【現代思想とジャーナリスト精神】

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【『安倍首相「最大の壁は男性中心の文化」 異例の自衛隊批判』の真意を見極めたい】

2016-09-14 19:53:00 | 政治・文化・社会評論

【『安倍首相「最大の壁は男性中心の文化」 異例の自衛隊批判』の真意を見極めたい】


                                櫻井 智志


 外国のことは言わない。日本の自衛隊内部で、女性自衛官が内部の男性上司や同僚の男性自衛官から、強姦やセクハラにあって、悩みに悩んだ末、心的トラウマと闘いながら、弁護士などの支援者に支えられて告発した実例がある。また、同様の被害にもかかわらず内部でおしつぶされた事例や告発できなかったケースもある。私がはじめてこうした事実があることを知ったのは、いま沖縄に住む岡留安則氏が編集発行人だった月刊誌『噂の真相』である。最後は本多勝一氏と対立して本多氏から批判された時期もあるが、その本多氏も佐高信氏も連載をもち続けた。特に厳しい権力批判と人間的感性豊かな佐高信氏は、最後の休刊まで執筆し続けた。いまの「日刊ゲンダイ」と似た雑誌だった。それ以外にも単発的に、自衛隊内部の女性蔑視の人権侵害事件は新聞や雑誌など報道されることもある。


 自衛隊内部にこのような女性蔑視の体質があって、どうして多くの女性が自衛官を望むか。考えられるケースは、経済不況が恐慌となった場合だ。テレビ報道で見た実例だが、学問に志し、経済的苦境で奨学金によって進学した大学生が、学費と高額利子つき奨学金の返済に追われ、授業に出られぬほどの長時間バイトで、ついには中退して、残ったものは高額の奨学金返済とバイトのみ。本人がめざした大学卒による資格取得と就職は果たせず、高卒の学歴(高卒や中卒の学歴を否定している論旨ではない、奨学金大学生の人生設計の乖離を述べるためなので誤解しないで下さい)とブラックバイト。このような事例で、女性大学生が困難な状況に追い込まれ、長時間バイトから比較的収入の多い風俗産業に入り、やむなく働くというケースもある。今後、「経済不況」から「経済志願兵」へと進み、海外に派兵される自衛隊に男性も女性も、という文脈から考えると、安倍総理の「男女平等」「女性活躍」の美辞麗句の裏側に、恐るべき圧政の構図を私は考えないわけにはいかない。


 この国の安倍晋三という男が政権の座につき、がらっと変わった。第一次政権ではひ弱で下痢と腸炎で、不本意な辞職をおこなった安倍氏であるが、まるで人が変わったような、剛健(ごうけんは合憲と真逆)反動の指導者と変貌をとげた。ジャパンハンドラーとして、オバマさえ押さえ込む「アメリカ軍産複合体」のマリオネットと化したことで、妄想的自信と異様な高揚感を獲得し、以前は自民党内で若手の期待株だった安倍氏は、オリンピック憲章に違反して、小池百合子都知事の顔に泥をぬりたくったスーパーマリオに変身して、世界中から顰蹙をかったというのに、日本国民は支持率を上昇させキープしているという結果をうんでいる。


 民進党代表選のさいちゅうだが、大手マスコミをつかい、市民と野党共闘の路線を破壊するような「民共合作」などという実態とも離れたデマゴギーは流す、日本と台湾の二重国籍だから代表選をやりなおせ、などと民進党内にひそむ隠れ「アベ」シタンを駆使して、議会制民主主義とは乖離した政治手法の連続。


 ひとつの公式発言や政策のうらに、どれだけ国民を痛め付ける謀略が潜んでいることか。私たちは、「言語ムード」でなく「言語洞察」を心がけたいものだ。


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重要参考資料:

【孫崎享のつぶやき】
〔安倍首相「最大の壁は男性中心の文化」 異例の自衛隊批判、女性比率アップへ積極的な取り組み指示。女性を戦闘に組み込めとでも言いたいのか。人類は長い間女性を戦闘の場から避けさせてきた。戦闘を必要悪と位置付けてきている。〕
2016-09-13 06:5821

A事実関係:
安倍首相「最大の壁は男性中心の文化」 異例の自衛隊批判、女性比率アップへ積極的な取り組み指示。(産経新聞)
安倍晋三首相は12日、防衛省で行われた自衛隊高級幹部会同に出席し、女性自衛官の比率が少ないことに触れ「最大の壁は根強く残る男性中心の働き方の文化だ。これを根底から変えていく必要がある」と述べ、異例の自衛隊批判を展開した。欧米諸国の軍と比べ自衛官の女性比率が低いことも指摘、「男性幹部諸君が自らの問題として積極的に(比率増加に)取り組んでもらいたい」と指示した。
 防衛省によると、自衛官に占める女性の割合は平成27年度末現在で5・9%(1万3476人)。防衛省は42年までに女性比率を9%以上にする目標を掲げているが、米国、フランス、オーストラリアは現時点で約15%もある。
 首相は「欧米諸国にできて日本にできないはずがない」と語り、首相が掲げる「女性活躍社会」を自衛隊も実現するよう迫った。
 自衛隊の女性幹部は、佐官クラスで全体の3・3%(26年度末現在)。将官クラス以上は一人もいない。首相は高級幹部会同に出席した幹部を見渡し、「この場に女性の将官の姿はない。高級幹部の登場も時間の問題だろう。楽しみに待ちたい」と語った。


B:評価:
・一般論として、男女平等、特に雇用の機会を平等にする努力はしていかなければならない。
・他方、歴史的に見れば、僅かな例外を除き、人類は戦闘分野に女性を入れないことで来た。
・それは戦闘を必要悪と位置づけ、戦闘に従事すれば当然死者が出る、これから女性を避けさせたいという配慮がなされた。多分、それは女性が子供を育てるという役割を担い、種の維持という側面があったろう。如何に必要であれ、女性を戦闘に参加させることは人類は避けてきた。
・第2次大戦後この流れは変わった。
 その最大要因は、人員の確保である。特にそれはイスラエルで顕著であった。
・女性の兵隊での比重が高いことは自慢できることではない。充足できない分を女性に回したのが事態の本質だ。
・どこでも「女性活躍の場」を増やせば社会が発展したものという訳ではない。この首相発言には強い疑問を持つ。


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