【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

二つの知事選は戦争と平和の岐路を決める

2014-08-15 19:28:57 | 社会・政治思想・歴史

櫻井智志



 今年11月16日に行われる沖縄県知事選は、現知事の仲井真弘多氏、現那覇市長の翁長雄志氏、ほかに元国民新党・前政党そうぞう代表で元郵政民営化担当相の下地幹郎前衆院議員の三氏の闘いとなる様相である。沖縄防衛局は8月14日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向け海底ボーリング調査に先立ち、立ち入り制限の境界を明確化するための浮標灯(ブイ)と浮具(フロート)の設置作業を開始した。早期に辺野古への飛行場移転の既成事実をつくり、県知事選に向けて、政府反対派の支持者にダメージを与え、少しでも切り崩そうと必死である。
 この沖縄県知事選は画期的である。保守勢力の沖縄自民県連が、政府支持派=現知事仲井真弘多氏と沖縄県民派=現那覇市長翁長雄志氏とに分かれた。県議会野党の社民党沖縄県連、共産党県中央委員会、沖縄社会大衆党、生活の党県連、県議会会派の「県民ネット」の5団体でつくる知事選候補者選考委員会が翁長氏に候補を一本化した。公明党はいま現在公式な支持者表明は行っていない。
翁長氏への支持は、三つの層から成る。日本共産党、社民党・沖縄社会大衆党・生活の党・県民ネットの護憲リベラル派、そして沖縄県民を大切にする県民保守勢力。三つの県民各層が共闘して、革新統一戦線をも超えた沖縄型の「国民統一戦線」の結成の萌芽状態である。
 現知事仲井真氏を応援する安倍自民党総裁=安倍政権の背後には、アメリカ軍産複合体の意思がある。日米安保条約のもとで代々首相を務めた政治家は、アメリカ政府の意向をくんできた。安倍晋三はやや異なる。安倍はオバマ大統領のアメリカ政府の失望をかっている。それでも安倍が一向に失政を変えないのは、オバマ政権をも倒せるだけのアメリカ軍産複合体の機嫌をうかがい評価されているからだ。仲井間氏と翁長氏の知事選は、日本国家全体の政治的方向性に強い影響を及ぼす。

 一方福島では、10月26日に投開票の福島県知事選挙が実施される。反原発団体「人間の復興と原発廃絶!ふくしまスクラム」が11日、前福島県二本松市長の三保恵一氏(65)に出馬要請すると発表した。県庁で記者会見した小原直樹共同代表は「福島県内の原発の即時全基廃炉だけでなく、全国にも原発ゼロを発信していける人だ」と述べた。三保氏は共同通信の取材に「出馬について申し上げる段階にない」と話した。三保氏は県議会議長などを経て二本松市長になり、東京電力福島第1原発事故後初めての13年11月の市長選で敗れた。福島知事選には、現佐藤知事、自民党から田村厚労相、自民党若手ホープの小泉信次郎氏などの出馬が話題にのぼっている。
 福島県知事選は、福島第一原発事故への対策、安倍政権の原発を外国にセールスする「死の商人」路線、地震多発地の日本列島での原発再稼働など、日本国のみならず、世界中へ重大な危険をもたらす。今も福島原発で1号機や3号機でメルトダウアンした燃料棒の高度に汚染された汚染水が太平洋に垂れ流しになっている。安倍自公政権には、このことへの根本的な自覚は皆無である。
 この困難な福島県の県知事を務める政治家は、事故への抜本的な対応、原発を海外諸国に売りさばくという正気の沙汰とは思えないような安倍政権のもとで、次のまともな政治家総理までにどうまっとうな県知事として、福島県民と原発事故対策にどう取り組むかが問われている。

 国際情勢に、日本がアメリカ軍産複合体に屈服して、憲法の根本理念を見捨てて、国外諸国に原発を売りさばく安倍政権の失政。それにどう立ち向かうかを必死で素手で抵抗し続ける沖縄県民と予想を超える人災のために生活全般の苦難に闘い続ける福島県民。全国の平和と民主主義を貴いものとする広範な声援が求められている。