【日刊ゲンダイ】2016年 壊れるのは政権か国民生活か
安倍政権が夢見る「衆参ダブル選で憲法改正」のおめでたさ
2016年1月3日
14年総選挙のようには甘くない(C)日刊ゲンダイ
安倍首相の周辺は衆参ダブル選挙を実施して両院で3分の2の勢力を獲得し、一気呵成に憲法改正に突き進む、というシナリオを描いている。彼らの頭の中には、1980年と86年の衆参同日選で自民党が圧勝した過去の記憶があるようだが、現実はそう甘くない。
政治評論家の野上忠興氏がこう話す。
「そもそもダブル選の話が浮上するのは、参院選が不安なことの裏返しでしょう。それに、ダブルなら圧勝というのはもはや“神話”ですよ。投票率は70%超、中選挙区制で自民党の派閥に活気があり、高度経済成長だったあの時代とは違う。頼みの業界団体も、農業関係や小売業者などは、TPPや軽減税率で自民党に対し冷ややかです。ダブルで関心が高まって投票率が上がる効果はあると思いますが、前回(14年)の衆院選が52%だったことを考えると、アップしても60%台でしょう」
ダブル選の空気が高まれば、嫌でも「改憲」がクローズアップされる。そうなれば、10万人が集結した、あの時の国会包囲網が再来するだろう。憲法9条を亡きものにし、名実ともに戦争国家に突き進む安倍に国民の怒りが爆発するのは間違いない。
「いつものように安倍さんは『経済』で覆い隠そうとするでしょうが、ここまで露骨に憲法改正の野望が見えてしまうと、さすがに国民は騙されません。表向きは環境権や緊急事態条項の創設と言っていますが、本丸は9条の改正。国家統制の国づくりです。世論はそれを見抜いていますから、ダブル選で投票率が上昇しても、簡単には自民に一票を入れない。むしろ、これまで棄権していた有権者の多くが『経済で憲法改正の狙いをごまかすのはズルい』と、反自民で投票すると思います」(野上忠興氏=前出)
衆参ダブルがやれるもんなら、やってみろ、だ。
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私見
「衆参ダブル選挙のリアリズム」
櫻井 智志
私はダブル選挙についての意見は、上記の論説とは異なる。それは以下に述べる二つの理由に基づいている。
安倍政権が国民に浸透させている、
①「強者には絶対にかなわないという挫折感と虚無感、倒錯した強者依存による安倍政権支持率の安定」、
②「強権政治を批判するマスコミや言論を徹底してたたきつぶす恐怖政治に脅えて擦り寄っていくマスコミの不様さ」。
これらが今後どのような政治情勢や国民の社会心理となって展開されるかを考えると、安易な楽観はできないと思う。
最低、次の四つを挙げておく。
①一月の大津市長選、岩国市長選、宜野湾市長選、二月の京都市長選。これらの地方自治体の首長選挙での投票率と当選者、選挙闘争の展開の様相。これらがどうかによって、次の沖縄県知事選や参院選への政治の構図が構築されていく。
②SEALDsと立憲主義の学者たちが立ち上げた「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」は、参院選に向けて統一候補擁立の受け皿をめざして活動を開始した。この市民運動が、野党や市民たちからどれだけ支持されて発展していくか。その展開は、日ごとに市民への締め付けや抑圧が深まっていく中で、重要な意義をもつ。
③日本共産党の思い切った選挙政策は、自らの候補者を降ろして、無所属統一候補擁立となってすでに熊本選挙区では無党派候補の統一候補擁立に固まった。柔軟で、実態を見据えた日本共産党のすぐれた政策と戦略に、むしろ野党や国民の中に偏見や警戒心がある。それでも民主党候補を擁立しても一人区での自公候補への対抗候補をしぼって闘おうという共産党の選挙への方針は、意義あるものであり、実現すれば参院選は安倍政権の思うとおりにはならない。
④しかし、謀略と仕掛けに卓越した影の参謀格集団をもつ自公(おおさか維新の会もありうる)与党の次の手は当然考えているだろう。影の参謀格の実態は現在私が推測する範囲で、内閣調査室初代室長だった佐々淳行氏。小泉内閣の参謀格だった飯島勲氏。小泉政権の時に情報戦略をにない、国民の心理的コントロールを推進し、安倍内閣でもたえず安倍総理のそばにつきそう黒子役の世耕弘成参議院議員。内閣補佐官でもある。彼ら三人は第2次安倍政権発足の時に官邸入りして、あまり表には出ない。この影の参謀格集団は、そうとうな政治的能力をもつ。野党にはこれに対抗しうるほどの知恵者はあまりいない。しいてあければ、沖縄県知事翁長雄志氏とそれを支える人々である。
これから一月、二月と連続する市長選の趨勢に注目したい。また、これらの市長選を全国的支援しないと、野党の芽は、潰される。
安倍政権が夢見る「衆参ダブル選で憲法改正」のおめでたさ
2016年1月3日
14年総選挙のようには甘くない(C)日刊ゲンダイ
安倍首相の周辺は衆参ダブル選挙を実施して両院で3分の2の勢力を獲得し、一気呵成に憲法改正に突き進む、というシナリオを描いている。彼らの頭の中には、1980年と86年の衆参同日選で自民党が圧勝した過去の記憶があるようだが、現実はそう甘くない。
政治評論家の野上忠興氏がこう話す。
「そもそもダブル選の話が浮上するのは、参院選が不安なことの裏返しでしょう。それに、ダブルなら圧勝というのはもはや“神話”ですよ。投票率は70%超、中選挙区制で自民党の派閥に活気があり、高度経済成長だったあの時代とは違う。頼みの業界団体も、農業関係や小売業者などは、TPPや軽減税率で自民党に対し冷ややかです。ダブルで関心が高まって投票率が上がる効果はあると思いますが、前回(14年)の衆院選が52%だったことを考えると、アップしても60%台でしょう」
ダブル選の空気が高まれば、嫌でも「改憲」がクローズアップされる。そうなれば、10万人が集結した、あの時の国会包囲網が再来するだろう。憲法9条を亡きものにし、名実ともに戦争国家に突き進む安倍に国民の怒りが爆発するのは間違いない。
「いつものように安倍さんは『経済』で覆い隠そうとするでしょうが、ここまで露骨に憲法改正の野望が見えてしまうと、さすがに国民は騙されません。表向きは環境権や緊急事態条項の創設と言っていますが、本丸は9条の改正。国家統制の国づくりです。世論はそれを見抜いていますから、ダブル選で投票率が上昇しても、簡単には自民に一票を入れない。むしろ、これまで棄権していた有権者の多くが『経済で憲法改正の狙いをごまかすのはズルい』と、反自民で投票すると思います」(野上忠興氏=前出)
衆参ダブルがやれるもんなら、やってみろ、だ。
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私見
「衆参ダブル選挙のリアリズム」
櫻井 智志
私はダブル選挙についての意見は、上記の論説とは異なる。それは以下に述べる二つの理由に基づいている。
安倍政権が国民に浸透させている、
①「強者には絶対にかなわないという挫折感と虚無感、倒錯した強者依存による安倍政権支持率の安定」、
②「強権政治を批判するマスコミや言論を徹底してたたきつぶす恐怖政治に脅えて擦り寄っていくマスコミの不様さ」。
これらが今後どのような政治情勢や国民の社会心理となって展開されるかを考えると、安易な楽観はできないと思う。
最低、次の四つを挙げておく。
①一月の大津市長選、岩国市長選、宜野湾市長選、二月の京都市長選。これらの地方自治体の首長選挙での投票率と当選者、選挙闘争の展開の様相。これらがどうかによって、次の沖縄県知事選や参院選への政治の構図が構築されていく。
②SEALDsと立憲主義の学者たちが立ち上げた「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」は、参院選に向けて統一候補擁立の受け皿をめざして活動を開始した。この市民運動が、野党や市民たちからどれだけ支持されて発展していくか。その展開は、日ごとに市民への締め付けや抑圧が深まっていく中で、重要な意義をもつ。
③日本共産党の思い切った選挙政策は、自らの候補者を降ろして、無所属統一候補擁立となってすでに熊本選挙区では無党派候補の統一候補擁立に固まった。柔軟で、実態を見据えた日本共産党のすぐれた政策と戦略に、むしろ野党や国民の中に偏見や警戒心がある。それでも民主党候補を擁立しても一人区での自公候補への対抗候補をしぼって闘おうという共産党の選挙への方針は、意義あるものであり、実現すれば参院選は安倍政権の思うとおりにはならない。
④しかし、謀略と仕掛けに卓越した影の参謀格集団をもつ自公(おおさか維新の会もありうる)与党の次の手は当然考えているだろう。影の参謀格の実態は現在私が推測する範囲で、内閣調査室初代室長だった佐々淳行氏。小泉内閣の参謀格だった飯島勲氏。小泉政権の時に情報戦略をにない、国民の心理的コントロールを推進し、安倍内閣でもたえず安倍総理のそばにつきそう黒子役の世耕弘成参議院議員。内閣補佐官でもある。彼ら三人は第2次安倍政権発足の時に官邸入りして、あまり表には出ない。この影の参謀格集団は、そうとうな政治的能力をもつ。野党にはこれに対抗しうるほどの知恵者はあまりいない。しいてあければ、沖縄県知事翁長雄志氏とそれを支える人々である。
これから一月、二月と連続する市長選の趨勢に注目したい。また、これらの市長選を全国的支援しないと、野党の芽は、潰される。