【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

朝日新聞の過去の栄光と東京新聞の現在の健闘~新潟知事選と新潟原発をめぐる報道

2016-09-27 20:15:41 | 政治・文化・社会評論
朝日新聞の過去の栄光と東京新聞の現在の健闘~新潟知事選と新潟原発をめぐる報道


                   櫻井 智志

 朝日新聞にも、個々に良心的な記者は多いだろう。戦後日本において朝日新聞社の果たした貢献は、いいかげんなものでなく、雑誌の「週刊朝日ジャーナル」「月刊論座」「月刊ASAHI」「週刊アエラ」「週刊朝日」などそれぞれ私は学んできた。

 だが、現在の朝日新聞本紙の論調。下記の孫崎享氏の実際の指摘と東京新聞記事との比較は、読んでみると、朝日新聞がどれほど安倍政権に迎合して、劣化しているかを知り、痛々しい気持ちになる。

 本多勝一氏、村上義雄氏などすぐれたジャーナリストも朝日新聞からは輩出している。本多氏は、現状に失望するばかりでなく、日刊新聞の創刊も考え、「週刊金曜日」を最初の試行期間は「月刊金曜日」として、いまも続けて、「金曜日」は批判的ジャーナリズムの代表格のひとつとして、世論から一目も二目も置かれている。村上義雄氏も多くのジャーナリストに呼び掛けて、重要な企画を推進している。村上氏の発表以前に、小生がうわついたでしゃばりはしない。

 むのたけじさんが亡くなられた。本多勝一氏がはるか前に、むのたけじ氏への批判を書いた時に、私は本多氏に共感を覚えた。ここではその詳細を記す場面ではない。本多氏の批判は、戦時中に戦争迎合記事を書き、それを自己批判して朝日を退社したのち、「たいまつ」社をつくり「たいまつ」を発行し続けたむのたけじ氏。むの氏がおこなった、自らの誓いと反する言動を、本多氏は批判していた。

 さて、孫崎氏はどんな紙面をどんな記事を批判しているのか、それはなぜ批判されているのか。是非ご一読を乞う。


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【孫崎享のつぶやき】

朝日、新潟知事選記事の最後を「そもそも知事に原発を止める法的な権限はない」で締めくくり。悪質な情報操作でないか。稼働を止める権限はないが、点検で休止中等の原発動かす時には地元(知事)権限あり。だから麻生財務相らが泉田立候補阻止で動いて来た。

2016-09-27 07:003



 26日朝日新聞は「新潟知事選 原発争点に」という大々的記事を掲載した。この中に次の記載がある。

{「“まずは知事を代えてからだろう”

「麻生財務相は陳情に来る新潟県の首長や自民党の県議に対して、こう告げることがあったという。麻生氏は電力会社との関係が深く、原発停止による経済的打撃を強調する国会答弁もしている。再稼働を進める政権にとり、泉田氏はやっかいな存在だった」

 しかし、記事は別の記者が継続して書く形をとり、次のように締めくくっている。
 「ただ、そもそも知事に原発を止める法的な権限はない。三反園知事は九電に対して即時停止し安全性を再点検するように要請したが、いずれも拒否された」

 この記事を読めば「知事に権限がない」ような印象を受ける。それならなぜ、麻生財務相は陳情に来る新潟県の首長や自民党の県議に対して“まずは知事を代えてからだろう”というのか。

 朝日新聞が意識的に書いていないことがある。

 点検で休止中の原発の再稼働には、知事権限が働く。「動いている原発をとめる権限がないのは事実だが、点検などで停止中の原発を動かすには知事権限が働く。

 朝日が「「ただ、そもそも知事に原発を止める法的な権限はない。」と書くのは、その狭い分野では正しいが。全体像を見れば再稼働には知事権限が存在するので、この書き方は知事選挙は原発と関係ないという方向に誘導しており、悪質だ。

 この問題は同業の東京新聞が解説しているので、朝日新聞は勉強してください。もっとも知った上で書いてはいると思うが。

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「再稼働可否 知事に主導権 川内原発、秋以降 検査で停止(【東京新聞・核心】2016年8月23日)

鹿児島県の三反園訓(みたぞのさとし)知事は八月下旬にも、九州電力に川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)の一時停止を求める考えを示している。九電が応じる可能性は低いが、十月以降、定期検査のため1号機、2号機の順に停止していく。定検後の再稼働には地元同意が必要で、知事は川内原発を巡る諸問題に切り込む主導権を握ることになる。 (小川慎一)

近く一時停止要請 運転中は法的権限なし

 ■住民の声

七月に初当選した三反園知事は、熊本地震で「県民の不安は高まっている」として、九電に原発を一時停止して点検するよう求めることを明言。就任後も「原発に頼らない社会をつくる考えはぶれていない」と、脱原発への思いを繰り返し語ってきた。

ただ、知事には稼働中の原発を止める法的権限はない。原子炉等規制法は、重大なルール違反があった場合などに原子力規制委員会が停止を命じることができるとしているだけだ。規制委の田中俊一委員長は、知事発言への感想を求められ、「われわれがきちんと審査してきた原発の何を点検するのか理解できない」と、冷ややかに語った。

しかし、知事は公約を実現しようと具体的な行動に出始めた。十九日、薩摩川内市の南に隣接するいちき串木野市の福祉施設や道路などを視察。住民から事故が起きた際の不安を聞き、「(原発事故時の)避難計画を見直す必要がある」と踏み込んだ。住民の声を背に、九電に乗り込む心づもりでいる。

 ■地元同意

知事の要請で、九電が原発を止める可能性はほとんどない。政治家の要請で原発が止まったのは、二O一一年五月の中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)のケースしかない。

東京電力福島第一原発事故が発生して間もない時期で、要請したのは菅直人首相(当時)の意を受けた海江田万里経済産業相(同)。例外中の例外といえる。

だが、稼働中の原発を止める権限はなくとも、止まっている原発を稼働させるか否かの段階では、知事は強い影響力を持つ。「地元同意」と呼ばれる手続きだ。県や薩摩川内市と九電が結んだ安全協定に明文化された規定はないものの、知事の反対を押し切って再稼働した前例はない。

原発は再稼働から十三カ月で検査のため停止するルールになっている。川内原発は1号機が十月六日、2号機は十二月十六日から定期検査に入る予定。検査期間は二カ月程度が見込まれている。

 ■対象範囲

定検後の再稼働の動きに対し、知事がどう対応するか注目されるが、もう一つ重要なポイントがある。原発の再稼働に同意が必要とされる、いわゆる「被害地元」が現状の狭い範囲でいいかどうかだ。これも知事の判断次第で決まる。

被害地元とは、原発で重大事故が起こった場合、大きな被害を受けると想定される地域のこと。川内原発の場合、事故に備え、三十キロ圏にある九市町は避難計画を策定することが義務付けられている。しかし、伊藤祐一郎前知事は「県と薩摩川内市の合意で十分」とし、他市町は地元同意では蚊帳の外に置かれた。

新規制基準に基づく再稼働第一号に意欲的だった伊藤氏は、いちき串木野、日置両市議会が地元同意に加えるよう求める意見書を可決しても、受け入れなかった。当事者が増えれば、再稼働が遠のくからだ。

川内再稼働から一年、新知事が誕生して一カ月が過ぎた八月十二日、川内駅前に「原発止めろ」と十人ほどの声が響いた。薩摩川内市内の主婦、外園聡美さん(四六)は夫と四男(三つ)と一緒に駅前に立ち、「川内では原発反対と言いにくい雰囲気がずっとある。でも、三反園知事の誕生で光が差してきた」と力を込めた。

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