衆院補選北海道5区の得票分析
櫻井智志
1 分析
A 北海道5区の8地域において、池田まき候補が、和田義明候補を上回った地域とどれだけ上回ったかの票数は以下の通りである。なお、これらの数値のデータはmixiやフェィスブックを通じて長年の若き畏友Kenji Yasumotoさんのご教示に基づく。氏に厚くお礼を申しあげたい。
①札幌市厚別区 +4,142票
②北広島市 +1,781票
③江別市 +1,026票
④石狩市 + 30票
この4地域では、全体で6,979票、池田候補が勝っているのである。
B 逆に、池田まき候補が和田義明候補よりも下回った地域とどれだけの票数の差かは、以下の通りである。
①千歳市 -11,512票
②恵庭市 - 5,845票
③当別町 - 1,120票
④新篠津村 - 646票
この4地域全体では、和田候補に19,123票リードされている。
C Aで見たように、札幌市などでは、池田まきさんは支持者が上回っている。ではなぜ結果のようになったか。注意深く見ると、千歳市一市で11,512票離されているが、これは和田候補と池田候補の総合得票差の12,144票の94.8%を占めている。これに恵庭市の5,845票を併せると、17,357票となり、和田候補のリード票数のじつに90.8%を占めている。
このことから、札幌市などで勝っていた池田候補は、千歳市と恵庭市の有権者の得票の動向によって、和田候補当選を決定づけられた。
選挙後の4月25日の夜七時のNHKニュースは、自民党の谷垣幹事長の談話を報じている。谷垣氏は自民党のなかでも総裁も歴任しているが、冷静に、自民党は奢ることなく、姿勢を正して政治にとり組まないと参院選での勝利はない、と発言した。
また、民進党代表代行の村田蓮舫議員は、北海道5区の野党共闘は一定の成果があったが、無党派候補では選挙運動においていろいろな限界もあったと発言した。
2 評価と展望
今回の選挙は、民進党の選挙でも日本共産党の選挙でもない。日本共産党の支持者層の97.9%が池田候補に投票した、と東京新聞朝刊では出口調査の結果を報じている。
この選挙のキイ・パースンは、SEALDsの奥田愛希さんと彼を含む「市民連合」である。市民の動きが池田さんを立候補に決心させた。選挙は典型的な市民型の選挙となった。私は「池田まきネットワーク」を通じて、池田候補とその運動を追ってきた。市民運動が野党共闘と結集しての新しい形の選挙だった。
今回の選挙から、各野党は参院選での野党共闘を軸にするとともに、全国で市民運動と連帯して戦うことが求められている。特に選挙区一人区では、野党共闘の候補がいかにその地域の市民運動と提携するかが問われている。
以下に4月25日の元外務省の孫崎享さんの有料メルマガを転載させていただく。
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「参考資料」
【孫崎享のつぶやき】
京都3区民進党、北海道5区自民党勝利、共闘の成果と限界―野党協力は安倍独走を止める意味で貴重、それ以上の大きなうねりにはなりにくいー。
2016-04-25 08:014
1.24日補選は次の結果を示した。
北海道5区 和田義明 135,842
池田真紀 123,517
京都3区 泉健太 65,051
森夏枝 20,710
2・結果は事前の大方の予測と変わらない。
3:野党共闘が一定の成果を得たことは間違いない。
読売社説は「池田氏は無党派層を重視する戦術だが、支持は広がりを欠いた。ただ、民進、共産両党の組織的な「共闘」は、一定の有効性が示された。独自候補を取り下げた共産党の支持者のほとんどが、池田氏に投票したとみられる。 野党は今後、さらに選挙協力の拡大を目指すだろう。既に参院選1人区で15人以上の統一候補を実現させている。「自公対民共」の戦いが、参院選全体の行方を左右するのは間違いない。」と今後への影響を記述している。
記事では「2014年12月の第3次安倍内閣発足後、初めての国政選挙で、夏の政治決戦である参院選の試金石となった。与野党の一騎打ちとなった北海道5区を制した与党は、参院選に弾みがつきそうだ。」と勝利ムードを強く出しているのと異なる。
4:今後参議院選挙を含め共闘によって、自民公明は一本化、野党はバラバラが野党統一候補の推進によって、安倍政権独奏に一定の抑制が働こう。
TPPを今国会で無理押ししなかったのも選挙への影響を配慮してのことである。
25日朝日新聞は一面トップで大々的に「同日選首相見送り」も同日選で自公が圧勝する状況にない都(管理人注:党?)の判断があったものと推測される。
5:「安倍阻止」は一定の力にはなっている。
しかし、野党共闘の軸になる民進党が重要課題で「自民党亜流」の域を超えられず、国民の多数を代表する政策を打ち出せない限り大きい波を作れない。
打ち出すべき政策は次である。
・集団的自衛権で自衛隊を米軍の「傭兵的存在」にはしない。
・国家主権を侵すTPPには入らない、
・消費税を上げ、法人税を下げる税制には反対する、
・原発の再稼働は認めない。
残念ながら、民進党内の勢力にこれら政策の実現を阻止する強固な力が存在している。その中、野党協力は安倍独走を止める意味で貴重ではあるが、それ以上の大きなうねりにはなりにくい。
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以上
櫻井智志
1 分析
A 北海道5区の8地域において、池田まき候補が、和田義明候補を上回った地域とどれだけ上回ったかの票数は以下の通りである。なお、これらの数値のデータはmixiやフェィスブックを通じて長年の若き畏友Kenji Yasumotoさんのご教示に基づく。氏に厚くお礼を申しあげたい。
①札幌市厚別区 +4,142票
②北広島市 +1,781票
③江別市 +1,026票
④石狩市 + 30票
この4地域では、全体で6,979票、池田候補が勝っているのである。
B 逆に、池田まき候補が和田義明候補よりも下回った地域とどれだけの票数の差かは、以下の通りである。
①千歳市 -11,512票
②恵庭市 - 5,845票
③当別町 - 1,120票
④新篠津村 - 646票
この4地域全体では、和田候補に19,123票リードされている。
C Aで見たように、札幌市などでは、池田まきさんは支持者が上回っている。ではなぜ結果のようになったか。注意深く見ると、千歳市一市で11,512票離されているが、これは和田候補と池田候補の総合得票差の12,144票の94.8%を占めている。これに恵庭市の5,845票を併せると、17,357票となり、和田候補のリード票数のじつに90.8%を占めている。
このことから、札幌市などで勝っていた池田候補は、千歳市と恵庭市の有権者の得票の動向によって、和田候補当選を決定づけられた。
選挙後の4月25日の夜七時のNHKニュースは、自民党の谷垣幹事長の談話を報じている。谷垣氏は自民党のなかでも総裁も歴任しているが、冷静に、自民党は奢ることなく、姿勢を正して政治にとり組まないと参院選での勝利はない、と発言した。
また、民進党代表代行の村田蓮舫議員は、北海道5区の野党共闘は一定の成果があったが、無党派候補では選挙運動においていろいろな限界もあったと発言した。
2 評価と展望
今回の選挙は、民進党の選挙でも日本共産党の選挙でもない。日本共産党の支持者層の97.9%が池田候補に投票した、と東京新聞朝刊では出口調査の結果を報じている。
この選挙のキイ・パースンは、SEALDsの奥田愛希さんと彼を含む「市民連合」である。市民の動きが池田さんを立候補に決心させた。選挙は典型的な市民型の選挙となった。私は「池田まきネットワーク」を通じて、池田候補とその運動を追ってきた。市民運動が野党共闘と結集しての新しい形の選挙だった。
今回の選挙から、各野党は参院選での野党共闘を軸にするとともに、全国で市民運動と連帯して戦うことが求められている。特に選挙区一人区では、野党共闘の候補がいかにその地域の市民運動と提携するかが問われている。
以下に4月25日の元外務省の孫崎享さんの有料メルマガを転載させていただく。
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「参考資料」
【孫崎享のつぶやき】
京都3区民進党、北海道5区自民党勝利、共闘の成果と限界―野党協力は安倍独走を止める意味で貴重、それ以上の大きなうねりにはなりにくいー。
2016-04-25 08:014
1.24日補選は次の結果を示した。
北海道5区 和田義明 135,842
池田真紀 123,517
京都3区 泉健太 65,051
森夏枝 20,710
2・結果は事前の大方の予測と変わらない。
3:野党共闘が一定の成果を得たことは間違いない。
読売社説は「池田氏は無党派層を重視する戦術だが、支持は広がりを欠いた。ただ、民進、共産両党の組織的な「共闘」は、一定の有効性が示された。独自候補を取り下げた共産党の支持者のほとんどが、池田氏に投票したとみられる。 野党は今後、さらに選挙協力の拡大を目指すだろう。既に参院選1人区で15人以上の統一候補を実現させている。「自公対民共」の戦いが、参院選全体の行方を左右するのは間違いない。」と今後への影響を記述している。
記事では「2014年12月の第3次安倍内閣発足後、初めての国政選挙で、夏の政治決戦である参院選の試金石となった。与野党の一騎打ちとなった北海道5区を制した与党は、参院選に弾みがつきそうだ。」と勝利ムードを強く出しているのと異なる。
4:今後参議院選挙を含め共闘によって、自民公明は一本化、野党はバラバラが野党統一候補の推進によって、安倍政権独奏に一定の抑制が働こう。
TPPを今国会で無理押ししなかったのも選挙への影響を配慮してのことである。
25日朝日新聞は一面トップで大々的に「同日選首相見送り」も同日選で自公が圧勝する状況にない都(管理人注:党?)の判断があったものと推測される。
5:「安倍阻止」は一定の力にはなっている。
しかし、野党共闘の軸になる民進党が重要課題で「自民党亜流」の域を超えられず、国民の多数を代表する政策を打ち出せない限り大きい波を作れない。
打ち出すべき政策は次である。
・集団的自衛権で自衛隊を米軍の「傭兵的存在」にはしない。
・国家主権を侵すTPPには入らない、
・消費税を上げ、法人税を下げる税制には反対する、
・原発の再稼働は認めない。
残念ながら、民進党内の勢力にこれら政策の実現を阻止する強固な力が存在している。その中、野党協力は安倍独走を止める意味で貴重ではあるが、それ以上の大きなうねりにはなりにくい。
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以上