前回の続きで「みんなのための資本論」で、お勉強します。
本日は、何故、どうして、いつの頃から格差は拡大したの?
そして、その原因は?
そして、我々は、どうしたらいいのか?のお話になります。
講師は“ロバート・ライシュ教授”です。
それでは、始めます。
先ずは、1929年から2011年までの国内総生産(青)のグラフ。経済は成長し続けているのです。しかし、労働者の時給(赤)は1970年代の後半から横這いとなっている。
70年代後半の頃より、何かが?起こったのです。
ここで、ロバート教授は労働組合の組織率の(変化赤いグラフ)を示します。そして、それに重ね合わせて中間層の所得のグラフ(白)
組織率の低下と所得の低下はピタリと重なるのです。
70年代の終わり頃から、労働組合に対する攻撃が始められます。雇用主は積極的に、新たな組合の結成を阻止し、また、既存の組合も潰しにかかります。
それは、技術革新で、運輸、通信、IC化で、生産プロセスを世界中に分散させる事可能にします、グローバル化です。
アメリカ国内製造業の海外展開、自動化で就業人口の低下し、由って賃金の低下。製造業はコンピューターとロボット。
また、流通業でも、アマゾンのような年間800億ドルを売り上げる巨大企業の出現し小売店は消滅しつつある。巨大流通業ではコンピューターとロボットで省力化、売り上げに比較して、雇用者は6万人と少ないのです。従来の経営形態の小売店で、800億ドルを売り上げるには、100万人は必要。
グローバル化と技術革新がアメリカ人の働き口減らしたという通説は間違いで、正しくは賃金を引き下げたのです。
そうすると、教授!小売店の100万人から、アマゾンの6万人の差、94万人はより低賃金の職種に転職し、より低賃金の職種は、供給過剰で、さらに、さらに低賃金に!と、云う事ですね。
いろいろな職業の年収。
レジ係 20,230
調理人 21,280
タクシー運転手 25,120
保育士 30,150
介護士 20,520
食肉加工1970年40,599から、2010年では24,190に、銀行窓口係 27,920から24,100に、
そして、そして、賃金は低下したにもかかわらず、住居費、医療費、育児費、教育費、等の家計費の急上昇。
ここで教授から家計費の上昇の理由は語られません。私の見解としては、住居、医療、育児、教育の分野は、グローバル化、国際競争に晒されない分、コストアップが容易だった。まあ、たぶん、そんなところ?
そして、その結果が、共働きの増加、女性の社会進出。
この状況からの脱出の方法は、アメリカの「大繁栄時代」第二次大戦後の30年間に、その答えがあると教授は云うのです。
大繁栄時代は、国家が高等教育に力を入れ、世界で最も教育水準の高い労働力を持つ国家になり、大卒の学位取得者は1940年代の5.9%から1970年代後半には24%に、結果として、
「労働者の教育水準向上」→賃金増加→購買力上昇→雇用増大→税収増加→公共投資増加→「労働者の教育水準向上」の好循環
労働組合も多く誕生し、労働分配率の増加、格差の縮小。これにより、アメリカは世界最大の中間層を生み出し、その中間層が経済の好環境を生み出した。
と、云うことで、もう一度、もう一度、大繁栄時代の政策を実施することのようです。原因と結果を取り違えてないかい?
ここで、わたくしは、ホント!?ロバートさん、時代背景を無視していませんか?と、突っ込みを入れました。
わたしとしては、第二次大戦後の世の中は、破壊から再生の時代です。物の無い時代から、大量消費の時代への移行期です。今は、大量生産、大量消費の時代は終わりを告げ、物への欲望は縮小期に入っています。
そして、教授が中間層、中間層と、その重要性を叫んでいますが、製造業でも、サービス業でも、中間管理職が、間接部門が、縮小しているのです。技術革新です、IT化です。
世の中、高度の専門的知識を必要とされる高収入の職種と、まったく経験も知識も必要とされない低定収入の職種に、分極化したのです。高収入の職種はより高収入に、定収入の職種はより低収入に、格差は拡大したのです。
高度の専門的知識を必要とする高収入労働者は、ごく一握りで事足りるのです。残りは、圧倒的多数の低賃金の単純労働者となります。
よって、中間層は“収縮”したのです。ですから、第二次大戦後の「大繁栄時代」の政策を実施に効果は期待できないのです。
それと、グローバル化は“平準化”です。アメリカの労働者の賃金は低下しましたが、開発途上国の賃金は上昇したのです。
そもそも、アメリカの繁栄は、他の貧しい国の人々の犠牲の上に、成り立っていたのです。
そして、そして、グローバル化は、社会主義国家、ソビエト連邦の崩壊が大きく影響しているのです。中国が社会主義を捨て、国家資本主義として、世界の製造工場として成長したのも、そう云うことなのです。
世界がひとつの経済圏になったのです。と、云う事で、TPPなのです。ルールの統一なのです。何処の国が得をして、どこの国が損をする、そんな話しではありません。
世界を股にして金儲けをする強大な企業が、各国の規制を取っ払い、自由に金儲けする仕組み獲得するです。もう、各国の事情は関係ないのです。
それで、労働組合の組織率が低下したのも、資本主義に対抗する社会主義が敗北したからです。組合の組織率の低下は原因では無く、結果です。
労働者の分配率の低下も、社会主義と競争する必要が無くなったからです。資本主義が、大企業が、やりたい放題が、可能となったのです。
いろいろな条件が、いろいろと絡まっての現在なのです。ロバート教授は、活動家であり、行動的なようですが、とても、とても、楽観的です。
公共投資を増やしたり、労働者の意識変革を促したり、学生に叱咤激励したり、いろいろとやられているようですが、それだけでは、格差は改善しないと思います。
富も、分配も、偏っていますが、教授の現状分析も偏っています。
何て、事で、アメリカの著名な経済学者を、日本の田舎のオジサンが大胆に批判したりして・・・・・・・。
兎に角、これでは、世の中は、社会は、世界は、日本でも、アメリカでも、中国でも、ロシアでも、国家はまわらなくなります。
さあ、どうしたら、よいのでしょうか?
ホント! 誰も、何処の国でも、答えは持っていないのです。
それにしても、自動運転技術も、人工知能もですが、益々、人が要らなくなりそうです。人は機械にできない、もっと、想像的な仕事に!何て云われても、そんな事ができる人達は、ごく少数の限られた人達だけだと・・・・・・思ったりするのです。
ふつうの人が、ふつうに働いて、ふつうに楽しく、ふつうに暮らしていける、そんな世の中になるための答えが見つかるのは、もう少し・・・、あと数十年・・・先かも?
わたしとしては、必要最低限の労働で、必要最低限の生産をし、ゆっくり、ノンビリ、明るく、楽しく、暮らす社会が、心にも身体にも、とてもイイと、そんな風に思う、きょうこの頃でした。
はい、これで、BS1世界ドキュ選「みんなのための資本論」はお終いです。それにしても、“資本論”と云うタイトル程の内容はありませんでしたよ!ロバート教授殿。
それでは、また。