学問空間

「『増鏡』を読む会」、第9回は2月22日(土)、テーマは「上西門院とその周辺」です。

「地域国家論」

2013-12-03 | 丸島和洋『戦国大名の「外交」』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2013年12月 3日(火)22時06分38秒

>筆綾丸さん
今日はあまり余裕がなくて、外出先の近くの図書館で黒田基樹氏の『百姓から見た戦国大名』をざっと読む程度のことしかできませんでした。
私は筆綾丸さんと異なり、「地域国家論」はひとつの考え方としては全然おかしくないと思っています。
ただ、論者によるその理由づけはすっきりしないですね。
「地域国家論」を理由づけるとしたら、国家のような基礎概念について特殊なことを言っても仕方ないと割り切って、単純に国際法の通説である三要素説に乗ってしまえばよいような感じもします。
一般に戦国大名と呼ばれているほどの存在であれば「明確な領域」と「永続的住民」の要件は全く問題なく、更に近時の戦国大名研究の進展は、戦国大名の統治機構が、かつて想像されていたよりも遥かに精緻なものであることを明らかにしている訳で、三番目の「政府の実効的支配」の要件も充分満たしていると言えるんじゃないですかね。
法制史の研究者あたりは国際法も当然熟知しているでしょうから、「地域国家論」に好意的な法制史の研究者がいればすっきりした説明をしてくれているように思います。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

虚しからずや「学問ごっこ」の君 2013/12/03(火) 15:10:53
小太郎さん
http://avalon.law.yale.edu/20th_century/intam03.asp
イェール大学ロースクールのサイトでモンテヴィデオ条約(1933年)を見ると、第1条に、
------------------
The state as a person of international law should possess the following qualifications: a ) a permanent population; b ) a defined territory; c ) government; and d) capacity to enter into relations with the other states.
------------------
と国際法上の国家の定義があり、合衆国以下多数の国々が締結した条約だけあって、当然のことながら、非常に明晰なものですね。person は、法律用語になると、こういう使い方があるのか、と恥ずかしながら初めて知りました。

以前、「地域国家論」は長生きできまい、と書きましたが、長生きもなにも、一部の連中が勝手に嬉しがっているだけの言葉遊びにすぎず、丸島氏が参加するサークルにおける「学問ごっこ」のようですね。「国家」もよくわからないで「外交」も何もあるわけないので、黴臭い古文書ばかり読んでないで、いまからでも遅くないから、他分野の勉強もしたほうがいいよ、と老婆心で忠告したいところですが、聞く耳など持たんでしょうね。
「その人がまだ書いていない構想」を想像して何か言うと、こういう仁に限って、そんなこと考えてない、とかなんとか言うのだろうな、きっと。

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国際法上の国家の要件

2013-12-03 | 丸島和洋『戦国大名の「外交」』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2013年12月 3日(火)09時39分48秒

私も国際法など遥か昔に大学で講義を受けただけで、手元に教科書も持っていないような状態ですから、以前の投稿を見ると結構いい加減なことを言っていますね。
参考までに、昨日、東北学院大の図書館でコピーしてきた『エイクハースト=マランチュク 現代国際法入門』(長谷川正国訳、成文堂、1999年)から国際法上の国家の要件に関する記述を転記しておきます。(p120以下)

-------------
第5章 国家と政府
第1節 国家

 国際法は主として国の権利義務に関係するのであるから、国際法の目的上国とは何かについてはっきりとした見解を持つ必要がある。この問題に対する解答は想像されるほど簡単なものではない。しかしながら、実際には、論争は、妥当な法的基準より事実問題に集中する傾向があることに注意しなければならない。
 1933年の「国家の権利義務に関するモンテヴィデオ条約」第1条は、以下のように規定する。

 国際法上の人格としての国は、次の資格を持たなければならない。
 (a) 永久的住民
 (b) 明確な領域
 (c) 政府及び
 (d) 他国と関係を取り結ぶ能力

 最初の3つの基準 (a)-(c)は確立された国際慣行に一致し、同時に19世紀末にドイツの法学者ゲオルグ・イェリネクが公式化したいわゆる3要素説(Drei-Elementen-Lehre)に一致する。追加的基準の提案について論じる前に、3つの基準をはじめに検討することにする。

1.明確な領域
 領国の支配は国の本質である。これは「領域支配(territorial sovereignty)という中心的概念の基礎である。領域主権は、当該領域内で法的および事実的措置をとりうる排他的権限を確立し、かつ、外国政府がその同一領域で当該国の同意なしに権限を行使することを禁じる。
(中略)

2.住民
 「永続的住民(permanent population)の基準は、領域の基準と結合され、国家存在の物理的基礎を構成する。この理由だけで、たとえば南極を国とみなすことはできない。他方、ソマリアの場合のように、多数の遊牧民が国境の内外を行き来しているという事実は、相当数の永続的住民が存在する限り、それだけでは国であることの障害にはならない。
(中略)

3.政府による実効的支配
 領域および住民に対する政府の実効的支配は、国際法の目的上、他の2要素を国に結合させる第3の核となる要素である。
(中略)
 領域に対する実効的支配の要件は、常に厳格に適用されるわけではない。国は、内戦または類似の動乱の結果として一時的に実効的支配を奪われることがあっても、存在を終止しない。長期にわたるレバノンの事実上の分割は、同国が国家としての法的外観を保つことを妨げなかった。
(中略)

4.他国と関係を取り結ぶ能力
 ラテン・アメリカ学説が提唱するモンテヴィデオ条約中の最後の基準(d)は、これを支持する文献も見受けられるが、しかし一般的には必須的なものと認められていない。たとえば、ギニア・ビサウは、1970年代にもっぱら最初の3要素に基づいて合衆国およびドイツにより承認された。
(後略)
-------------

他の教科書でも、大体こんな感じで議論されています。
4については細かい議論もありますが、各要件、いずれも実質が重視されていますね。

こうした国際法における国家の定義、要件に関する議論に比較すると、丸島氏が『戦国大名の「外交」』の冒頭で書いている「地域国家」の理由づけなど、非常に奇妙なものです。


これは丸島氏が言うように、非専門家に向けて分かりやすく書いている訳ではなくて、丸島氏自身が実質的要件と形式的要件、重要な要素と付随的な要素等の整理をせず、頭に浮かんだ事項をダラダラ並べているだけですね。

正直言って、この部分を読んで、私はバカバカしくて続きを読む気になれなくなったのですが、前回投稿時には、丸島氏は少し生意気な感じがするけれども、まだまだ将来がある若手学者だから、くらいの気持ちで少しセーブして書きました。
ま、丸島氏がどういう人間か充分わかったので、今さら遠慮する必要もないから、こんなものは学問とは呼べないとはっきり言いたいですね。
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