~転載歓迎~
<リテラ>転載
【芸能人が「憲法9条を守れ」と主張し始めた! 鶴瓶、たけし、坂上忍、中居正広、渡辺謙、山崎まさよしも…】
憲法編集部 2016.05.03
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左・笑福亭鶴瓶公式サイト「つるべ.net」/中・山崎まさよし OFFICIAL WEBSITE/右・アヴァンセプロダクション・スクールHPより
安倍政権による憲法改正の動きがいよいよ具体的になってきた。しかも、メディアへの圧力やダミー団体を使った世論の扇動によって、権力に弱いマスコミは次々に陥落している。ジャーナリストや評論家を見渡しても、憲法改正に賛成しているか沈黙しているかどちらかの人間しかいない、という状況になっている。
しかし、そんななか、意外な人たちが、この安倍政権の動きに抗し、護憲のメッセージを発し始めているのをご存知だろうか。それは、これまで政治的発言をタブーとしてきた芸能人や、政治と距離を取ってきたミュージシャンたちだ。
たとえば、その典型が笑福亭鶴瓶だろう。昨年放送された『戦後70年 樹木希林ドキュメンタリーの旅』(東海テレビ)のなかで、鶴瓶は安保法制の問題とともにこう語った。
「これ、へんな方向に行ってますよ。そら変えなあかん法律はいっぱいあってもね、戦争放棄っていうのはもうこれ謳い文句で、絶対そうなんですが9条はいろたら(いじったら)あかんと思うんですよね」
「こんだけね、憲法をね、変えようとしていることに、違憲や言うてる人がこんなに多いのにもかかわらず、お前なにをしとんねん!っていう」
その面持ちは、いつもの目を細めて笑う表情からは想像もつかない、深刻なものだった。言うまでもなく、鶴瓶はこれまで政治とは一線を画して活動してきた。だが、一昨年頃から、メディアで強い反戦の気持ち、そして9条への思いを語るようになったのだ。
「僕らの世代が戦争に行くことはないでしょうけど、僕の孫の世代が戦争へ行かされるなんて道理に合わない。日本は絶対憲法9条をなくしちゃいかんと思います」(しんぶん赤旗14年11月30日付)
鶴瓶だけではない。お笑いビッグ3といわれていたお笑い界の大物たちも、彼らなりの言葉で戦争への危機感を表しはじめた。
とくに驚いたのは、明石家さんまだ。さんまは、14年2月15日放送の『さんまのまんま』(関西テレビ)で、こんなエピソードを語った。
「ぼくは昔、日本からアメリカに、戦争のためにアメリカに寄付するということがあったとき、さすがに怒って国税局に行ったんですよ」
「俺は戦争のためとか、人殺しをアシストするために働いてるんじゃないって。そのために税金を納めてるんじゃないって言いにいったんです」
ノンポリとして知られるタモリも、昨年の正月に放送された『戦後70年 ニッポンの肖像 プロローグ 私たちはどう生きてきたか』(NHK)で、「『終戦』じゃなくて『敗戦』ですよね」「『進駐軍』ではなく『占領軍』でしょ」と語ったことが大きな話題を呼んだ。番組のなかでタモリは、1964年の東京オリンピックの話題では閉会式がもっとも印象的だったとして、こうコメントしている。
「閉会式は各国が乱れてバラバラに入ってくるんです。あれは東京五輪が最初なんです。(中略)それを見てた爺さんが一言いったのをいまだに覚えていますけどね。『戦争なんかしちゃだめだね』って」
ご存知のとおり、タモリもさんまも、これまで政治的発言とは完全に距離をおいてきた人たちだ。そんな二人が、抑制的ではあったとしても反戦・護憲を意識させる言葉を漏らしたのは、安倍政権による改憲機運の高まりを感じているからに他ならないだろう。
また、政治的発言はするが、保守的な印象が強かったビートたけしもまた、安倍政権による改憲にストップをかけるような発言をした。14年6月30日放送の『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日)で、たけしはこのように語ったのだ。
「ふと国の平和を考えたときに、アメリカと日米安保全部含めてやるよりは、貧しくとも憲法を守る平和な日本を、みんなで頑張ってやるべきだと、そう思う」
今、旬のバラエティタレントからも、護憲メッセージが飛び出している。そのひとりが、タレントの坂上忍だ。昨年9月18日の『バイキング』(フジテレビ)で、こうはっきりと言い切った。
「いまの世界情勢など見てると、(安保関連法は)必要なのかなって気にもなりがちなんだけど、日本も一時、戦争があったときに『お前ら金だけ出して何もやんないのか』って叩かれたときもあったし、でも、逆に言ったらいまだからこそ、武器持たないで憲法9条持ってりゃいいんじゃないの? だって、被爆国なんだから。被爆国にしかできないことあるわけで、いまだからこそ、武器持たない日本でいてほしいなっていうのが強い想いですかね。どちらかと言うと」
飄々と語っているように見えるが、カットのきかない生放送、しかも自分の看板番組での発言は、坂上の確かな覚悟を表していた。
さらに、トップアイドルからも、護憲、戦後の平和主義の価値を評価する声が飛び出した。
メインコメンテーターの松本人志をはじめ、“右倣え”のムードが充満している『ワイドナショー』(フジテレビ)。その15年8月9日放送で、安保法制の反対デモを「平和ボケ」とくさす松本に対し、ゲストの中居正広がこう切り込んだのだ。
「でもね、やっぱり松本さん、この70年間やっぱり、日本人って戦地で死んでいないんですよ。これやっぱり、すごいことだと思うんですよ」
中居の言葉の行間からは、明らかに憲法9条に対する高い評価がにじみ出ていた。アイドルというのは芸能界のなかでもいちばん制約が強い立場。事務所の方針でほとんどのアイドルが政治的発言を封印している。そんななか、ギリギリの発言をした中居の姿勢はあっぱれと言うしかない。
お笑い芸人やバラエティタレントだけでなく、大物俳優からも、こうした声は高まり続けている。たとえば女優の大竹しのぶ。安倍政権を前にして、反戦と9条への思いを何度も吐露している。
「あの戦争も、人々が『変だよね』と感じているうちに始まってしまったのではないのか」(共同通信インタビュー、13年12月29日付)
「唯一の被爆国として、ノーベル平和賞の候補にもなった『憲法9条』をこんなに簡単にないがしろにしていいものなのかということも、誰もが思うことだと思う」(朝日新聞15年9月18日付夕刊)
また、俳優の渡辺謙は昨年、ツイッターでこのように呟いて、大きな話題になった。
「一人も兵士が戦死しないで70年を過ごしてきたこの国。どんな経緯で出来た憲法であれ僕は世界に誇れると思う、戦争はしないんだと!複雑で利害が異なる隣国とも、ポケットに忍ばせた拳や石ころよりも最大の抑止力は友人であることだと思う。その為に僕は世界に友人を増やしたい。絵空事と笑われても」
役者ではこれまでも西田敏行や市原悦子、吉永小百合らが、護憲の立ち位置をはっきりと明言し、9条を変えることは許されないと、強いメッセージを発信してきた。あるいは近年逝去した菅原文太、愛川欽也もそうだ。
「やはり憲法9条は死守していかなければならない。広島や長崎に原子爆弾が落ちたのも、普天間の問題がくすぶっているのも、そもそも戦争がなければなかったことですからね」(菅原文太『日本人の底力』宝島社)
「憲法を素直に読んでごらんなさいよ。これ、誰がこさえたか、最初が英文だったとか、そんなことはどうでもいいんだ。立派なもんだよ。『戦争放棄』、つまり武力でもってよその国と争うことはしないなんて言っちゃう憲法なんてね、ちょっと嬉しくない?」(愛川欽也、カタログハウス「通販生活」Webサイト掲載/2012年8月21日)
こうした演劇人・映画人たちが9条について発言すると、ネット右翼たちはすぐに「アカ」とか「共産党の回し者」とかいうレッテル貼りをする。しかし、言うまでもなく、彼・彼女らの護憲への思いはそんな低レベルではない。たとえば女優の渡辺えりは、第一次安倍政権が発足する直前のインタビューで、このように9条と護憲のひとつの本質をついている。
「憲法9条について、『単なる理想にすぎない』って改憲論者は言うけれど、そんなことはない。9条の精神が、世界規模に広がっていけばいいと思う」
「私の演劇は反戦色は濃くありません。演劇は娯楽だと思ってますから、辛気くさいのは嫌いなんです。でも、ピカソだって『ゲルニカ』を残しています。芸術家はみんな反対ですよ。縛られるの、やだもんね。人間が好きだからやってるわけで、人間が殺されるのを指をくわえて見ている芸術家はいないと思います」(朝日新聞06年6月24日付)
政治権力や戦争という拘束に縛られていては、表現者として生きることはできない。彼・彼女らが目指すのは政治的な「理想」を超えた、人間個人としての生き方、そのものだ。
そして、こうした9条に関する発言としてもっとも強烈に改憲勢力を批判したのは、あの美輪明宏だろう。昨年の憲法記念日に『美輪明宏 薔薇色の日曜日』(TBSラジオ)で、美輪はこう語った。
「そんなに安倍さんって、自国の国民を、若い男の人やね、お父さん、お兄さん、そういう人たちを前線に送って殺したいのですかねえ。アメリカの軍隊のためにね、どうぞ日本の若い人たち死んでくれ、と言っているようにしか思えませんね。何を考えているのかしら、と思いますよ。非国民もいいとこですよ」
「憲法だってね、世界一の素晴らしい憲法ですからね。じゃあね、それ(集団的自衛権行使容認)に賛成した国会議員の、自民党の方も公明党の方も、他の与党の方もね、まずご自分から戦いに行っていただきたい。そして、息子さんもご兄弟もお孫さんも、みんな前線に一緒に手に手をとって鉄兜かぶって、戦いに行ってください。自分たちが行くつもりじゃなくて、そんなこと言っちゃいけないですよ」
ミュージシャンたちも黙ってはいない。さまざまなインタビューでの発言はもちろん、護憲の思いを込めた音楽をつくっている者も少なくない。
たとえば、山崎まさよしは、2013年に発表したアルバム『FLOWERS』に、「#9 story」という楽曲を収録している。これはすべて英語の詞の楽曲だが、その背景として、「週刊SPA!」(扶桑社)13年10月1日号のインタビューで、安倍政権や改憲派の詭弁を強く批判している。
「“自国の軍隊を持たないで子供を守れますか?”みたいなことを言う人がいるじゃないですか。そんな事態になったら犠牲になるのは子供なのに、子供を引き合いにだすのがおかしいんですよ。未来のある子供を、先に死んでいくおっさんやおばさんが切り捨ててどないするねんと」
実は、山崎の祖父は先の戦争で亡くなったという。
「祖父は零戦に乗っていて戦死しました。僕らの世代は戦争を経験していないけど、不安感とか危機感っていうのは、DNAとして上の世代から受け継いでいると思うんです。日本が兵役のある国にはなってほしくないし、子どもをそんなことには巻き込みたくない。若い世代って戦争から感覚的に遠くなってしまっているけど、日本が戦後復興し、ここまで発展したのって憲法のおかげな気がするんです」(朝日新聞15年8月15日付広島版朝刊)
役者も、タレントも、ミュージシャンも、それぞれが自分たちの言葉で、憲法を語っている。彼・彼女らの言葉に共通するのは、自分たちが享受してきた日本国憲法が70年もの間、直接戦争に向かわせず、一人も殺さずにやっていけたこと、そのことに対する誇りだ。そして、この戦後の平和主義を捨ててまで、今、政府主導の改憲を行う意味がどこにあるのか? そのことを問いかけている。
それは、「アメリカから押し付けられた憲法」だとか、「新しい時代に新しい憲法を」とかいう、安倍政権が持ち出す詐術をはるかに超えた説得力を持っている。
これから先、政権からの圧力は強くなり、マスコミはますますだんまりを決め込んでいくだろう。そして、機を見るに敏なジャーナリストや評論家たちは、あたかもそれが「大人の現実的選択」であるかのような顔をして、憲法改正を肯定し始めるはずだ。
そんななか、彼らの言葉は、人々の心の裡にある茫漠とした不安を、たしかなかたちにしてくれる。政治権力に対して、おかしいものはおかしいと言う勇気をあたえてくれる。そして何より、沈黙こそ最大の愚行だということを、すべての人に教えてくれる。だからこそ、本サイトは、彼らを心から応援したいと思うのだ。
(編集部)
<リテラ>転載
【芸能人が「憲法9条を守れ」と主張し始めた! 鶴瓶、たけし、坂上忍、中居正広、渡辺謙、山崎まさよしも…】
憲法編集部 2016.05.03
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左・笑福亭鶴瓶公式サイト「つるべ.net」/中・山崎まさよし OFFICIAL WEBSITE/右・アヴァンセプロダクション・スクールHPより
安倍政権による憲法改正の動きがいよいよ具体的になってきた。しかも、メディアへの圧力やダミー団体を使った世論の扇動によって、権力に弱いマスコミは次々に陥落している。ジャーナリストや評論家を見渡しても、憲法改正に賛成しているか沈黙しているかどちらかの人間しかいない、という状況になっている。
しかし、そんななか、意外な人たちが、この安倍政権の動きに抗し、護憲のメッセージを発し始めているのをご存知だろうか。それは、これまで政治的発言をタブーとしてきた芸能人や、政治と距離を取ってきたミュージシャンたちだ。
たとえば、その典型が笑福亭鶴瓶だろう。昨年放送された『戦後70年 樹木希林ドキュメンタリーの旅』(東海テレビ)のなかで、鶴瓶は安保法制の問題とともにこう語った。
「これ、へんな方向に行ってますよ。そら変えなあかん法律はいっぱいあってもね、戦争放棄っていうのはもうこれ謳い文句で、絶対そうなんですが9条はいろたら(いじったら)あかんと思うんですよね」
「こんだけね、憲法をね、変えようとしていることに、違憲や言うてる人がこんなに多いのにもかかわらず、お前なにをしとんねん!っていう」
その面持ちは、いつもの目を細めて笑う表情からは想像もつかない、深刻なものだった。言うまでもなく、鶴瓶はこれまで政治とは一線を画して活動してきた。だが、一昨年頃から、メディアで強い反戦の気持ち、そして9条への思いを語るようになったのだ。
「僕らの世代が戦争に行くことはないでしょうけど、僕の孫の世代が戦争へ行かされるなんて道理に合わない。日本は絶対憲法9条をなくしちゃいかんと思います」(しんぶん赤旗14年11月30日付)
鶴瓶だけではない。お笑いビッグ3といわれていたお笑い界の大物たちも、彼らなりの言葉で戦争への危機感を表しはじめた。
とくに驚いたのは、明石家さんまだ。さんまは、14年2月15日放送の『さんまのまんま』(関西テレビ)で、こんなエピソードを語った。
「ぼくは昔、日本からアメリカに、戦争のためにアメリカに寄付するということがあったとき、さすがに怒って国税局に行ったんですよ」
「俺は戦争のためとか、人殺しをアシストするために働いてるんじゃないって。そのために税金を納めてるんじゃないって言いにいったんです」
ノンポリとして知られるタモリも、昨年の正月に放送された『戦後70年 ニッポンの肖像 プロローグ 私たちはどう生きてきたか』(NHK)で、「『終戦』じゃなくて『敗戦』ですよね」「『進駐軍』ではなく『占領軍』でしょ」と語ったことが大きな話題を呼んだ。番組のなかでタモリは、1964年の東京オリンピックの話題では閉会式がもっとも印象的だったとして、こうコメントしている。
「閉会式は各国が乱れてバラバラに入ってくるんです。あれは東京五輪が最初なんです。(中略)それを見てた爺さんが一言いったのをいまだに覚えていますけどね。『戦争なんかしちゃだめだね』って」
ご存知のとおり、タモリもさんまも、これまで政治的発言とは完全に距離をおいてきた人たちだ。そんな二人が、抑制的ではあったとしても反戦・護憲を意識させる言葉を漏らしたのは、安倍政権による改憲機運の高まりを感じているからに他ならないだろう。
また、政治的発言はするが、保守的な印象が強かったビートたけしもまた、安倍政権による改憲にストップをかけるような発言をした。14年6月30日放送の『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日)で、たけしはこのように語ったのだ。
「ふと国の平和を考えたときに、アメリカと日米安保全部含めてやるよりは、貧しくとも憲法を守る平和な日本を、みんなで頑張ってやるべきだと、そう思う」
今、旬のバラエティタレントからも、護憲メッセージが飛び出している。そのひとりが、タレントの坂上忍だ。昨年9月18日の『バイキング』(フジテレビ)で、こうはっきりと言い切った。
「いまの世界情勢など見てると、(安保関連法は)必要なのかなって気にもなりがちなんだけど、日本も一時、戦争があったときに『お前ら金だけ出して何もやんないのか』って叩かれたときもあったし、でも、逆に言ったらいまだからこそ、武器持たないで憲法9条持ってりゃいいんじゃないの? だって、被爆国なんだから。被爆国にしかできないことあるわけで、いまだからこそ、武器持たない日本でいてほしいなっていうのが強い想いですかね。どちらかと言うと」
飄々と語っているように見えるが、カットのきかない生放送、しかも自分の看板番組での発言は、坂上の確かな覚悟を表していた。
さらに、トップアイドルからも、護憲、戦後の平和主義の価値を評価する声が飛び出した。
メインコメンテーターの松本人志をはじめ、“右倣え”のムードが充満している『ワイドナショー』(フジテレビ)。その15年8月9日放送で、安保法制の反対デモを「平和ボケ」とくさす松本に対し、ゲストの中居正広がこう切り込んだのだ。
「でもね、やっぱり松本さん、この70年間やっぱり、日本人って戦地で死んでいないんですよ。これやっぱり、すごいことだと思うんですよ」
中居の言葉の行間からは、明らかに憲法9条に対する高い評価がにじみ出ていた。アイドルというのは芸能界のなかでもいちばん制約が強い立場。事務所の方針でほとんどのアイドルが政治的発言を封印している。そんななか、ギリギリの発言をした中居の姿勢はあっぱれと言うしかない。
お笑い芸人やバラエティタレントだけでなく、大物俳優からも、こうした声は高まり続けている。たとえば女優の大竹しのぶ。安倍政権を前にして、反戦と9条への思いを何度も吐露している。
「あの戦争も、人々が『変だよね』と感じているうちに始まってしまったのではないのか」(共同通信インタビュー、13年12月29日付)
「唯一の被爆国として、ノーベル平和賞の候補にもなった『憲法9条』をこんなに簡単にないがしろにしていいものなのかということも、誰もが思うことだと思う」(朝日新聞15年9月18日付夕刊)
また、俳優の渡辺謙は昨年、ツイッターでこのように呟いて、大きな話題になった。
「一人も兵士が戦死しないで70年を過ごしてきたこの国。どんな経緯で出来た憲法であれ僕は世界に誇れると思う、戦争はしないんだと!複雑で利害が異なる隣国とも、ポケットに忍ばせた拳や石ころよりも最大の抑止力は友人であることだと思う。その為に僕は世界に友人を増やしたい。絵空事と笑われても」
役者ではこれまでも西田敏行や市原悦子、吉永小百合らが、護憲の立ち位置をはっきりと明言し、9条を変えることは許されないと、強いメッセージを発信してきた。あるいは近年逝去した菅原文太、愛川欽也もそうだ。
「やはり憲法9条は死守していかなければならない。広島や長崎に原子爆弾が落ちたのも、普天間の問題がくすぶっているのも、そもそも戦争がなければなかったことですからね」(菅原文太『日本人の底力』宝島社)
「憲法を素直に読んでごらんなさいよ。これ、誰がこさえたか、最初が英文だったとか、そんなことはどうでもいいんだ。立派なもんだよ。『戦争放棄』、つまり武力でもってよその国と争うことはしないなんて言っちゃう憲法なんてね、ちょっと嬉しくない?」(愛川欽也、カタログハウス「通販生活」Webサイト掲載/2012年8月21日)
こうした演劇人・映画人たちが9条について発言すると、ネット右翼たちはすぐに「アカ」とか「共産党の回し者」とかいうレッテル貼りをする。しかし、言うまでもなく、彼・彼女らの護憲への思いはそんな低レベルではない。たとえば女優の渡辺えりは、第一次安倍政権が発足する直前のインタビューで、このように9条と護憲のひとつの本質をついている。
「憲法9条について、『単なる理想にすぎない』って改憲論者は言うけれど、そんなことはない。9条の精神が、世界規模に広がっていけばいいと思う」
「私の演劇は反戦色は濃くありません。演劇は娯楽だと思ってますから、辛気くさいのは嫌いなんです。でも、ピカソだって『ゲルニカ』を残しています。芸術家はみんな反対ですよ。縛られるの、やだもんね。人間が好きだからやってるわけで、人間が殺されるのを指をくわえて見ている芸術家はいないと思います」(朝日新聞06年6月24日付)
政治権力や戦争という拘束に縛られていては、表現者として生きることはできない。彼・彼女らが目指すのは政治的な「理想」を超えた、人間個人としての生き方、そのものだ。
そして、こうした9条に関する発言としてもっとも強烈に改憲勢力を批判したのは、あの美輪明宏だろう。昨年の憲法記念日に『美輪明宏 薔薇色の日曜日』(TBSラジオ)で、美輪はこう語った。
「そんなに安倍さんって、自国の国民を、若い男の人やね、お父さん、お兄さん、そういう人たちを前線に送って殺したいのですかねえ。アメリカの軍隊のためにね、どうぞ日本の若い人たち死んでくれ、と言っているようにしか思えませんね。何を考えているのかしら、と思いますよ。非国民もいいとこですよ」
「憲法だってね、世界一の素晴らしい憲法ですからね。じゃあね、それ(集団的自衛権行使容認)に賛成した国会議員の、自民党の方も公明党の方も、他の与党の方もね、まずご自分から戦いに行っていただきたい。そして、息子さんもご兄弟もお孫さんも、みんな前線に一緒に手に手をとって鉄兜かぶって、戦いに行ってください。自分たちが行くつもりじゃなくて、そんなこと言っちゃいけないですよ」
ミュージシャンたちも黙ってはいない。さまざまなインタビューでの発言はもちろん、護憲の思いを込めた音楽をつくっている者も少なくない。
たとえば、山崎まさよしは、2013年に発表したアルバム『FLOWERS』に、「#9 story」という楽曲を収録している。これはすべて英語の詞の楽曲だが、その背景として、「週刊SPA!」(扶桑社)13年10月1日号のインタビューで、安倍政権や改憲派の詭弁を強く批判している。
「“自国の軍隊を持たないで子供を守れますか?”みたいなことを言う人がいるじゃないですか。そんな事態になったら犠牲になるのは子供なのに、子供を引き合いにだすのがおかしいんですよ。未来のある子供を、先に死んでいくおっさんやおばさんが切り捨ててどないするねんと」
実は、山崎の祖父は先の戦争で亡くなったという。
「祖父は零戦に乗っていて戦死しました。僕らの世代は戦争を経験していないけど、不安感とか危機感っていうのは、DNAとして上の世代から受け継いでいると思うんです。日本が兵役のある国にはなってほしくないし、子どもをそんなことには巻き込みたくない。若い世代って戦争から感覚的に遠くなってしまっているけど、日本が戦後復興し、ここまで発展したのって憲法のおかげな気がするんです」(朝日新聞15年8月15日付広島版朝刊)
役者も、タレントも、ミュージシャンも、それぞれが自分たちの言葉で、憲法を語っている。彼・彼女らの言葉に共通するのは、自分たちが享受してきた日本国憲法が70年もの間、直接戦争に向かわせず、一人も殺さずにやっていけたこと、そのことに対する誇りだ。そして、この戦後の平和主義を捨ててまで、今、政府主導の改憲を行う意味がどこにあるのか? そのことを問いかけている。
それは、「アメリカから押し付けられた憲法」だとか、「新しい時代に新しい憲法を」とかいう、安倍政権が持ち出す詐術をはるかに超えた説得力を持っている。
これから先、政権からの圧力は強くなり、マスコミはますますだんまりを決め込んでいくだろう。そして、機を見るに敏なジャーナリストや評論家たちは、あたかもそれが「大人の現実的選択」であるかのような顔をして、憲法改正を肯定し始めるはずだ。
そんななか、彼らの言葉は、人々の心の裡にある茫漠とした不安を、たしかなかたちにしてくれる。政治権力に対して、おかしいものはおかしいと言う勇気をあたえてくれる。そして何より、沈黙こそ最大の愚行だということを、すべての人に教えてくれる。だからこそ、本サイトは、彼らを心から応援したいと思うのだ。
(編集部)