は、草壁弘子の男を引き寄せ操る、美しくも、妖しい、男を狂わせる、女だと感じとっていたのです。

妖しい魔力に引き寄せられ、不幸にも、旅館の主人をも狂わせ、殺されてしまった弘子。人を狂わせる魔性の女。

すべての物語は草壁弘子が中心で、手の内で、転がされていたのです。

優作も、草壁弘子からの呪縛から解き放たれることなく、弘子の幻を追いかけ、アメリカに渡りました。

そんな優作を追って聡子も渡米、聡子も弘子の呪縛から逃れられなかった。

この作品は、草壁弘子が主役だったのです。

と、まあ、こんな、妄想を描いて、それなりに、楽しませて頂きました。

ここまでお付き合い頂いた方には、御礼申し上げます。

それでは、また、別な機会にお待ちしております。

 

では、また。

 

 

 

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑮ いつも時代に政治に翻弄されています!

2021年05月12日 | 映画の話し

前回の続きです。

精神病院に入院していた聡子。面会に訪れた懇意の医師からの、退院手配の申し出を断った聡子。

その夜、神戸は空爆され、病院も被災。

このシーンは聡子の心象風景的な映像になります。

聡子の心のつぶやきがナレーションで流れます。

『これで日本も負ける』

聡子が密航で検挙された年の12月に、日本はアメリカに宣戦布告。その後、精神病院に入院させられ、戦況は大本営発表の日本の勝利を伝えるのみ。

しかし、日本各地で米軍の空爆で大きな被害が出ていることが、病院の患者にまで伝わり始め、そして、神戸にも空爆が始まり、病院も被災し、日本が負けることを確信する聡子。

『戦争も終わる。お見事です』

「アメリカが参戦すれば日本は負ける」と、断言した優作に向けての言葉。 

朝焼けの渚、虚ろな表情、苦しそうな息遣い、危うい足取り・・・。

倒れ込み、うずくまり、泣き叫ぶ、聡子。

幼なじみの泰治から、売国奴とされた聡子。

大望の為に、優作の甥、文雄を権力に差し出した聡子。

優作から、大望の為に権力に差し出された聡子。

戦争の時代、狂っていた世界、優作も、文雄も、泰治も、そして、聡子も、時代に翻弄され、狂っていたのです。

すべてを失い、そして、すべてが終わりを告げる。

終戦のテロップ。

ここで、ENDマークと思っていたら・・・。

またしても、こんなテロップ。

死亡が確認されたとは、公的機関から聡子に、夫優作の死亡通知が届いたと云う事?

そして、このテロップ。

偽造の形跡が?とは、公的機関を装って聡子の元に届いたと云う事。

だとすれば、公的機関に問い合わせをすれば、直ぐに、決着する。

そして、また、また、このテロップ。

聡子が、旅立った目的は?聡子の想いは?行動の意味は、いろいろ、想像し、推測し、そして、楽しんで下さいとの、黒沢清監督からのメッセージ?

新たな出発のため、優作と共に暮らした日々、共に大望の為に行動した事実を、切り捨て、否定し、決着し、納得させるため。

『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』(NHK番組HPより)

時代のうねりに翻弄されたと、思い知るのは、翻弄されている真っ只中ではなく、その時代が終わりを告げたとき。

戦争の時代でなくても、時の権力者によって、人々は翻弄されます。

ましてや、いま、百年に一度の感染症という病の流行によって、各国の感染対策によって、世界中の人々が、翻弄されています。

政治は、政策は、人の生死に関わる身近なものです。無関心でいると、命を奪われます。

話が、少しそれました。

兎に角、「スパイの妻」、それなりに、引き込まれ、面白く見させて貰いました。

蒼井優は本当に良い役者です。

これで、15回続いた「スパイの妻」を終わります。

 

それでは、また。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑭ 一時精神を病んだ聡子はどう自分を納得させたのか?

2021年05月10日 | 映画の話し

前回の続きです。

夫には大望の為にと官憲に売り渡され、幼なじみの泰治には売国奴として見放された聡子。

これは、相当に精神的なダメージです。

優作が艀に乗り、陸の方に向かって帽子を振るシーンで、ENDマークが出ると思っていたら、ドラマはもう少し、続くのでした。

1945年3月とテロップが入り、精神病院の病室シーン。

聡子が憲兵隊に逮捕されたのが41年の夏から秋頃で、その年の12月8日に日本がアメリカに宣戦布告。

4年の時が流れています。

患者の会話。

『東京が火の海や』

『東京だけやないで。名古屋、大阪・・・そのうち神戸もやられるわ』

『男は皆な死んでもうた。女だけでどうにもなれへん』

『これで日本も終わりやな』

『あんた何涼しい顔してんねん。何とか云うてみいや!』と、側のベットに座る女にからみます。

『やめとき。この人一番、おかしなってんねん、ここが』と頭を指さす。

からまれたのは聡子。

あれから4年間、ここに閉じ込められていたのです。あのとき、優作にも、泰治にも、見放され、否定され、すべてを、失って、見失って、精神を病んでしまった?

聡子に面会者が現れます。懇意にしていた、帝大出の医師野崎です。以前、オープンカーを借りた先生です。

『ご無沙汰しておりま~す!』

『野崎先生こんなところで何を?』

付き添って来た看護婦に席を外させ。

『いやねえ、聡子さんの担当が帝大の同期で、先日たまたま、あなたの入院を知りました。それで、今日は無理を言って』

『まさか、またお会いできるなんて』

『うん。まあ、いろいろと大変でしたね。お元気ですか?・・・と聞くのも変か』

『いいえ、聞いて下さい。元気です』

『うん。確かにお元気そうだ』

『薬さえ飲まされなければ、頭はハッキリしています』

『そうですか』

『先生、外の世界のこと教えて下さい。ここでは、検閲済み新聞しか読めないんです』

『外も大して変わりません。おんなじようなもんです』

『福原の事は・・・』

大望の為に、聡子を犠牲にした優作。それでも、それなりに身を案じている?それとも、犠牲となった価値はあったのか? それとも、単に、その後の行動が知りたいだけ?

『ん~・・・。』

『何かご存じなんですか?』

『インドのボンベイで見かけたという知人がおりました』

『ボンベイ?』

上海からサンフランシスコへ向かう計画とは違うの?

『そのあとボンベイを出て、ロスアンゼルスへ向かったアメリカの客船が、日本の潜水艦によって撃沈された、という情報も聞いています。もっとも、今信用できる情報など何もありません』

『それだけですか』

『それだけです。長い間、ご苦労様でした。聡子さんがここから出られるように、なんとか手配してみましょう』

『あら、どうして?』

『あなたが、こんな処に居るの見るのは忍びない、拙宅でよければ、暫くお世話します』

『ありがとうございます。でも、それには及びません。いいのです。何だかひどく納得しているのです』

『納得と云うと?』

『先生だから申し上げますが、私は一切、狂ってはおりません。ただ、それがつまり、私が狂っていると、云う、ことなのです。きっと、この国では・・・』

いまこの国、この戦争と云う狂った時代、狂っていないことは、狂っている。

聡子は野崎の申し出を断ります。

聡子は、狂っていませんでした。検挙され取り調べられた経緯からすれば、気が動転し、混乱し、錯乱し、狂乱し、気絶したのでしょう。

そのような精神状態は、一時だけだったと思います。

罪を問わず、精神病院へ送ったのは、聡子へ泰治の最後の計らい?

聡子は、どこを、どう、自分を納得させたのか?

戦争の時代でなければ、泰治とも、優作とも、そして、女中の駒子とも、楽しく平穏な日常を送れたと・・・、戦争と云う時代への諦めが?

優作も泰治も、時代に狂わされた者として、時代と共に否定することで?

兎に角、戦争と云う狂った時代に、世間から狂ったとされて、世間から隔絶されることで、世間の苦悩から、それなりに一定程度逃れられ、精神の安定が得られる、この空間、この時間が、それなりに今の聡子には必要だった?

 

そして、その晩、神戸の街は米軍によって空爆され、病院も被災します。

史実としては、1945年の、3月、5月、6月の大空襲は激しかったそうで、8000人以上が亡くなったそうです。

本日は、ここで、お終いとします。

 

それでは、また。

 

よろしくね。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑬ 優作から大望の犠牲にされた聡子!!

2021年05月08日 | 映画の話し

前回の続きです。

少し戻ります。

通報によって逮捕された聡子。

そのとき泰治の台詞。

『通報があった。匿名で手紙が届いたんです。神戸からサンフランシスコに向かう船の中に密航者が乗っていると、最初、我々はそれこそ福原優作だと予想しました。まさか、あなただとは』

通報が手紙であったこと、密航者は福原優作と予想していた事。これから考えられるのは、手紙は船の出航前に確実に届かなければならず、出航の2~3前には憲兵隊に届いていた筈。

だとすると、密航者が優作と予想した憲兵隊は、手紙が届いた段階で、優作を監視下に置いた筈です。当然、当日、家を出るとき、港に着いたとき、乗船するとき、すべては見張られていた筈。

しかし、船で発見されたのが、優作ではなく、聡子だった事を驚いているのです。こんな間抜けな憲兵隊はありません。ドラマ展開としても、安易で、不自然で、蒼井優の熱演に水を差します。

まあ、そう言う話は、話として、次の展開に移ります。

いよいよ、泰治の指示でフィルムが上映され、スクリーンを見つめます。

『ご覧下さい。これが彼の地で行われている所業です』と聡子。

フィルムが回り、そこに映し出されたのは、以前、優作の会社での忘年会で上映された、優作が監督し、文雄と聡子が出演した、プライベートの短編映画。

何?これ?一瞬、混乱する聡子。

『何だ!これは?あなたは、どうして、こんなものを海外に持ち出そうとしたのですか?』との、泰治の問い掛け。

聡子はしばらくの沈黙のあと、笑い出し、スクリーン駆け寄り、

大声で笑い、『お見事!』大声で叫び、床に倒れ込みます。気が動転して失神?

場面は変わって、ボートに乗り、陸に向かって帽子を振る優作のシーン。

ロングなので、顔の表情は確認できないのですが、私には笑っているように見えました。「そようなら聡子」「そようなら日本」と云っているように見えました。

聡子が大望のために文雄を官憲に売ったように、優作も大望のために聡子を売ったのです。

優作は文雄を売ったことを許していなかったのです。

優作は、官憲の目を逸らす為に、大望の為に、聡子を犠牲にしたのです。そのことに気付いた聡子は、優作に届くように大声で『お見事!』と叫んだのです。

幼なじみ泰治に見捨てられ、夫の優作にも見捨てられた聡子。

聡子は、

『大きな望みを果たすなら、身内も捨てずにどうします?』と、云ってみたり。

『僕はスパイじゃない。僕は自分の意思で行動している』に対して、『どちらでも結構。私にとっては、あなたは、あなたです。あなたがスパイなら、私はスパイの妻になります。それだけです』と、云ってみたり。

『捕まることも、死ぬことも、怖くはありません。わたしが怖いのは、あなたと離れることです。私の望みは、ただあなたと居ることなんです』と、云ってみたり。

『優作さん。これ以外にも、フィルムがあるんじゃないんですか?映像があれだけでは、女を連れ帰る危険と、見合うとは思えません』と、冷静な分析をしてみたり。

しかし、私としては、聡子の想いは最初から変わらず、

『あなたのせいで、日本の同胞が何万人も死ぬ・・・、それは正義ですか?・・・私たちの幸福はどうなります・・・国際政治がどうとか、偶然が選んだとか、そんなの知ったことじゃありません』

最初から、最後まで、このあたりが本音だと思います。

「あなたがスパイなら、私はスパイの妻になります」と云った、聡子の限界。

「あなたがスパイなら、私もスパイになります」と云ったのなら、もっと行動も言動も違ったものになるはず。

『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』が作品のうたい文句ですが、優作への一途な愛はあっても、信念はあまり感じませんでした。

時代的な制約と云えば、云えますが、でも、しかし、この2020年の時代に、古い女性像を描く意味は無いと考えます。

それで、ボートに乗り、陸に向かって帽子を振る優作のシーンで、ENDマークが出てくると思っていたら、その先が未だありました。

この先は、次回とします。

それでは、また。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑫ 通報者は優作!?

2021年05月07日 | 映画の話し

前回の続きです。

いよいよ、亡命決行の朝を迎えます。

『お気をつけて』と駒子。

『ありがとう。駒子』

聡子も、駒子も、明らかに、別れの表情。

神戸港に着き、優作が先に降り、別々の船に乗船。

優作から聞いていたとおり、船の前には大柄のボブが出迎えていた。

ボブに案内され船底の貨物箱の中に隠れる聡子。食事は一日2回、トイレはこのバケツ、と云って渡されます。

このやり取りでは、サンフランシスコまでの二週間、ずっと箱の中での生活のように受け取れます。

せいぜい一日で、船は日本の領海外に出ます。アメリカの船ですから、そこはもうアメリカです、自由です。箱の生活からは一日で解放されるのです。

暫くして外が騒がしくなり、箱の外を覗くと、周りには憲兵の集団が。

こう言うシーンは見ていても、ハラハラ、ドキドキです。

憲兵隊と、船長とボブのやり取り。

『密航者はどこだ』

『何のことか?私は知らない』とボブ。

『ボブ、もう教えた方が良い』と船長

『上官、駄目です。話が違います』

『いいから教えるんだ。従わないと我々も逮捕されてしまう』

仕方なく聡子が隠れている箱を指さすボブ。

聡子も驚きましたが、観ている私も驚きました。

優作が懇意にしている船長、知ってか知らずか、かなりいい加減な男だったのです。

憲兵隊に連行された聡子。

泰治から告げられます。

『福原聡子。機密漏洩、国家反逆、外患陰謀、あなたにかけられた嫌疑は立証されれば、どれも死刑です。ただ我々も、あなた一人でこれを行おうとしたとは思っていない。福原優作はどこです?あれこそ本物の売国奴だ。あの男の居場所を白状すれば、あなたの刑はずっと軽くなるでしょう』

『知りません』

『一つ伺ってもいいですか?どうしてあの貨物船のことが分かったんですか?』

『通報があった。匿名で手紙が届いたんです。神戸からサンフランシスコに向かう船の中に密航者が乗っていると、最初、我々はそれこそ福原優作だと予想しました。まさか、あなただとは』

ここで聡子は、少しだけ、もしかして通告者は優作?と疑ったかも知れません。私はここで、通告者は優作と確信しました。

『私にも大望があります。もう子供ではありません』

『関東軍を告発することですか?』

『ええ』

『国家反逆者がねつ造した文章を、どうしてあなたが信じるんです』

『あのフィルムを見れば分かります』

『なるほど。あなたの大望がどんなものなのか、これを見て判断しましょう』

『泰治さん。あなたは、もともと気立ての優しい方だった。一緒に山登りもしし、この間は一緒にウィスキー飲みましたよね・・・。あなたの本質にあるのは優しさです!私はそれを知っています。そのあなたが、こんなに素晴らしい力を手にされた。時代があなたを変えたとおっしゃるなら、あなたの方が、その時代を変えることだって、できたんじゃないんですか?』

泰治は、その問い掛けに対する答えとして、振り向きざまに張り倒します。

優作が逮捕されたとき、泰治は、優作を厳しく取り調べませんでした。聡子を思ってこその寛大な処置。しかし、裏切られたのです。

それにしても、聡子の言葉ですが、「こんなに素晴らしい力」ですか、当然、泰治に力があるのではなく、憲兵隊大尉という地位に力があるのです。

「時代があなたを変えたなら、時代を変えることだって」ここでは、”逆もまた真なり”は、この場合、とても、とても、通用しません。泰治も何だその論理は?と思ったことでしょう。

そもそも、気立てがよく、優しい泰治を変えたのは、一義的には聡子です。優作と聡子が結ばれた結果、軍人になる事を選択したのです。

聡子も泰治の気持ちを、薄々は気が付いているのです。泰治も、聡子が自分の気持ちに気付いてる、と感じていたのです。

でも、幼なじみが、恋をして結ばれるのは、それなりに難しいと、思うのです。

倒れ込んだ聡子に、これまでの想いから、自身への決別として、自らを納得させるように、『お前も売国奴だ、万死に値する』と告げます。

フィルムの上映準備ができ、部下から『お待たせしました』との声。

『よし、見よう』と優作。

どんな映像が映し出されるのか?

本日は、ここまでとします。

 

それでは、また次回。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑪ 女中駒子で恒松 祐里の役回りは?

2021年05月06日 | 映画の話し

前回の続きです。

亡命計画は実行段階に入り、現金を貴金属に変えて、自宅に戻った二人。

その晩、聡子から、以前、ドラモンドから日本を離れる際にプレゼントされた絹の反物を質に入れて、ドラモンとから機密フィルムを買い戻す資金にしようと聡子が提案。

翌日、市内の質屋に向かう二人。

途中で、尾行されている気配を感じた優作。

『さっき車を降りた時に見かけた男がまた居た。君は見るな』

『えっ』

『つけられているんですね』

『わからない』

『二手に分かれましょう。あなたは質屋へ、私は、ここで、あなたを尾行する者がいないかどうか見張ります』

ここは、スパイの妻的な言動の聡子。

『誰も居ないと分かれば、悪いが、君はタクシーで帰ってくれ』

『はい』と言って二手に分かれ、誰も居ないことが分かったが、聡子はタクシーで帰らず、優作の後を追いかける。

『ああ、よかった』

『先に帰らなかったのか?』

『質屋の外を見張ってたんです。誰も怪しい人はいませんでした。でも・・・ちょっと眼を離した隙に、優作さん、ささっと一人で・・・。ああ、もう・・・』

『ハハ』

『そんなに可笑しいか、ばかばかしいと思うか、だがだがどんなに用心しても、し過ぎると言うことはない』

聡子が優作に抱きつき顔を沈める。

『どうした。気分が悪いか?』

『いいえ、うれしいんです。やっとあなたと生きている気がして、質屋の外で、今、私があなたの目になっていると思ったら、もう・・・うれしくてたまらなくなったんです』

前日に、二手に分かれての亡命計画を聞かされ、泣きながら強く拒否していた聡子の笑顔。男としては、それなりに嬉しい言葉ですが・・・。

甥の文雄を、大望の為の犠牲と冷酷に云ってのけ、官憲に売り飛ばした女でもある聡子、スパイの妻になると云った聡子。嬉しそうに笑顔を見せる聡子、優作は、どう受け止めているのか。

ここで、このシーンは終わります。

 

次は廃屋で隠していた機密書類とフィルムを持ち帰るシーン。

そこでの、優作の言葉が気に掛かります。

『聡子。君はスパイの妻なんかじゃない。だから隠れて生きる必要はない。僕たちのように考える人間はどこにでもいる。味方はきっと見つかる』

頷く聡子。ここでこのシーンは終わります。

これって、何か、別れの言葉に聞こえます。これから二手に分かれたとしても、二週間後にはサンフランシスコで、二人は落ち合うのに、もしかして・・・・・・。

次は自宅でのシーン。

決行する前日、女中の駒子から、

『どこか・・・遠くへ行かれるんですか?』

『ううん、ちょっとした旅行よ。二週間ほど』

『いつ帰ってこられてもええように準備しときます。気にせず行って来て下さい。二週間でも、三週間でも・・・この戦争が終わるまででも』

『ありがとう』

この女中の駒子ですが、チョイ役のようで、それなりに重要な役回りのような、何か知っているような、知らないような、どこかでストーリーに絡んでくると、そう思っていました。

でも、しかし、それなりの役者をつかって、それなりの芝居をさせたのに、とくに絡んでくる事もなく、単なる、思わせぶりな、引っかけ的演出でした。

 

寝室のシーン。

『やっぱり、私も駅まで』

『だめだ、君が駅に来ても、僕が港に行ってもいけない。すべて予定どおりに』

『はい』

『いいか、サミュエルという船長に頼んであるけれども、実際はボブという大男がやってくれる。身体の人一倍大きな男が船のそばにいるからすぐ分かる』

『次はいつ会えます?』

『すぐにだ。心配しなくていい』

『きっと、二週間後に』

『ああ。きっと』

そして、二人は抱擁。

このとき、このシーンで、優作の視線に怪しさを感じたのです。前回、この抱擁シーンを、別なシーンで採り上げてしまいました。年寄りの記憶違い。ここで訂正します。兎に角、優作は、それなりに、ずっと怪しいのです。

それにしても、そもそもです。日本の非人道的行為をアメリカで発表し、アメリカを参戦させ、日本を敗北に導く計画、二人でわざわざ手を携えて、危険な密航で実現させるのは、かなり疑問です。やはりそこはドラマ?

密航に協力してくれる、アメリカの船長がいるのならば、彼に機密文書を託す方が現実的だと思います。やはりそこはドラマ。

 

この次は、いよいよ、決行の日に。

本日は、ここまで。

 

それでは、また、次回。

 

よろしく。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑩ 未完成8Kカメラのケガの巧妙的作品?

2021年05月05日 | 映画の話し

前回の続きです。

亡命計画を相談し、二手に分かれての渡米を優作に聞かされ、抵抗しつつも、納得させられた聡子。

亡命資金を貴金属に変えるため、知り合いの帝大教授から借りたオープンカーで、森を抜け神戸市内に向かう二人。

昨日とは、打って変わってはしゃぐ聡子。優作は、それなりに聡子の気分の上げ方を知っている。

亡命計画は、もう実行に移されたことで、覚悟は決めて吹っ切れた聡子。

結婚記念日のプレゼントを装い、楽しそうに宝石を買い求め。

嬉しそうに外国製の時計を買い求め。

聡子の振る舞いは、装おうと言うよりも、誰から見ても、疑うこと無く記念品を買い求める、仲の良い夫婦。

別々のルートで、アメリカに渡り、サンフランシスコで落ち合い、ワシントンに向かう。機密情報を携えての危険な旅。しかし、聡子にとっては、二人で秘密を共有しての冒険旅行。

この日は、これで記念品の買い物は終了。

それで、買い物先が二軒共に、何故か露天商でした。高額な商品をこんな露天商で買い求めることは、当時、ふつうだったの?

優作は貿易会社の社長で、立派なお屋敷に住み、女中と執事のいる暮らしです。これまでにも、聡子にはいろいろな記念として、高額な貴金属のプレゼントをしていた筈で、行きつけの店があった筈。

これは、行きつけの店だと、記念日は覚えられていて、結婚記念を装おう事ができなかった?それとも当時すでに、贅沢品は一掃され、闇で買うしかなかった? 

監督の黒沢清さん、説明不足です。それとも、そんなことぐらい、少し考えればわかるだろう!って事? そう言うことでしたら、言います。この作品、説明不足が多すぎるのです。

答えは提示せず、いろいろ解釈の余地を残すのが名作の条件だとしても、解釈の材料提供が少な過ぎます。まぁ、この話は、最後の、最後にとって置きます。

本日は、気分が、いまいちなので、もう一言、以前より、ずっと、ずっと、抱いていた、疑問点を、二言、三言。

この作品、8K高精細を売りの一つとしています。でも、しかし、高精細の映像と言えるのは、森の中を疾走するオープンカーの数十秒のシーンだけでした。

演出として、映像表現として、室内シーンのほとんどが、明るさ落としたり、逆光だったり、不鮮明なシーンばかりでした。こう言う作品であれば、4K、いや、1Kで十分だと思います。

8Kドラマとして、この作品を製作したのは何かの手違い?それとも、技術的に問題があった? 我が家のテレビは4K対応ですが、4K放送の屋内で撮影された画面は暗いのです。

相撲中継は、4Kと地上波の両方で放送されていますが、4K放送は画面が暗いのです。まあ、相撲中継は4Kのカメラで撮影し、1Kに変換して地上波で流していると思いますが、4Kは暗い! 8Kはもっと暗い?

4Kの自然番組や、旅番組は鮮明で、さすが4Kと眺めています。この作品でも、屋外シーンはそれなりに鮮明でした。

以前、火野正平の「こころ旅」(NHKBSプレミアム)で、それなりの経験を積んだと思われる中年の カメラマンが、「やっとピント合わせが巧くできるようになった」と発言し、火野正平に「おぃ、おぃ、今頃何を言ってるの、このカメラマンは」と、突っ込みを入れられてました。

そして、そのときカメラマンが「いや、8Kカメラのピント合わせは、かなり厄介」と反論したのです。これって「被写界深度」が浅いと云うこと?

屋外でこれですから、屋内の、ましてや、演出的に、照明を落としたり、逆光での撮影には、技術的に無理がありそうです。

黒沢演出として、優作と聡子の二人のシーンで、優作からの肩舐めのカットが多用されていましたが、二人の距離近いのに、聡子のピントに対して、優作の肩のピンボケ具合が酷すぎました。これは、表現手法ではなく、単なるカメラ技術的の問題のような?

薄暗いシーンや、逆光シーン、肩舐めカットの多いこの作品は、そもそも、8K作品向きではなかった? 8Kで撮ってはいけない作品?

しかし、カメラの技術的未完成が、ケガの巧妙的、想定外的、演出効果として評価され、第77回ベネチア国際映画祭で、最優秀監督賞につながったとしたら・・・。

監督の作品意図は、戦争の狂気が、あなたの平穏な日常を、いとも簡単破壊します。さあ、あなたなら、どうする?的 メッセージなのか? 

それとも、いや、単なる男と女の関係を、戦時下を単なる背景として描いた作品?

まあ、どちらも、こちらも、観る人のご自由にですか?

うん。本日は、ここらで止めて置きます。

それでは、また次回。

よろしく。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑨ 優作の怪しい視線

2021年05月03日 | 映画の話し

前回の続きです。

聡子の、一連の行動に、言動に、態度に、疑念と戸惑いを抱く優作。そして、甥の文雄に対しての、冷酷な行動と態度に、かなり、恨み抱いていると思います。

そして、聡子も、泰治から聞かされた、草壁弘子と優作が2人で渡米しようとした事実。もし、彼女が殺されていなければ、優作と草壁弘子は愛の逃避行・・・、私は捨てられていたかも?との疑念。

2人はそれぞれに、心の内にいろいろな想いを抱きつつ、物語が展開していきます。

次は、映画館で二人が映画を観るシーン。

私の時代もそうでしたが、作品上映の前に必ず「ニュース映画」が流れるのです。これは、この作品を観ている人に、時代背景を説明するために挿入されたのでしょう。

昭和16年7月26日。ベトナムのサイゴンに進駐する日本軍の姿と、日の丸を振って出迎えるサイゴン市民のニュース映像が流れます。

次に、日活映画、山中貞雄監督作品「河内山宗俊」(15歳の原節子がヒロイン役)のタイトルが流れ、次のシーンへ。

 

映画見物の帰り、路面電車の車内シーン。

※電車の窓から町の風景がまったく見えないのは、それなりの演出と言うよりも、予算の関係?

『アメリカが、とうとう石油の対日輸出を禁止したそうだ。ABCD包囲網の完成だ。これで、正規の手段ではアメリカに行けなくなったな』

『優作さんは、あの女とアメリカに行くつもりだったんですか?』

聡子は、優作への不安を、疑念を口にします。

『まさか。単に保護者のふりをして、2人分の渡航申請をしただけだ。その方が怪しまれない。行くのは彼女一人だけだ。まあ、もし、文雄が行きたいと言い出せば、それもいいとは思っていたけれどね』

『本当ですね』疑いは消えていない表情。

『もちろん』

『では、やっぱり、優作さんとアメリカに行くのは、私ということになりますね』

”では、やっぱり”は、優作に、そして、自らをも納得させようとする言葉。

『ああ、だがどうやって?方法は一つしかない亡命だ』と耳元でささやきます。

ここで、このシーンは終わります。

 

次は、二人が自宅で亡命計画を相談するシーン。

テーブルに世界地図を広げて。

『ドラモンドへの支払いと上海からの偽旅券2人分、それと・・・もろもろの経費を合わせてできれば、1万円は持っていたいな。』

※当時の一万円は、現在の貨幣価値では、3~4千万円ぐらい。

『1万円。どうします』

『日本円では役に立たない。会社にある現金の余剰分を貴金属に変えよう』

『それと渡航のルートなんだが、多分、貨物の箱に隠れて、サンフランシスコまで二週間といったことになるだろう』

『二週間・・・』

『心配するな。船内には協力者を手配する。食事も、水も、用を足すのも何の不自由もないさ』

『分かりました。でも、上海にいるドラモンドさんから、どうやってフィルムを受け取るんですか?』

『うん。それで提案があるんだ。二手に分かれる』

『私とあなたが?』

『君にはフィルムを託して貨物船に乗ってもらう、僕はノートを持って上海に渡り、ドラモンドから残りを買い戻して、そこからアメリカに向かう。サンフランシスコで落ち合おう。あそこなら日本人街もある。そこで通訳を雇ってワシントンを目指す』

二手に分かれて、危険の分散ですか? それだけ?

『嫌です』

『おい』

『私も一緒に上海へ行きます』

『危険を分散したいんだ』

『貨物船なら一度港を出てしまえば安全だ』

『私一人では無理です。そんな・・・貨物の箱にいて誰が私を守ってくれますか?』

『十分に手配する。船長とも懇意にしている』

『そんなの信じられません』

『どこかで誰かを信じるしかない。この大仕事を二人だけでやり遂げようとしてるんだ』

泣き崩れる聡子。

『怖い』

『強くなってくれ、少し離れるだけじゃないか。こんな事は大望を遂げる為の犠牲ですらない。ただの我慢だ』

「”大望を遂げるための犠牲”ですらない」は、以前、文雄を憲兵隊に売った聡子の台詞です。

優作の心の内としては「お前は文雄に、あのような犠牲を強いた、それに比べれば、こんなことはただの我慢だ」、と言われれば、もうこれ以上拒否する道は閉ざされます。

『捕まることも、死ぬことも、怖くはありません。わたしが怖いのは、あなたと離れることです。私の望みは、ただあなたと居ることなんです』

拒否の理由が少し変わります。

男として、こういう言い方をされると、かなり疎ましく感じるものです。優作もそんな想いを抱いた?

そして、そして、優作は「この女は、国際社会に日本の非人道的行為を告発するなんて大義は、頭の片隅に無いと」判断したと推測します。

そして、この台詞、『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿』(NHK番組ホームページより)とは、異なります。

愛は貫いていますが、信念は?彼女の信念は、常に夫の傍らにいて、夫に仕え、夫を愛する妻を演じ続ける事?

大きな望みよりも、小さな望み、あなたと居たいだけの女にしか見えません。

まあ、当時の女性としては、当然と言えば当然で、時代の制約と言えば、制約です。 

『身体が離れることは、心まで離れることだろうか。たとえば、今、僕は、塀の中にいる文雄と、これまでにない繋がりを感じている。文雄の志が僕を動かしていると言ってもいい』

文雄のことが気になるのです。引っかかるのです。大望のための犠牲として、切り捨てた聡子に、納得できない優作。

『距離が離れることで、これまで以上に強く深く心が通い合うことがあるんだよ。僕たちだってそうなれる。

心配するな、離れても、また必ず一緒になれる。ならなきゃいけない。僕たちがアメリカで、再び出会う事によって、やっと全ての証拠がそろうんだ。志を果たす事と、僕たちの再会は、まったく同じ事だ、どちらもやり遂げよう』

『はい』

『よし。じゃあ早速、明日から動こう。先ずは貴金属の購入だ何がいい?』

『何と言われても・・・』

『派手な買い物をカモフラージュするために、何かの記念日でも装おうか』

二手に分かれる作戦は、聡子の強い反対にも関わらず、優作の執拗で、強引な説得で、聡子を納得させました。

夫婦が、一緒に家を出て、別々の目的地に向かう方が、怪しく、危険な行動では? 

まあ、そう受け取ったのは、抱き合ったシーンでの、優作の視線に、何か怪しさを感じたのです。

ここで、このシーンは終わります。

本日は、ここまでとします。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑧ スパイごっこを楽しむ「スパイの妻」ですか? 

2021年05月02日 | 映画の話し

前回の続きです。

憲兵隊より戻り、裏切った妻、聡子に詰め寄る優作。 

『密告屋!しかも、泥棒まで、君は幼なじみ口車に乗って僕ら2人を売った。よくも、まあ、そんな涼しい顔をしていられるな』

『文雄さんは、必ずあなたを守る。私はそれに賭けました』

『これが、何かわかるか?文雄の両手の爪だ』

爪を見せられても、まったく動じることなく。

『大きな望みを果たすなら、身内も捨てずにどうします?』

冷静にと云うか、冷酷な響き。えっ!どうして?これは、裏切ったのではなく、決断の、覚悟の、現れ?

『君のせいで文雄は地獄行きだ』

優作は、まだ聡子の変化に戸惑い、半信半疑。裏切りもの?それとも見方?

『大望を遂げるための犠牲です。文雄さんもお分かりでしょう。だから、あなたは、こうして帰ってくることができたんです』

聡子のせいで拷問され、極刑にされる文雄を、大望を遂げるための犠牲と、何の躊躇いも無く、平然と言ってのける聡子。

以前、

『あなたのせいで、日本の同胞が何万人死ぬ・・・、それは正義ですか?・・・私たちの幸福はどうなります・・・国際政治がどうとか、偶然が選んだとか、そんなの知ったことじゃありません』

こんな発言をしていた聡子。この変わりように、疑い、驚き、戸惑い、混乱する優作。

観ている私も、驚き、疑い、戸惑い、混乱しました。聡子の心の変化が、画面からは読み取り難いと云うか、変化の過程が描かれていないのです。

『望みを遂げようにも、もう、肝心のノートがない』

この台詞から、英訳ノートも憲兵隊に提出していたと、優作は思い込んでいたようです。

『ノートは二冊、必要なのはこちらのはず』

『だが、原本が無くては信頼されない。生き証人だった弘子も、もう居ない』

『あなたが私を責めたいのは分かります。それでも、あなたは、私を信用して下さらなくてははなりません。もう、あなたには、私しか居ないのです』

この女、何を考えているのか?戸惑う優作。

フィルムを装着した映写機を取り出し、映写の準備をする聡子。フィルムも提出していなかった事を知る優作。

『君は見たのか』

『ええ、見ました』

以前、『・・・君は何も見ていない、何も知らない。僕も君にそれを見せたはくはない。・・・僕は見た。多分あらゆる偶然が僕を選んだ・・・だとしたら、もう、何かしないわけにはいかない』と、云っていた優作。

見てしまい、知ってしまい、そして、聡子も、何かしないわけにはいかない、との、その決断の、その決意の、現れが、一連の行動と理解し始める優作。

それにしても、聡子の行動には、私も、疑い、驚き、戸惑い、混乱です。

こんなに人は変わるの?動機は本当に非人道的行為に対する怒りなの?と、私は、まだ疑っています。

優作も疑っています。

2人で映写されたフィルムを見終わり。

『あなたが満州で見た者は、これですね』

『ああ、決定的な証拠だ』

『なんて惨い』

『関東軍による、人体実験の記録フィルムを再撮影したものだ。弘子に入手させた。帰国との交換条件で』

ここで、聡子は、以前の聡子のように、明るい表情で、

『このフィルムと英訳のノートがあれば、あなたの志を果たすことができます。アメリカへ渡りましょう。私たち2人で』

この「私たち2人で」の台詞が、明るい表情が、明るい言葉の響きが、とても、とても、気になると云うか、引っかかるのです。

聞いている優作も「この女は、いったい何を考えているのか?」と云った表情を見せます。

聡子にとって、満州から、優作と文雄が持ち帰った、機密文書と、連れ帰った女により、豊かで、穏やかで、愛のある2人の日常が、突然、壊されたのです。

文雄のことも、機密文書のことも、連れ帰った女のことも、恨んでいるのです。機密文書も、文雄も、憲兵隊に売り渡すことに、それほど抵抗はなかったと、解釈します。

たぶん、機密を知るのは「私たち2人」の台詞に、表情に、壊れかけた2人の愛が、機密を2人だけで共有することで、つなぎ止められるとする、聡子の想いが込められていた、と、解釈します。

 

次のシーンは、何処か郊外の廃屋と化した工場か、倉庫跡。

『いよいよの時は此処に隠すつもりだった』と、金庫の中に書類とフィルムを入れる優作。

『優作さん。これ以外にも、フィルムがあるんじゃないんですか?映像があれだけでは、女を連れ帰る危険と、見合うとは思えません』

『何ておんなだ』

聡子の変わりように、付いていけない優作。ふつう自分の奥さんに「何て女だ」とは、面と向かっては云いません。聡子が変化した動機に、文雄を売り渡した動機に疑いを持っている表現。

『あなたが、国際世論を動かせると判断する位のものが、他にあるんですね』

『そのとおり、原板もっと鮮明で微細で数十分におよんでいる。それは、上海ドラモンドに預けた』

『ドラモンドさんに?』

ドラモンドとは、以前は神戸にいた商売仲間で、個人的にもそれなりの付き合いがあった。作品の冒頭で、スパイ容疑で逮捕されてたが、優作の口添えもあり、嫌疑不十分で釈放。そのあと、日本では商売がしずらいと上海に渡っていたイギリス商人。

『日本に持ち帰るより、ずっと安全だと思った、だが間違いだった。先日の手紙で、ドラモンドはフィルムと引き換えに多額の金を要求してきた。「貧すれば鈍す」だ。待てよ、まさか?彼こそ本物のスパイなのか?』

機密文書と引き換えに金を要求するのは、とても、不自然。ただ、ここで、「スパイ」と云う台詞が必要だっただけと。

『スパイならば味方とはなりませんか?』嬉しそうに云う聡子。

優作は毅然として『僕はスパイじゃない。僕は自分の意思で行動している。スパイとは全く違うものだ』

『どちらでも結構。私にとっては、あなたは、あなたです。あなたがスパイなら、私はスパイの妻になります。それだけです。満州での偶然が、あなたを選んだとしたら、それは、私まで選んだということです』

この表情で、語られる、この台詞。

国家機密を国際社会に暴露すると云う、危険を冒そうという人の表情でしょうか。「あなたがスパイなら、”私はスパイの妻”になります。それだけのこと」

これは、夫婦で楽しむ「スパイごっこ」でもする表情です。

本日は、ここまで。

 

それでは、また。

 

 

 

 

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