【現代思想とジャーナリスト精神】

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小渕優子経産相と福島知事選

2014-10-18 21:02:55 | 社会・政治思想・歴史
小渕優子経産相と福島知事選

櫻井智志

 福島知事選は、自公社民と連合の相乗り、内堀候補とくまさか候補との対決と井戸川候補の猛追の図式に収斂されてきた。選挙告示後わずか2日後に、200人を抽出調査して「内堀候補大きくリード」と報じた新聞社があった。さすがにこのあざとい企みは功を奏しなかった。世論で与党候補が圧倒的にリードと報じて、選挙民の気持ちを「どうせ投票しても無駄だから棄権するか」とあきらめさせ、低投票率で組織的な団体がいる候補が、本当に圧勝するというパターンである。

 くまさか候補は、県内を福島市の決起大会で立ち見の支援者もいるほど立錐の余地のない会場で感動的な演説と支援の親戚である新党改革の荒井議員が親族代表として見事なあいさつをしてムード高めた。司会の岩手県の及川さんは連日のうぐいす嬢役も見事にこなしているが、ここでもラストスピーチが見事だった。この大会はインターネットで配信され、関心のある国民が見た。くまさか候補は、県内各地で決起大会をあちこちへと立ち上げて、その模様はくまテレビと称する動画中継をおこなっている。さらに、県内外で自発的なインターネット勝手連がたちあがり、くまさか陣営で用意した「全国勝手連」「くまさか勝手連」とともに福島県のなかだけでなく、全国スケールでインターネットを使った自発的ネット運動が起きて、先に述べた二つの勝手連をもりたてている。
 この記事が掲載されてから最後の1週間が、当選者を決めるだろう。くまさか候補は、地道で堅実な政治家である。医師であり、宮古市長を三期務めているが、それ以外に政府外郭団体の仕事をこなしている。私は見て驚いた。以下に公式サイトからのプロフィールの一部分を記す。

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現在、厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会委員、同介護報酬改定検証・研究委員会委員長代理、(独)福祉医療機構(WAM)審査・評価委員会委員長、総合研究開発機構(NIRA)新まちづくり研究会委員、医療法人「双熊会」理事長、(社)社会的包摂サポートセンター(24時間無料電話相談「よりそいホットライン」を運営:被災三県0120-270226、全国0120-279-338)代表理事、(社)日本病態栄養学会理事、(社)宮古医師会参与等を務める。

2013年東日本大震災における復興・医療貢献により日本糖尿病協会功労賞受賞。同年震災後の「よりそいホットライン」の実践的な活動(特に被災三県からの心の悩み相談)に対し(社)社会的包摂サポートセンター代表として宮沢賢治学会イーハトーブ賞奨励賞を受賞。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会専門医、医学博士。
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 堅実な保守派といったほうがくまさか候補のプロフィールを表すのに的確だろう。このような政府側に近いサイドの政治家が、日本共産党の自主的な支援を受けていることに現在の日本社会の特質が表れている。
 つまり、今までなら自民党推薦、支援の立場で立候補したかも知れない堅実な政治家の言動を、内閣閣僚の政治家たちが担うことができずに劣化していする。極右的団体である「日本会議」の会員が内閣閣僚のほとんどが占めていて、入っていない閣僚は公明党の大田国交相と自民党の二人ほどしかいない。日本国民はきわめて当たり前のように考えている。しかし、世界中では、極右的国粋主義団体に政府閣僚のほとんどが占めていることに嫌悪感と不審感とをもつ外国人が多い。現在日本社会の常識的にまかりとおっていることが、国際社会では非常識である。

 いま松島法相と小渕経産相について、きわめて不利な事態が国会内外で問題となっている。もともと松島法相については、いままでの過去の言動から疑問視されてきたから、「うちわ」や不適当発言など比較的予想どおりとなった。
 小渕恵三総理の次女で小渕総理の急病による死去に伴い父親の代わりに政界入りした小渕優子さんは、異なる。おだやかで堅実でり、その妥当な政治家としての言動から、自民党内でも期待されて経産相に任命された。とても政治家の仕業とは思えない政治資金などの初歩的なミスは、誰もが予期し得ないことだった。ただ、政界通のなかでは、小渕総理を支えた経理や実務をこなしてきたスタッフが、しだいに小渕優子さんから遠ざけられていったために、政治資金規制法などの問題に牴触するミスが生ずるのは、それなりに基盤があったという。自民党のなかで、残っていてほしい政治家が真っ先に閣僚はおろか議員辞職の危険な現実性がでてきた。今後の成り行きは安倍総理の判断に大きく委ねられるから、憶測で結論は書けない。
 政府は小渕優子さんが経産相として福島原発の問題で有力な対応を期待していた。ある意味では、原発再稼働路線の安倍内閣のなかで、福島原発の詳細な被災者への手厚い対応ができる能力と人柄が期待されていた。「日本会議」にも他の自民党閣僚・党要職の女性がみな加入しても入らないところに、小渕経産相のリベラルな政治的資質がうかがわれていた。

 それにしても、自然界の噴火や地震と同じく政界も予想もしないことが起こるものだ。福島県知事選は10月26日の夜には結果が出てくる。私はくまさか候補の闘いぶりに共感をもっている。当選だ、落選だ、ではなく、福島をかかえる厖大な日常的実務をひとつひとつこなしていこうと提案をしている。くまさか氏が落選しても、くまさか氏の選挙運動とは、反原発・卒原発の市民運動としての具体的提案が提起されている。自社公民の数合わせでは、「オール福島」でも、陣営内部が相反する政策なので、できるだけ波風立てずに論争は避けている。くまさか候補は日本共産党がいうように「オール福島」として、福島県民全体の原発・津波災害からの脱出をみなで力を合わせ、なによりもいまだ県民の困難が解決されていずそのままであることを強く指摘し、それを解決しようとしている。くまさか候補こそ、政治家として稀有の資質をもつ現役である。万一落選しても、くまさか氏の闘いからは次のステップへの土台が明確に提言されている。