面白かった!
笑えた!
それで、ヨカッタ!?
やはり、山田洋次監督です。
手堅いです。
死者と云うか、死体と云うか、遺体と云うか、やはり怖いし、気持ち悪いし、それを巡り、平常心を失った周囲のドタバタは可笑しいのです、笑ってしまうのです。
エンディングロールを眺めながら、でも、何か、それだけでは、やっぱり、ちょっと、物足りなさを感じたのです。
まあ、一つの喜劇作品で、いろいろ欲張ってみても、それは無理だとは思うのですが、泣いて、笑って、感動して、そして、そのなかで、時代が描かれ、問題提起がされ、見終わって考えさせられたり・・・・・・。
まあ、兎に角、死体発見時のドタバタ、火葬場でのドタバタ、可笑しい、面白い、笑えました。劇場内は、それなりに笑い声で包まれました。
見終わって帰り際に買い求めたパンフレット、ランチの時に開いて見たら、巻頭で山田監督の言葉・・・
『家族はつらいよ』制作にあたって・・・、
「今回のテーマは無縁社会」で、高校時代の同級生の孤独で悲しい死を目の当たりにすることで、自分達の幸せに改めて気付き、家族が新たな絆を作っていく、そんなお話しです。
と、語っていました。
えっ!そうだったの!バブル期から現代までを背景とした、「無縁社会」がテーマだったの!観ていて気が付きませんでした。
ひとり寂しく、生きていく、死んでいく、そんな人は、いつの時代にも居たと思うのです。
そして、良くありがちな、他人の不幸を見て、自分の幸せを感じるパターン、確かに、人間はそういうものです。でも、何か、それでは、ちょっと、悲しいのです。
そして、絆と云う言葉は、東日本大震災以降、かなり、かなり、手垢が付いて、安易で、胡散臭い響きを感じてしまうのです。
そして、そして、そして、「無縁社会」に「孤独死」と云う言葉。
「無縁社会・孤独死」は、世の中、バブル崩壊、ソビエト崩壊、グローバル経済、新自由主義で、やりたい放題で、格差拡大で、世知辛くなり、他人の事どころか、身内の事も構っていられない世の中に・・・。
血縁からも、地縁からも、見捨てられ、見放され、誰にも知られる事無く、一人寂しく生きていく老人・・・、死んでいく老人。
でも、ホントに、そんな老人は増えているの?増加したデーターはあるの? 10%、20%、30%・・・、2倍、3倍になった?
私が若かりし頃は、地縁、血縁の縛りを切り捨て振り払い、個人として、自由を求め都会に旅立つのが、青春だったような気がします。
そして、世の中も、高度経済成長で、親、兄弟、親戚、隣近所との、助けられたり、助けたりが無くとも、生きられる時代になりつつあった、と、思っていたのです。
都会の下町でも、隣近所が、助け、助けられ、他人の子供も叱りつける、そんな下町人情は、鬱陶しく、プライバシーの侵害とか、親の教育権への介入だとか、そんな風潮でした。
家族主義から、個人主義の時代へと、経済成長が後押ししていたと思うのです。
そして、いま、時代は低成長で、個人主義から家族主義へと、振り子が戻り始める?
行き過ぎた個人主義が、行き過ぎた権利の主張が、家族を崩壊させ、地域社会を崩壊させ、そして、国家を崩壊させる、と主張する、そんな、そんな、風潮が、そんな政治勢力が、かなり、かなり、世の中で息を吹き返し始めているのです。
美しい日本の伝統文化を、家族制度を復活するには、明治憲法の時代に戻ることが、一番の解決策と唱える方達が、政治の中心に陣取っているのです。
教育勅語、修身、明治憲法の復活で、親に孝、国に忠、美しい日本の復活!と、云う主張は、自由よりも秩序を!で、それなりに受け入れ易いのです。
「無縁社会」と云う言葉を、負の要因として、安易な批判を受け入れると、その先には、かなり、かなり、危険な事が待っている気がするのです。
でも、しかし、です。“インテリ”の山田監督は、庶民は、一般大衆は「寅さんの世界」を、下町人情の世界を、有縁社会を、ホントに居たら困る寅さんの世界を望んでいると・・・・・・・。
そも、そも、です、明治憲法下の世の中は、暮らしは、家族は、社会は、国家は、今よりも、ずっと、ずっと、安全で、暮らしやすかったの?
家庭では、父親を頂点として、世の中は、天皇を頂点にして、安全で、秩序正しく、みんなが助け合い、犯罪も少なく、みんな仲良く安心して暮らせる時代だったの?
でも、しかし、どうも、そうでは、無かったようなのです。近くのモノは汚く、遠くのモノは綺麗に見えてしまう、そんな習性が働いているようです。
無縁社会ですが、単純に、そんな事は云えないと思います。
無縁化社会の前は有縁社会? そんな有縁社会は過去に存在していたの?
社会が無縁化する前は、有縁社会ではなく、縁を憂う社会で、“憂縁社会”だった?
ここちよい距離感の縁を結ぶ、“優縁社会”は、これから現れる?創られる?
と、云う、事で、気が付いて見たら、冒頭の、
『でも、何か、それだけでは、やっぱり、ちょっと、物足りないのでした。一つの喜劇作品で、いろいろ欲張ってみても、それは無理だとは思うのですが、泣いて、笑って、感動して、そして、そのなかで、時代が描かれ、問題提起がされ、見終わって考えさせられたり・・・・・・。』
は、それなりに、目的は達成されていたのです。
さすがに、山田洋次監督の作品です。
でも、7百数十円パンフレットを見てテーマが「無縁社会」と知ったのです。でも、しかし、無料のチラシにもたぶん書いてあるのでしょう。
映画は、やっぱり、それなりに、多少の事前準備は必要?
数百日を費やして創り上げた作品を、2時間ちょっとで理解するのは不可能?いや、それでも、作品だけを観ても解るように創るべき?
でも、しかし、そんなコムズカシイ事は横に置いといて、泣いて笑って感動すればよい?
まあ、お金を払った人が、それぞれの楽しみ方をするのは当然!
皆さん、それなりにお疲れなので、泣いて笑って明日への活力でOK。
それで、当日、28日の日曜日の9時40分、最初の上映で、180余りの席は、ほぼ3割程度の入りでした。年齢層はほぼ60代から70代前半の方々でした。
「男はつらいよ」は、若い人から年寄りまで幅広かったのですが、いまでは、どんな監督でも、そんな映画は創れない?
まあ、と、云うことで、時間もよろしいようで、本日は、これで、おしまい。
それでは、また。