歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑦ 危険な賭に出た聡子!

2021年05月01日 | 映画の話し

前回の続きです。

満州から二人が持ち帰った機密文書を、憲兵の泰治に渡した聡子。

中味が関東軍の機密文書と知った泰治。

ドラマは、この後、同展開するのか?

場面は優作が経営する貿易会社の社内シーン。

書類をとりに倉庫に向かう。そこで、金庫の脇にある、チェス盤の駒の位置の変化に気付く。

聡子が優作の留守に、金庫から機密書類とフィルムを持ち出した際、誤って駒を倒していた。

それにしても、暗い倉庫の奥でチェスなど打ちますかね。それに勝負途中の駒の位置を記憶して、その変化に気付いて、もしや、誰かが金庫の中機密書類を? 何て、推測しますかね?

それで、金庫の扉を開け確認する優作。やはり、書類、そして、フィルムは消えていた。

ここでこのシーンは終わり。

 

次は、叫び声が響く、憲兵隊内部のシーン。

椅子に縛り付けられた文雄。周りを取り囲む三人の憲兵隊員。遠くから叫び声が聞こえて来ます。

文雄を押さえつけた憲兵隊員が、代わる代わるペンチを手にして、文雄の手の爪を剥がしとります。叫び声を上げる文雄。

逮捕されたのは文雄だけ?

次は、優作の経営する貿易会社の事務所シーン。

隊列を組み事務所に入って来る4人の憲兵隊員。

『福原優作どの。ご同行願えますか』

『理由は』

『先ほど、竹下文雄を逮捕しました。参考人として、あなたにもお伺いしたい事があります』

『わかった』

金庫から機密文書が消えていた事で、それなりに覚悟をしていた優作。持ち去ったのは間違いなく聡子。何故?どうして?総子は裏切った?

泰治から取り調べを受ける優作。

『福原優作、あなたは連合国側のスパイですか?』

『違う』

『では、竹下文雄は?』

『違う』

『なぜ、違うと云えるのですか?』

『違うものは違う。僕は文雄という人間を信じている。理由はそれ以外にない』

『しかし、残念ながら竹下文雄は、自分がスパイだと認めました。その上、彼が満州から持ち込んだ物品の中に、重要な国家機密に関するものが含まれていたと、何だか分かりますか?』

『さあ』

『尋問にずいぶん時間がかかりましたが、やっと自白しました。彼はその秘密を満州で草壁弘子と行動を共にしている時に、手に入れたと云っていました。全て、自分一人の判断であり、あなたの関与はなかったと。なるほど、信じるしかない。他に証拠はないのだから』

『君は拷問による自白を鵜呑みにするのか?』

『いいえ』

『ではどうして』

『通報があった』

『通報?誰から?』

『おかげで国家の機密は守られました。善良な市民の力です』

そして、文雄の手の指から剥がした爪を、優作の手の中に握らせる泰治。事と次第によっては、あなたも・・・、との脅し。

『誰が通報した』

『あなたもよくご存じの方だ。私は、その人を不幸にしたくない。未だ間に合います。心を入れ替えて、お国のために励みなさい。それでこの件は終わりだ』

ここまで云えば、通報者は聡子で、そのとき「文雄から頼まれて預かった、優作は知らない」と、証言したのでしょう。それなりに恭順の意を込めた和服姿で。

優作も、当然、共犯として疑はれますが、文雄は拷問されても、優作の関与を否定。でも、ふつうであれば状況証拠から、優作も拷問され自白を強制された筈。

でも、しかし、ふつうでない泰治は、聡子を不幸にしたくない為に、温情的、愛情的に、優作へ寛大な処置。

まあ、泰治にとっては、国家機密を取り戻し、犯人をも検挙したのですから、それだけで大手柄、憲兵隊内での評価は上がります。うん。これで、大尉から少佐に昇進?

それと、文雄が拷問されても、優作の関与を否定したのは、尋問内容から、

①翻訳文とフィルムは、憲兵の手に渡っていない

②優作は文雄が口を割らなければ逮捕されない

③優作を共犯と認めてしまえば、非人道的行為の記録は、この世界から葬られてしまう。

と、云うようなことを察し、翻訳文と、フィルムと、優作に、一縷の望みを託し、単独犯と言い張ったのだと、私は推測します。

でも、文雄が拷問され、優作の事を共犯と証言する可能性、また、優作も逮捕され自供を迫られる可能性。最悪、二人は死刑。

それでも通報した聡子。何を考えているのでしょう? 裏切ったの?裏切っていないの?

この後、どう展開して聡子は「スパイの妻」になるの?

本日は、ここまで。

 

それでは、また。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」⑥何故?聡子は憲兵隊に機密文書を渡したのか?

2021年04月30日 | 映画の話し

前回の続きです。

優作との豊かで平穏な暮らしを守ろうとする聡子。

忠誠を誓うのは国ではなく、万国共通の正義だとする優作。

このままでは、二人の関係は破局に向かいます。

 聡子は悩みます。

優作への愛を、優作からの愛を、失わない方法は? 

夫の行動を思い止まらせるのは可能か? 

危険を冒しても、夫と供に、万国共通の正義に協力する?

聡子は、それなりの答えを見つけたのか、優作の出張中に、会社の倉庫から機密書類と、中にあったフィルムを持ち出し、家に帰ってフィルムを映写機に掛け見てしまうのです。

このときは、映し出された映像を見る、聡子の表情だけが描かれます。聡子の表情から、当然、フィルムの中味は、731部隊の残虐行為が記録されていた筈。

『知ったような口をきく。当然だ、君は何も見ていない、何も知らない。僕も君にそれを見せたはくはない。だがそれは起こっている。僕たちの同胞が、その悪魔のような所業を、彼の地で今も繰り返している。僕は見た』

もう、見てしまい、知ってしまった聡子。これで「スパイの妻」として、優作と供に、万国共通の正義に協力する、と、私は思ったのです。

しかし、翌日か、数日後か、何故か憲兵隊に向かう聡子。

えっ!どうして?何しに?と思いました。

このとき聡子は、はじめて和服姿で出掛けます。

以前に、「どうしてこのご時世に、洋装ばかりなのか、世間からはいろいろな眼でみられますよ」と、泰治から忠告を受けているのです。

このときの和服姿は泰治への、愛国者としての、覚悟のサイン?

聡子が話し始めるより先に泰治から、草壁弘子殺しの犯人は、旅館の主人だったことを告げられます。

そして、『それと、もう一つ、これこそお耳に入れておきたかった。優作さんは、草壁弘子が看護婦の勉強をする留学先として、アメリカ渡航の旅券を申請しました。ご自分のを含めて2人分。ご存じでしたか』

たぶん、知らないだろうと思いつつ。これは、事件の背景に重大な機密が隠されている、と、言うよりも、二人には、それなりの男女関係が、と、匂わし嫉妬心を煽る問い掛け。

『存じません』

『何か商売の目的があってアメリカに行くのは自由ですが、どうして、わざわざこの時期に・・・しかも、草壁弘子をつれて。僕はひとえに、あなたのことが心配なんです』

泰治は、聡子が自分へ向いてくれる期待よりも、兎に角、聡子と優作夫婦の関係を悪化させたいだけ?

『それだけですか』

『はい』

『では、こちらの案件を申し上げます。身内の恥と思って、いままで云えずにおりました』

と云って、機密書類を取り出します。

えっ!機密を暴露するの、文雄も優作も権力に売り渡すの? 何故? どうして? どうなるの?

『何ですか』

『ご覧になれば分かります』

『何だ、これは・・・』

この時、泰治は驚きの表情。やはり、草壁弘子事件の背後関係に、重大な機密が絡んでいるとは、まったく掴んでいなかったのです。

単なる「痴情のもつれ」と承知していたようです。ですから、前にも云いましたが、民間の痴情事件に憲兵が動くのは不自然なのです。

でも、しかし、これは『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』(NHK番組HPより)ドラマですから、まあ・・・、そこは・・・ね。

『このノートは満州から持ち込まれました』

『誰がこれを』

ここで、このシーンは終わります。

何故、聡子は、満州から持ち帰った機密書類を憲兵隊に差し出したのか?

憲兵隊長の泰治にどこまで、どのように話したのか? 優作とは関わり無く、文雄の単独犯行して?

ここは、本当に、何故?どうして?です。

夫の逮捕も覚悟? でも、それでは、タイトル「スパイの妻」は成立しません。

この後、どういう展開で、聡子は「スパイの妻」となるのか。

本日は、ここまでとします。

 

それでは、また。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻 」⑤ コスモポリタンと小市民の対立?

2021年04月28日 | 映画の話し

前回の続きです。

満州で見てきたこと、聞いてしまったこと、知ってしまったこと、女との関係、託された機密書類。

優作が経営する貿易会社の倉庫。僅かに光が差す暗い空間、聡子と、優作は向かい合います。

『それで? 英訳したノートをどうするおつもりです?』

『この証拠を国際政治の場で発表する。特にそこがアメリカなら、戦争に消極的なアメリカ世論を、対日参戦へと確実に導くことができる』

正義を理由にして戦争は起こりますが、それは単なる表向きのきれい事です。

現在の国際政治も、中国と米国が、世界の主導権を、覇権を、互いに「正義と不正義」を掲げて争っています。

むかしも、いまも、所詮は、勢力争い、経済争い、覇権のぶつかり合い。そして、互いの意思に関わりなく、武力衝突は互いに避けたいと思いつつ、戦争に突入してきたのです。

むかし国力は領土面積に、資源保有量に、おおきく依存していました。ですから国力の向上は、領土の拡大、支配地の拡大、資源の獲得でした。

日本が満州国を建国し、「五族協和」の理想を掲げました。しかし、現実は日本による支配で、満州は植民地で、日本の属国でした。

まあ、帝国主義の時代、遅れてきた日本としては、アジアから欧米を追い出す。言いように寄っては、良いように、欧米からの解放と言い換えられます。

でも、欧米を追い出した後、後釜に座るのは、その地位に就くのは、当然、アジアのリーダー国である日本と考えていたのです。

「八紘一宇」も、それ自体は、思想として、それなりに正しい側面もあるのですが、政策として、実行段階として、あくまでも、その中心は日本国が前提になっています。

どうして、こうも、自己を指導者として疑わず、他の人々を、他の国々を、自らの主張の下に、従わせたいのでしょうか? ある種人間の本能?それとも、人間の「業」か?

「五族協和」も、「八紘一宇」も、「大東和共栄圏」も、またぞろ復活しそうな気がする、きょうこの頃。

それで、話を戻します。

『アメリカが参戦すると、どうなります』

『日本は負ける』

『負けますか』

『遅かれ早かれ必ず負ける』

『それでは、あなたは売国奴ではありませんか』

『僕はコスモポリタンだ』

『えっ・・・』

何を言い出すの!こいつは! という表情の聡子。

『僕が忠誠を誓うのは国じゃあない。万国共通の正義だ、だからこのような不正義を見過ごすわけにはいかない』

二人は、厳しい表情で、激しい言葉で、感情的にぶつかり合います。

『あなたのせいで、日本の同胞が何万人死ぬとしても、それは正義ですか?私までスパイの妻と罵られるようになっても、それがあなたの正義ですか?私たちの幸福はどうなります』

高尚高邁な理想を述べる夫、現実的な妻。ここでタイトルの「スパイの妻」が否定的な言葉として出てきます。

『不正義の上に成り立つ幸福で君は満足か』

『私は正義よりも幸福をとります』

『ハハハハッ 知ったような口をきく。当然だ、君は何も見ていない、何も知らない。僕も君にそれを見せたはくはない。だがそれは起こっている。僕たちの同胞が、その悪魔のような所業を、彼の地で今も繰り返している。僕は見た。多分あらゆる偶然が僕を選んだんだろう。だとしたら、もう、何かしないわけにはいかない』

いつもの優作にしては、感情を露わにし、聡子を見下すような発言。

『あなたも文雄さんとおんなじ、すっかり変わってしまった』

『いや、これが本当の僕だ』

ここで、聡子も、感情を露わに、見下すように、

『いえ、私には分かっています。あなたを変えたのは、あの女です!あの女が、その胸に住み着いたんです。ええ、私は何も見ていません。それが何だと云うのです。国際政治がどうとか、偶然が選んだとか、そんなの知ったことじゃありません』

やはり、聡子は、優作と連れ帰った女との関係を疑っているのでした。

平穏で豊かな暮らしが危うくなる事への不安、優作が偉そうな事を云っても、そもそもは、所詮は、事の始まりは、単なる男と女の関係からと、聡子は優作が許せないのです。

『それは、絶対!そうなんです!』

吐き捨てるように言って、倉庫から出て行く聡子。

これで、このシーンは終わります。

これでは、二人は破局へと向かいそうです。聡子が「スパイの妻」にはなりません。この後、同展開するのか?

本日は此処までとします。

 

それではは、また。

 

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」④森村誠一で「悪魔の飽食」で731部隊!

2021年04月25日 | 映画の話し

前回の続きです。

優作以外には絶対に見せるなと云われた書類を、優作に手渡す為に会社に向かう聡子。

それで、ちょっと戻るのですが、書類を携えた聡子が、監視している5人の憲兵の間を通るシーンですが、憲兵が黙って見過ごすのは何か変です。

監視対象である文雄との面会目的は?何か頼まれた事はないか?それなりに尋問される筈です。監視対象ですよ! 

そもそもです。文雄が旅館に籠もって何をしているのか?ただ外で見張っているだけなのは、ありえません。踏み込んでのガサ入れは当然。

まあ、それは、それとして、優作の会社に着いた聡子は、就業時間が終わり、社員が退社した後、倉庫で、

『文雄さんから預かりました。英訳が終わったそうです』

と云った後、優作が受け取ろうとすると、手渡すのを拒み、

『やはり知らなければ、何も信じることはできません』

と、云って、書類に目を通すのですが、中味を理解できるとは思えない早さで、ほんの数秒間でページをめくり終わるのです。

観ている私には、図解から何か医学的な実験資料?としか見えませんでした。聡子も内容を理解するのは困難だと思われます。

しかし、優作は「危うい事情」が知られたとして、慌てて書類を聡子の手からつかみ取り、黙って金庫の中に仕舞うのです。

そして、危うい事情を知ってしまったように、聡子は、

『聞かせて下さい』

『何から話せばいいか』

『最初から』

優作は観念してしゃべり始めます。いままで真実を語るのを頑なに拒み、信じろとしか云わなかったのに、かなり、あっさりとしゃべり始めるのです。

『僕と文雄は釜山から満州国へ向かった。首都の新京は華やいでいたよ。・・・・・・それから僕たちは特別な許可を貰って関東軍の研究施設へ向かった。医薬品の便宜を打診する目的だ。途中車の窓から所々に小さい山が見えた』

『最初それは廃棄された農作物の山だと思った。近づくと山からたくさんの手足が生えていることに気付いた。山は煙を出していた。人間の死体が焼かれていたんだ。それは、ペストによる死体の山だった』

『それから僕たちは、行きがかり上ひとりの女の命を救うことになる。君も知る草壁弘子だ。彼女は看護婦で軍医の愛人でもあった。彼女は僕たちに、このペストの流行は関東軍の細菌兵器によるものだと告げた』

行きがかり上で知り合った女が、見ず知らず者に軍の最高機密をそう簡単にはしゃべらないと思います。

『ここで、ペスト菌の人為的な散布による生体実験を秘密裏に行っていると。それを内部告発しょうとした軍医は処刑され、弘子の身にも危険が迫っていた。なぜなら弘子は軍医から託された動かぬ証拠を持っていたからだ』

「軍医は処刑され、弘子の身にも危険が迫っていた」こんな状況で、密かに秘密書類を持って満州を脱出したのはかなり不自然。

『それが、あの実験ノートだ。君が文雄から受け取ったのは、そのノートと英訳した、もう一冊だ。そこにはペスト菌の散布だけではなく、捕虜を使った生体事件の様子まで克明に記録されていた』

『こんなことは、決して許されるものではない!』

ここまでで、オッ!これは!あの!『関東軍防疫給水部本部』、通称『第731部隊』の話ではないか! そんな展開になるとは、想定外でした。

ここで、確か?むかし読んだことが?と、本棚に向かったのです。

ありました!『悪魔の飽食』です。

著者は推理作家の「森村誠一」で、初版が昭和56年11月30日、私の手元にあるのは11刷りで、翌年の2月20日となっています。

概要はそれなりに記憶していますが、当然、細かな記述の記憶はありません。昭和56年ですから、1981年で、40年も前の事で、30歳の頃です。

敗戦後、36年の歳月が流れた後の発行です。当時、かなり話題となり、ベストセラーとなりました。731部隊が世に知られたのは、この本によってでした。

それで、ちょこっと、Wikipediaを覗いてみたら、ノンフィクションを騙った「フィクションだァ」何て記述もありました。

確かに、フィクションと突っ込まれるのは、証拠資料に乏しく、見つかった資料も間接的なものであったり、証言も実験当事者ではなく、周囲の人間の「私は見た」「私は聞いた」的な証言なのです。

まあ、当然、生体実験の記録、実戦使用の記録は焼却した筈ですし、実験当事者、部隊の責任者は、当然、何も語りません。

戦後、差し障りのない部分が米国に渡されました。それでも、その記録を見て、米国の学者は「ここまでは我々には人道的にできない。非常に価値のある実験」との証言しています。

話を「スパイの妻」に戻します。

それで、恐ろしい真実を聞いた聡子は、

『それでどうするの』と問います。

え~、話が長くなりましたので、この先は次回とします。

本日はここまで。

それでは、また。

 

 

 

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」③精神的にも肉体的にも追い詰められた文雄!

2021年04月22日 | 映画の話し

前回の続きです。

殺人事件が発生し、その被害者は満州から夫が連れてきた女性と聞かされ、夫優作を問い詰めても、自分を信じろとしか云わない優作。

夫を疑う聡子は、一緒に行った甥の文雄の居る温泉宿に行き、何があったのかを聞こうとする。

出迎えた旅館の主人が『文雄さん、ほんま見違えましたな、以前とはだいぶお変わりのようで驚きましたわ』の言葉には反応せず。

その話を遮るように『この二ヶ月主人が何度もお世話になって』と、しかし、主人は『何のこっちゃ?』との表情。

これは優作が、女と密会の為に、逢瀬のために、度々旅館に訪れていたのでは?との、問い掛けですが、何故か、主人の反応を確認せず、文雄の部屋に向かうのです。

これって、聡子が亭主の浮気を確信しているとの表現? そして、浮気は浮気として、それなりに確信しているが、それ以上に、隠している 背後の危うい事情に不安を抱いてるとの表現。

そして、文雄に、男女関係を、危うい背後関係を、問い質す聡子。このシーンのはじめの数カットから、風の音がBGMのように流れます。

ここで気が付いたのですが、ここまで冒頭から40数分、音楽は流れていなかったのです。この監督の手法なの?音楽はあまり使わず、映像と台詞だけの構成。音楽がない方がリアリティは感じます。

それで、文雄を問い質す聡子。

『本当のことを教えて下さい』

『本当とはなんです』

『草壁弘子を殺しましたか』

『バカなことを』

『何故、満州から連れてきたのですか』

『かわいそうだからですよ。放っとけなかったからですよ』

『あなたと主人の、どちらが、彼女を放っとけなかったんですか』

『これはまた、ご自分の連れ合いを疑ってらっしゃる』

『優作さんを疑ってなんかいません。ただ私は、事実が知りたいんです』

『事実、憲兵にいれ知恵されましたか。愚かだ』

文雄は優作から、聡子が殺人事件で憲兵隊に呼ばれた事で、秘密を知られたのでは?と、不安になっている。 

『愚かで結構。でも、あなたのしていることが、主人の立場を危うくすることなら、それは、なんとしても止めて貰わなければなりません!』

『やめる。どうやって』

『やっぱり。あなたたちは何か危ういことに関わってらっしゃるんですね』

『あなたは一度でも、叔父さんことを理解しようとしたことがありますか?どうして、おじさんの本当の気持ちを分かってあげないんです!』

『なんのこと』

『あなたはなにも分かっていない!あなたは何も見なかった。あなたに分かりようが無い!』

息づかいも荒く、激しく、大声で怒鳴る文雄。精神的にも、肉体的にも、かなり追い詰められている様子。

文雄の異常な様子に、二人が隠している背景の重大さに気付く聡子。

『私が見なかったものとは、何です?』

ここで、文雄は我を取り戻し。

『失礼しました。・・・何も知らない者にこそ、僅かな希望があるのかも知れない。・・・これをあなたに託します。・・・。決して開封せず叔父さん以外の誰にも渡してはいけない。僕はずっと憲兵に監視されています。ここを一歩も出ることができません。「英訳がやっと終わった」。叔父さんにはそう』

『そう伝えればいいのですね』

『ええ。さあ、もう行って下さい。・・・・・・お元気で』

このカットから初めて、バックに音楽が流れます。

旅館を見渡せる橋の上には私服の憲兵が5人。彼らの間を、託された書類を持って夫の会社に向かう聡子。

書類の中味は?この書類に危ういことの真相が!

それで、殺人事件の背景には、何か重大な事実があると疑う憲兵。文雄だけが監視されるのは、不自然です。

二人を殺人事件の容疑者として逮捕し、激しく取り調べるとか、家宅捜査をするとか、それをしないのは不自然です。まあ、それでは、ドラマとしては・・・ですから。

まあ、そう言う事で。

本日は、ここまでとします。

それでは、また。

 

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」②痴情のもつれで憲兵隊は動きません!

2021年04月19日 | 映画の話し

前回の続きです。

二人が満州から連れ帰った元看護婦が殺され、物語が動き始めます。

まず、ここで、幼なじみで憲兵の泰治が、聡子を憲兵隊に呼び、

①旅館の仲居が殺された。

②その仲居は満州で看護婦をしていた。

③満州から連れ帰ったのは優作と文雄。

④看護婦を旅館に仲居として世話をしたのは優作。

⑤この事件は「痴情のもつれ」と思われる。優作が潔白であることは調査済み。

⑥旅館に投宿している甥の文雄への疑いは残っている。

そして、この事件がどう動くかは、未だ分からない。あなたを呼んだのは、あらかじめ心構えして頂きたかったから。

そして、あなたと、あなたのご亭主がこれからどう振る舞われるか、我々は注視しています。

と、聡子は泰治から告げられたのです。

こう言われれば、仲居と亭主との関係を当然疑います。聡子と優作の関係に、それなりの亀裂が走ります。

『あなたと、あなたのご亭主がこれからどう振る舞われるか、我々は注視しています』と、これは泰治が、聡子と優作の関係悪化を期待しての言葉。

『我々は注視している』と云っていますが、「わたしは注視している」だと思います。

そもそもです。このような民間の「痴情のもつれ的」事件に、憲兵隊が動くことはありません。優作と聡子が絡んでいたから、憲兵の泰治が動いたのです。

そういう解釈を期待してのシーンだと思います。

話はそれますが、それにしても、このシーンですが、階段ホールに、あたかも部屋のよなセットを組み撮影しています。かなり違和感がありました。

それで、帰宅した聡子は、映画を観に行ったのは嘘で、本当は憲兵隊の分駐所に行っていたと告げるのです。

『泰治君が、僕には内緒で』と云っただけで、何故嘘を付いたのかは問わない優作。

「僕に内緒で」と「嘘を問わなかった」ことで、優作が、単なる痴情のもつれだけで無く、憲兵隊が何かを掴んで、動いているのでは?との警戒心を暗示させるカット。

連れ帰った女との関係を問い詰める聡子。

『仲居の事は?彼女は亡くなりました。』

『知っている。だが、それは君が必要のないことだ』

『何故です』

『君に無駄な心配はかけない、それが僕の信条だからだ』

『だとしたらそれは失敗です。やはり、草壁弘子とは知った仲なんですね』

『おい、ただちょっと向こうで知り合っただけだ、それ以上は何もない』

『泰治さんは、あなたがその女を連れ帰ったと云いました。お願いです本当のことをおっしゃて下さい。こんな気持ちは結婚していらい始めてです。急にあなたのことが分からなくなりました』

『問わないでくれ、後生だ』

『やっぱり・・・』

『僕は断じて恥ずべきことは何もしていない。ただ僕は君に対して、嘘をつくようには、できていない。だから黙るしかない』

『そんなの嘘と変わりません』

『君がどうしても問うならば、僕は答えざるをえない。だから、問わないでくれ。僕と云う人間を知ってるだろう。どうだ、信じるのか? 信じないのか?』

『ひきょうです、そんな言い方・・・・・・信じます』

『ありがとう』

『信じているんです』

『この話はこれで終わりだ。いいな』

これでこのシーンは終わります。

問うな!疑うな!君には関係無い!信じろ!これでは、聡子に信じろと云っても無理があります。

信じたいと思うが、信じられない聡子。二人の関係に亀裂が走ります。泰治の期待道の展開。

次のシーンで、今度は、聡子が優作に問い詰められるのです。

『この氷どうした。泰治クンは君にほれている。神戸にやってきたのもその為だ。君は、本当に気付かないふりをするのが得意だな。僕の方は君に嘘をつくようにはできていないというのに』

次のカットで、殺された仲居が登場。そうです。これは聡子の夢のなかのシーン。

聡子の心の動きを、思いを、疑いを、不安を、夢のかたちで描かれるシーン。

仲居と優作が、ベットの上でじゃれ合いつつ、

『優作さんて、ホント、嘘の付き方お上手』

『そうか』と云って、二人は声を上げて笑う。

この夢は、以前、優作が満州へ出掛けて留守の際に、女中を連れて、自然薯採りに来た聡子と、ウィスキーに入れるための、天然氷をとりに来た泰治が、偶然、近所の山の中で会った時の事が重なっているのです。

家に旨い舶来のウィスキーがあるから、帰りに寄って下さいと誘った聡子。一瞬、間を置いて『分かりました後で伺います』と応えるのです。

一瞬の間は、聡子の誘いの意味を、優作の事を口にしてないことで、もしかして留守? 亭主の居ない家に誘う意味を、そして、儚い期待も・・・、そんな事での、一瞬の間。

そして、二人でウィスキーを酌み交わすシーン。

『優作さんがご在宅でないなら寄りませんでしたのに』

これは、本音半分、嘘半分。

『そんな気がしたので云わずにおきました』

『聡子さんは楽しく過ごされていますか?』

『夫がいない間はもちろん寂しいです』

『それはどういう意味です』これはかなり露骨な質問。

『どういう・・・?フフッ、表も裏もありません』

『そうですね、あなたそういう方だ』

主人の留守に酒に誘う聡子に、忘れようにも、忘れさせないそぶりに、いまでも、聡子への思いが消ないことを意識する泰治。

総子の曖昧な態度に、これまで、泰治は苦しんできたのです。そのことは聡子も薄々は気が付いているのです。

そして、亭主の優作も泰治の気持ちを、それなりに気付いている、と、感じている聡子。

聡子と泰治は幼なじみであり、その後も、それなりの友人関係を保っているとの、設定ですが、詳細は描かれていません。

泰治と聡子の友人関係の中に、優作が登場し、優作と聡子が恋愛関係となり結婚。この過程は観る人の想像に任せています。

わたしとしては、聡子の結婚を機に、泰治は職業軍人の道を、自分の意に反して選択したと思います。過去の自分を、聡子への想いを、断ち切るための選択として。

そもそも「自分は取り調べは好きでは無い」と云ったり、聡子に「泰治さんに軍服は似合わない」と云われたり、泰治は軍人に、憲兵に、向いて居ないのです。

それでも、軍人を選択したのです。可哀想な泰治クン。わたしとしては、泰治クンに感情移入してしまいます。

本日はここまで。

次回より物語は激しく動き始めます。

『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』の背景としては、かなり残酷な歴史的事件が・・・。

それでは、また。

 

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蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」①いろいろ疑問な事が!

2021年04月17日 | 映画の話し

先日、録画して置いた「スパイの妻」を見ました。

放送日(4/12)の3・4日前に、番組宣伝を見て予約しました。そのとき、あれ!と思ったのです。

「ドラマ・スパイの妻」となっていたのです。「映画・スパイの妻」とは違うの?

私がこの作品を知ったのは、去年の「ヴェネツィア国際映画祭」で銀獅子賞を受賞したとの報道でした。

見た後で知ったのですが、この作品はNHKBS「8K」の2時間ドラマとして、20年6月に放送され、その後、劇場版としてリメイクされたようです。

「BS4K」での放送ならば私の目にも止まったのですが、「BS8K」放送は一般家庭では、ほとんど見ませんと云うか、見られません。

まあ、そんな背景は、それは、それとして、見終わって、とても、とても、良くわからない事と云うか、疑問な事が、多々或のでした。

それで、作品のテーマとしては、『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』(NHKページから転載)

1940年代の太平洋戦争前夜から、敗戦までの5年間を、神戸を舞台として描かれています。

貿易商を営む勇作(高橋一生)、その妻聡子(蒼井優)。優作は、社員で甥の文雄を伴い満州へ。

帰国後、甥の文雄は突然、社の忘年会で「満州で実際の戦争を目にし、いつ招集されかも知れず、その前に、何か後世に残る作品を書きたい」と、有馬温泉の旅館に籠もると宣言。

そして、殺人事件が発生。被害者の女性は、文雄が投宿している旅館の仲居。

ここから、物語が動き出します。

ある日、聡子は神戸の憲兵隊で、分隊長をしている幼なじみの津村泰治(東出 昌大)に呼び出されるのです。

殺された仲居は、満州で看護婦をしていた事、最近急に帰国した事、連れてきたのは夫の優作、旅館に紹介したのも優作。

優作は事件に関与していないことは、調べが付いている。疑われているのは甥の文雄。

と、幼なじみの分隊長の津村から告げられ、聡子は夫に不信感を募らせるのです。

それで、

疑問①、待ち望んでいた勇作と文雄の帰国を、神戸港に出迎えに行った聡子。聡子が勇作と人前で激しく抱擁するカット。

疑問②、優作と聡子の脇を、美しい女性を伴った文雄が通り過ぎるカット。聡子は出迎えの時、文雄に会っていない。

そもそも、出迎えに行った聡子が、文雄の存在をまったく気に止めず抱き合うのは不自然。

帰国の遅れを知らされた時、文雄の母親を気遣い、手紙したためていた聡子が、出迎えで文雄に会わないのは不自然。

戦前、男女が人前で抱き合うことは有りえないと思います。これは、女性と文雄が通り過ぎるのを、聡子が気付かないのは不自然なので、敢えて、不自然な抱擁カットを入れた?

そして、殺人事件が発生。

被害者は旅館の仲居。

ここから、物語が展開します。

きょうは、ここまでとします。

おじさんの惚け防止に、ここまでお付き合いされた方に感謝します。

ドラマを見て、いろいろ詮索するのは、とても、とても、惚け防止になります。

それでは、また、次回も宜しく。

 

 

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『家族はつらいよ2』観て来ました!それなりに笑えました!「無縁社会」がテーマでした!でも「有縁社会」は何処に?これから創る?

2017年05月31日 | 映画の話し

面白かった!

笑えた!

それで、ヨカッタ!?

やはり、山田洋次監督です。

手堅いです。

死者と云うか、死体と云うか、遺体と云うか、やはり怖いし、気持ち悪いし、それを巡り、平常心を失った周囲のドタバタは可笑しいのです、笑ってしまうのです。

エンディングロールを眺めながら、でも、何か、それだけでは、やっぱり、ちょっと、物足りなさを感じたのです。

まあ、一つの喜劇作品で、いろいろ欲張ってみても、それは無理だとは思うのですが、泣いて、笑って、感動して、そして、そのなかで、時代が描かれ、問題提起がされ、見終わって考えさせられたり・・・・・・。

まあ、兎に角、死体発見時のドタバタ、火葬場でのドタバタ、可笑しい、面白い、笑えました。劇場内は、それなりに笑い声で包まれました。

見終わって帰り際に買い求めたパンフレット、ランチの時に開いて見たら、巻頭で山田監督の言葉・・・

『家族はつらいよ』制作にあたって・・・、

「今回のテーマは無縁社会」で、高校時代の同級生の孤独で悲しい死を目の当たりにすることで、自分達の幸せに改めて気付き、家族が新たな絆を作っていく、そんなお話しです。

と、語っていました。

えっ!そうだったの!バブル期から現代までを背景とした、「無縁社会」がテーマだったの!観ていて気が付きませんでした。

ひとり寂しく、生きていく、死んでいく、そんな人は、いつの時代にも居たと思うのです。

そして、良くありがちな、他人の不幸を見て、自分の幸せを感じるパターン、確かに、人間はそういうものです。でも、何か、それでは、ちょっと、悲しいのです。

そして、絆と云う言葉は、東日本大震災以降、かなり、かなり、手垢が付いて、安易で、胡散臭い響きを感じてしまうのです。

そして、そして、そして、「無縁社会」に「孤独死」と云う言葉。

「無縁社会・孤独死」は、世の中、バブル崩壊、ソビエト崩壊、グローバル経済、新自由主義で、やりたい放題で、格差拡大で、世知辛くなり、他人の事どころか、身内の事も構っていられない世の中に・・・。

血縁からも、地縁からも、見捨てられ、見放され、誰にも知られる事無く、一人寂しく生きていく老人・・・、死んでいく老人。

でも、ホントに、そんな老人は増えているの?増加したデーターはあるの? 10%、20%、30%・・・、2倍、3倍になった?

私が若かりし頃は、地縁、血縁の縛りを切り捨て振り払い、個人として、自由を求め都会に旅立つのが、青春だったような気がします。

そして、世の中も、高度経済成長で、親、兄弟、親戚、隣近所との、助けられたり、助けたりが無くとも、生きられる時代になりつつあった、と、思っていたのです。

都会の下町でも、隣近所が、助け、助けられ、他人の子供も叱りつける、そんな下町人情は、鬱陶しく、プライバシーの侵害とか、親の教育権への介入だとか、そんな風潮でした。

家族主義から、個人主義の時代へと、経済成長が後押ししていたと思うのです。

そして、いま、時代は低成長で、個人主義から家族主義へと、振り子が戻り始める?

行き過ぎた個人主義が、行き過ぎた権利の主張が、家族を崩壊させ、地域社会を崩壊させ、そして、国家を崩壊させる、と主張する、そんな、そんな、風潮が、そんな政治勢力が、かなり、かなり、世の中で息を吹き返し始めているのです。

美しい日本の伝統文化を、家族制度を復活するには、明治憲法の時代に戻ることが、一番の解決策と唱える方達が、政治の中心に陣取っているのです。

教育勅語、修身、明治憲法の復活で、親に孝、国に忠、美しい日本の復活!と、云う主張は、自由よりも秩序を!で、それなりに受け入れ易いのです。

「無縁社会」と云う言葉を、負の要因として、安易な批判を受け入れると、その先には、かなり、かなり、危険な事が待っている気がするのです。

でも、しかし、です。“インテリ”の山田監督は、庶民は、一般大衆は「寅さんの世界」を、下町人情の世界を、有縁社会を、ホントに居たら困る寅さんの世界を望んでいると・・・・・・・。

そも、そも、です、明治憲法下の世の中は、暮らしは、家族は、社会は、国家は、今よりも、ずっと、ずっと、安全で、暮らしやすかったの?

家庭では、父親を頂点として、世の中は、天皇を頂点にして、安全で、秩序正しく、みんなが助け合い、犯罪も少なく、みんな仲良く安心して暮らせる時代だったの?

でも、しかし、どうも、そうでは、無かったようなのです。近くのモノは汚く、遠くのモノは綺麗に見えてしまう、そんな習性が働いているようです。

無縁社会ですが、単純に、そんな事は云えないと思います。

無縁化社会の前は有縁社会? そんな有縁社会は過去に存在していたの?

社会が無縁化する前は、有縁社会ではなく、縁を憂う社会で、“憂縁社会”だった?

ここちよい距離感の縁を結ぶ、“優縁社会”は、これから現れる?創られる?

と、云う、事で、気が付いて見たら、冒頭の、

『でも、何か、それだけでは、やっぱり、ちょっと、物足りないのでした。一つの喜劇作品で、いろいろ欲張ってみても、それは無理だとは思うのですが、泣いて、笑って、感動して、そして、そのなかで、時代が描かれ、問題提起がされ、見終わって考えさせられたり・・・・・・。』

は、それなりに、目的は達成されていたのです。

さすがに、山田洋次監督の作品です。

でも、7百数十円パンフレットを見てテーマが「無縁社会」と知ったのです。でも、しかし、無料のチラシにもたぶん書いてあるのでしょう。

映画は、やっぱり、それなりに、多少の事前準備は必要?

数百日を費やして創り上げた作品を、2時間ちょっとで理解するのは不可能?いや、それでも、作品だけを観ても解るように創るべき?

でも、しかし、そんなコムズカシイ事は横に置いといて、泣いて笑って感動すればよい? 

まあ、お金を払った人が、それぞれの楽しみ方をするのは当然!

皆さん、それなりにお疲れなので、泣いて笑って明日への活力でOK。

それで、当日、28日の日曜日の9時40分、最初の上映で、180余りの席は、ほぼ3割程度の入りでした。年齢層はほぼ60代から70代前半の方々でした。

「男はつらいよ」は、若い人から年寄りまで幅広かったのですが、いまでは、どんな監督でも、そんな映画は創れない?

まあ、と、云うことで、時間もよろしいようで、本日は、これで、おしまい。

 

それでは、また。

 

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映画「家族はつらいよ」は「東京家族」の姉妹編で!今の「東京物語」でそれにしても夏川結衣はキビシイ!

2016年04月04日 | 映画の話し
「家族はつらいよ」を、先日、ふたりで観てきました。

9時50分からの上映となっていましたが、かなりの時間、しつこく、しつこく、予告編の数々を見せられ、かなり、かなりのうんざりでした。

それは、それとして、「家族はつらいよ」ですが、結論を先に云ってしまえば、それなりに、よくできた喜劇でした。

観客の笑い声が時より聞こえ、隣の席の連れも時々クスクス笑っていました。私も笑いました。

「男はつらいよ」は“在るようで無い”東京下町人情ドラマで、「家族はつらいよ」は“在るようで在る”東京郊外家族ドラマ”でした。

それで、ストーリーの話しです。

妻の誕生日に夫が“プレゼントに何がほしい?”と聞くと、妻はやおら引き出しから離婚届を持ち出して署名と捺印を要求し、そこからドラマは展開するのです。

妻は、靴下も、パンツも、シャツも、裏返しで床に脱ぎっぱなし、平気で目の前でオナラをする、うがいのとき痰を汚らしく吐き出す・・・等々、そんな日常の些細な仕草が耐えられない、と云うのです。

まあ、そう云う話しは、世間ではよくある事とされています。日常の仕草がイヤだから、気になり、気に障り、精神的に耐えられない、一緒に暮らしたくない、そして・・・・・・別れたい、と、なる。

でも、本当は、存在を認めていない、炊事、洗濯、掃除、やって当然、居て当たり前、と、妻に対して感謝がない、と、そんな夫の仕草の一つ一つが耐えられなくなる。

いろいろあって、次男の婚約者(蒼井優)から、“お母さんは、お父さんから感謝の言葉が聞きたいのよ、離婚理由を言葉にしたのだから、お父さんも、それに対して感謝の気持ちを、言葉にして伝えるべき”と云われるのです。

しかし、お父さんとしては、“俺は外で働き家族を支えてきた、今さら、言葉にしなくとも、そんな事は判っている筈”と抵抗するのです。

しかし、妻へ感謝の気持ちは、言葉にしても、態度にしても、伝えた記憶は、もう、遠い、遠い過去となり、いつの頃からか消えていた事に、一抹の不安を感じるのです。

人間、やっぱり、それなりに、言葉として、態度として、はっきりと、想いを伝えないと、互いの気持ちは、少しずつ、少しずつ、離れていく・・・のです。でも、解っていても・・・・・・なかなか、なのです。

ながい年月一緒に暮らしていると、飽きが来るのです、存在が見えなく、感じなく、なるのです。固定的婚姻関係は、生物学的には、かなりの無理があるのです。ですから、世の中、不倫が絶えないのです。不倫は生物学的な問題です。

それは、それとして、いろいろあって、お父さんは、感謝の気持ちとして、妻がいま一番望んでいる離婚届に署名捺印し“プレゼントです”と云って、手渡します。

そして、受け取ったお母さんは、離婚届を即座に破り捨てるのでした。

これで、ドラマは、ハッピーエンド!

兎に角、好きだ嫌いだと云った年月は、遠い過去のお話となってしまった夫婦を、つなぎ止めるものは、互いに、認め合い、感謝し合い、支え合い、付かず離れず、そして、寄り添う・・・と、まあ、そんなメッセージが聞こえてくる作品でした。

ムズカシイのですが、そんな地点に達した時、いろいろと景色は変わって見えてくるのでしょう。そんなところが、正解とかと思います。ホントにムズカシイのです。

それにしても、二人で観る作品としては、かなり微妙でした。

それにしても、長男の嫁“夏川結衣”には驚きました。顔つきと云い、体型と云い、時の流れをしみじみと感じました。

彼女を知ったのは、2010年NHK終戦特集ドラマ「15歳の志願兵」と、同じ年、日テレ山田太一ドラマスペシャル「遠まわりの雨」でした。現在47歳だそうですが、6年の歳月の流を感じました。

それは“中嶋朋子”にも云えます。二人とも40代で、女優としてムズカシイお年頃です。特に“モデル出身”の結衣ちゃんは“キビシイ”お年頃です。

それにしても、正蔵師匠ですが、“お父さんの三平”にそっくりになりました。その辺を意識して、右手を頭にかざして“ドウモスイマセン”と、お父さんのギャグを入れたり、髪型をお父さん風にしたシーンがあったり、笑わせてくれました。

それと、蒼井優ですが、東京家族での役回りと云い、今回と云い、同じように、優しくて、しっかりしていて、きっぱりとした発言で、物語を動かすいい役でした。

女優としては、あまり美人ではありませんが、“清く、貧しく、正しく、美しく”そんな役柄にピッタリで、云い女優です。現在30歳だそうで、まだまだいけそうです。

兎に角、見終わって、「家族はつらいよ」は、失敗作?だった「東京家族」の、汚名挽回!間違いました、汚名返上!の為に作られたと思いました。

「東京家族」は、監督の「東京物語」に対する、小津安二郎に対する、強い、強い、思いから作られた、“趣味”の作品だった、と思います。

兎に角、『“喜劇”家族はつらいよ!』は、面白かったです。


それでは、また。



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三隅研次監督の『剣』で市川雷蔵と三島由起夫で現在の改憲・護憲論争に思いを巡らします

2016年03月09日 | 映画の話し
『剣』を観ました。

市川雷蔵で、「剣」ですから、当然、時代劇だと思っていたら、それが、何と、現代劇でした。

見終わって感じたのは、自分の理解を超えた、自分とは異なる次元の、異なる思想の、有る意味で「怖い」作品でした。

兎に角、です。原作が、あの三島由紀夫ですから、純粋で、正しく、美しく、下界の生身の庶民とは異なる、高貴なる理想を追い求め、独り気高く悩み、独り気高く死んでいく、そんなお話です。

冒頭、太陽を見つめる少年の鋭い眼のアップ、それに被せて主人公の独白のナレーション、

『この時、俺は太陽の本質を見た、それは眩しくて、とても正視できない絶対の正義、その輝きを全身に浴びて、俺は強く成りたいと思った。強く正しく成りたいと願った、そして、剣を学んで俺はこのなかに、最も新鮮な、純粋な生命の耀きを掴みうると信じた』

何てことを語るのでした。とても、少年の頃に“太陽の本質”を見てしまうのです。ふつうの人では、太陽を見つめて、太陽の本質なんて、そんなことは考えない、思いもしない、そんな青年のお話です。

そして成長した主人公は、大学剣道部の主将として、酒とか、女とか、タバコとか、バクチとか、そういう下界の、下世話の、汚れと自己を隔絶したと云うか、遠ざけてと云うか、理想の剣の道を追い求め、理想の指導者像を追い求め、鍛錬の日々なのです。

そして、夏合宿で部員全員が規則を破り、その違反行為に対して、主将として一言も語らず、合宿の打ち上げの翌朝、剣道着で竹刀を携えた姿で、死んでいるのが発見されるのです。

何故? 自ら命を絶ったのか?

部員の違反行為は、単なるキッカケだと思います。成長するに連れて、世の中の汚れと隔絶することのムズカシさに、気が付きはじめるのです。

生身の人間として生きていく事は、それなりに下世話の、世の中の、汚れから、己を遠ざけて生きていくのはムズカシイのです。いつか、何処かで、それなりの、妥協を強いられるのです。

でも、少年の頃に太陽の本質を見た彼は、いま、ここで、自己の生命を断つことで、美しい正義を体現しつつ、汚れることなく、生を全うし、生を閉じたのでしょう。

でも、ねぇ、そんなことは、荒唐無稽で、高等遊民の、自己陶酔だと思います。まあ、周りに迷惑を掛けぬ程度に、どうぞ御勝手になのです。

それにしても、主人公の自死で想起するのは、何たって、市ヶ谷駐屯地での“あの事件”ですよ。

1970年の11月25日に、憲法改正のため自衛隊の決起呼びかけ、割腹自殺をした事件です。三島由紀夫45歳、私は20歳の時でした。

原作「剣」が発表されたのが1963年の10月で、5か月後の3月には映画化され公開、何とも素早いのです。三隅研次監督は63年当時、この小説の映画化に何を託したのか?

“60年の安保闘争後”の「剣」で、“70年安保闘争後”の市ヶ谷割腹自決事件で、どちらも、対米従属からの、日本国の自立が、憲法が、問われているのです。

そして、2016年のいま、自民党安倍晋三内閣で、憲法改正が、9条の改正が、具体的な政治課題となっているのです。

でも、しかし、三島が居た時代とは異なり、まったくの様変わり、改憲派にしても、護憲派にしても、言葉が軽いのです。

理想とか、思想とか、信条とか、そんな事とは無関係に、命を掛けるほどの事もなく、単なる政局として語られているのです。緊張感が、緊迫感が、現実感が無いのです。

やはり、理想があって、思想があって、体系的、大局的な政策があって、それを掲げた政党があって、論争があって、そして、選挙があって、国民の審判があって、その結果があって、国は、世の中は、まわっていくのです。

三島由紀夫が望んだ、米国から、占領軍から、敗戦国として、押し付けられた、戦後憲法の改正が具体的な政治課題となったいまの姿、彼の眼にはどのように映っているのか?

話しを戻します。

兎に角、あの頃、私が20歳のころ、こんな、思想的、政治的、映画があったのです。“市ヶ谷事件”を予告するような作品でした。

もしかして、もう、そろそろ、世の中に、具体的に、差し迫って、未来を掛けての、命を掛けての、緊迫感のある、そんな時代が始まるころかも?

でも、みんな、怖いから、気付き始めても、知らない素振り?

う~ん。本日、窓の外は暗く、雨雲が覆い被さり、昨日の陽気とは打って変わって、真冬の寒さに戻り、話しも、暗くなってしまいました。

そして今朝、眼の醒める直前に見た夢が、とても暗い夢だったのです。夢はその日の気分にかなり影響します。

兎に角です。「剣」は、とても、暗い作品で、意味深で、暗示的で、でも、それなりに、楽しめる作品でした。

とにかく。これでお終い。


それでは、また。


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