【茨城県 県知事選挙 良心宣言 2017】
2017/08/24
櫻井 智志
第一部 反原発の良心のもとにフル回転する鶴田まこみ候補
水戸藩は御三家のひとつ。茨城は近世から名門。近現代、私の知る牛久沼の住井すゑさんの小説と評論。戦前から活躍した住井さんを平成版にしたら鶴田さん。茨城の地に、戦後初めての本格的市民選挙は今日もフル稼働。北海道5区から始まった池田まきさんの市民選挙を鶴田まこみさんが見事に発展させた。
衆院の青森4区補選・愛媛3区補選・院新潟5区補選・川崎市長選、すべて10月10日告示、22日投開票。分裂した野党では当選は無理。民進党代表選の野党共闘論に注目。自民、民進は既に候補決定。「市民+野党」共闘の広範な共闘の茨城県知事選での鶴田まこみ候補の勝敗が、10月補選に大きな影響を与える。小泉進次郎筆頭副幹事長を選挙の顔とした自民党は、野党が準備できていない同10月22日に解散総選挙の動きも。茨城県知事選鶴田まこみ候補の善戦と勝利は、安倍政権の連続失政暴政に「県民・国民ファースト」意思表示の最適な方法だ。
読売・産経・朝日・毎日・東京など新聞が茨城県知事選予測。選挙予想自体が選挙戦術。「橋本大井川競り合い、鶴田さんは浸透今ひとつ」。がっくりした県民の動きが鈍る、それが狙いの選挙力学。日常の国政や県政はなおざりで選挙の時だけ「国政なみ以上」。鶴田さんの演説に政治再生の心が宿る。橋本候補や大井川候補は、自民が基盤の親戚。だが鶴田まこみ候補は違う。選挙そのものが、新しい立憲民主主義運動であり、市民運動であり、市民と野党六つの政党・政治団体の新・統一戦線運動である。当選が目的だが、選挙戦そのものに重要な意義がある。茨城知事選後に、実りの土壌が形成されている。
応援演説には、海渡雄一弁護士や桜井勝延南相馬市長などの反原発市民が意欲的に現地に入った。元運輸大臣・公明党元副委員長、二見伸明氏も公明党とは全く異なる立場で終始一貫して鶴田まこみ候補応援の陣頭に加わっている。日本共産党からは田村智子副委員長や小池晃書記局長なども応援の最初と後半押し上げに。紙智子参院議員は岩渕友参院議員と共に、参院選東北地区1人区で11人の野党共闘勝利に貢献した日本共産党議員。塩川鉄也衆院議員、塩村さえこ衆院議員は北関東選出。地元の共産党県議や市議も演説や下働きにも熱心に取り組む。六政党・団体が稼働。当選はさだかではないけれど、新潟茨城両県で原発に正面から対峙する知事の実現は、福島や全国に展望をもたらす。
自民党応援隊の旗頭に立たされた小泉進次郎氏は小泉元総理の次男。自民党はあいつぐ国政選挙に自民党の顔として大量得票効果を見込んでいるという。進次郎氏ははっきりいって若い頃のシンタロー(石原慎太郎氏)が全国で二百万、三百万得票した力量はない。ただ石原氏よりは穏健で常識がある。安倍汚政を隠すため登用されるのは、小泉進次郎氏の立場を考えるとむごいことだ。なりふりかまわぬ自民党の背景には、第二部で掲げる日刊ゲンダイ巻頭特集記事がわかりやすく的確である。
茨城県知事選 良心宣言2017
昭和亭魯迅
政治社会前進を求めて
力およばずして斃れることを辞さないが
力尽きずしてくじけることをこばむ
一党一派の独裁でなく 広範な ふつうのお母さんの眼で立候補した見識ある知識人
茨城県民は真の勇気ある良心を見捨てるか
茨城県民の判断が日本の政治のゆくすえを握る
===========================
第二部 「日刊ゲンダイ」【巻頭特集】転載
原発容認候補の応援に自民党総がかり 茨城県知事選の異様
2017年8月23日バックナンバー
今週末の27日投開票の茨城県知事選に自民党が総力戦を仕掛けている。自公が推薦する経産省出身の新人、大井川和彦氏(53)の応援に大臣や党幹部を次々と送り込み、ラストサンデーの20日には人気者の小泉進次郎筆頭副幹事長が駆けつけるなど、国政選挙並みの態勢だ。
自民党陣営は、7選を目指す現職の橋本昌氏(71)の多選批判に照準を定めているが、実はこの選挙の最大の争点は原発だ。東海村にある日本原子力発電東海第2原発は、2011年の東日本大震災で自動停止して以降、再稼働の前提となる適合性審査が続いている。運転開始から40年になる来年11月が運転期間延長の申請期限だが、最長20年の運転延長を認めるのかどうか。
現地で取材を続けているジャーナリストの横田一氏が、選挙の構図をこう説明する。
「現職の橋本氏は告示日の第一声で『再稼働を認めない方向にかじを切りたい』と明言しました。
その主張は政見放送でも流されています。共産党などが推薦する新人候補も再稼働反対と廃炉を主張している。一方、自公が推す新人は、3月の立候補表明の時は『住民の直接の意思表明という機会を与えてもいい』と口をすべらせたのですが、自民党に猛反対され、住民投票について発言しなくなりました。選挙戦でも再稼働にはほとんど触れていません。自民党の候補ですから中身はバリバリの原発推進派で、古い自民党そのものです」
首長の反対で原発再稼働の道が閉ざされては困る。だからこそ、自民党は地方選である茨城県知事選にここまで力を入れているのだ。事実上、原発容認のための総がかり戦なのである。
■世界は脱原発に向かっている
「老朽化原発を動かすために、党を挙げて知事選にシャカリキになるなんて、正気の沙汰ではありません。福島原発事故の深刻さを見て、ドイツが2020年までに原発を全廃する方針を打ち出すなど、世界が脱原発に向かっている。世界一の原発依存国であるフランスでさえ、脱原発に踏み切ったのです。事故の当事国の日本は真っ先に脱原発を決めるのが普通なのに、なぜ原発にしがみつき再稼働に突き進んでいるのか。世界中が奇異の目で見ていますよ」(政治評論家・本澤二郎氏)
フランスは2年前に脱原発の「エネルギー転換法」を成立させた。5月に誕生したマクロン政権の転換担当相は、国内の原発全58基のうち17基を25年までに閉鎖すると表明。フランス原発会社のアレバが事業難に陥っていることも脱原発の流れを加速させた。
ドイツのシーメンスは11年に原発事業からの撤退を表明。米国のGEも原発から手を引いた。そして、東芝が高値で買収したウェスチングハウス(WH)は破算。ハイリスク・ローリターンな原発ビジネスは、世界中で成り立たなくなっている。
「そんなことはお構いなしで、安倍政権は原発再稼働に前のめりになり、原発輸出を成長戦略の柱に据えている。福島の事故を経てもなお、悪魔のエネルギーでカネもうけをしようなんて、マトモな人間の考えることではありません。脱原発を決めれば、自然エネルギーが日本の一大産業として発展するかもしれないのに、原発推進しか頭にない。だから、ゾンビ企業の東電も東芝も潰せない。“経産省政権”と呼ばれる安倍政権が続くかぎり、国民の多くが望む脱原発はできず、核のゴミの問題も先送りされる。この国の未来は真っ暗です」(本澤二郎氏=前出)
日本を代表する名門企業の東芝が倒産の危機に瀕しているのも、原発事業が要因だ。「原子力ルネサンス」が叫ばれていた06年、経産省が「原子力立国計画」を策定。第1次安倍政権の時だ。この国策に乗っかる形で、東芝は原発ビジネスへの傾注を強めていく。手始めとして06年にWHを買収したことが転落の始まりだった。
ちなみに、「原子力立国計画」を書いたのは、経産省の柳瀬唯夫審議官だという。当時は資源エネルギー庁の原子力政策課長だった。現在は加計学園問題のキーパーソンとして知られる。首相秘書官だった一昨年4月に今治市の企画課長らが官邸を訪れた際の面会相手ではないかと国会で追及され、「記憶にございません」を連発した。
東芝が原発事業にのめり込むあまり、粉飾に手を染めた経緯は、大西康之氏の著書「東芝 原子力敗戦」に詳しい。
その中で、東芝の無謀ともいえる経営判断に多大な影響を与えた人物として名指しされているのが、安倍首相の最側近といわれる今井尚哉首相秘書官である。
<今井は、アベノミクスを成立させるために、何が何でも原発パッケージ型輸出を実現したかったはずだ>
<今井にとって東芝は、阿吽の呼吸で無理を聞いてくれる便利な会社であり、三菱重工業や日立製作所よりずっと使い勝手が良かった。一方の東芝は今井という後ろ盾を得て、身の丈を超えたリスクテイクに走ってしまった>
バックには今井秘書官と官邸がついている。そういう甘えと驕りが、東芝を採算の合わない原発事業の拡大に走らせた。その結果、5兆円企業が倒産の淵に追い込まれたわけだが、過去に例を見ない規模の粉飾が明らかになっても、債務超過の実態が白日の下にさらされても、東芝は潰れない。国策企業だからだ。
<東芝に消滅されては、政府も困る。経産省は福島の事故を経てもなお、「原発推進」の方針を堅持しており、原発の再稼働を急いでいる。再稼働すれば、核燃料の供給や定期点検を担う企業が必要になる。東芝はその筆頭格なのである。東芝を見殺しにすることは、原発推進の旗を降ろすことにつながりかねない>
■失政のツケは国民に押し付けられる
「東芝 原子力敗戦」には、こうも書いてある。
<官僚は犯罪や不祥事を除けば、どんな失敗をしても個人の名前で責任を問われることがない。「国のため」と言いながら無責任に大きな絵を描き、失敗のつけは企業や国民に押し付ける>
<東芝という百四十年の歴史を持ち、十九万人の雇用を抱える名門企業を吹き飛ばしたのは、紛れもなく「原発輸出」という「国策」である>
東芝の粉飾経営陣の責任は免れないが、国策の犠牲者という側面もあるということだ。経産省を盲信し、官邸の意向に翻弄された。
脱原発という世界の潮流から取り残され、負けが見えていても経産省が亡国のエネルギー政策を死守するのは、原発が大きな利権だからだ。自分たちが推し進めた原発立国が失敗だったと認めたくないという勝手な事情もあるだろう。それが国策としてまかり通り、失政を認めず、意地で遂行する無責任体質は、太平洋戦争のインパール作戦に通じるものがある。
考えてみれば、安倍政権で経産官僚が跋扈するようになってから、ロクなことがない。シャープも東電も東芝もボロボロになった。経産省が主導して産業革新機構が2000億円を出資したジャパンディスプレイも暗礁に乗り上げている。日本の産業は衰退の一途だ。結局、アベノミクスの目玉だった原発パッケージ型輸出だって、ひとつも実現していない。
そういう亡国官僚に操られた政権が、原発推進のために茨城県知事選に全力投球しているのだ。「たかが県知事選」と傍観できない理由がここにある。
「官邸主導で経産省出身者を担いだことで、自民党の狙いはハッキリしています。多選批判で原発を争点から隠し、とにかく勝ってしまえば、再稼働もなんとかなると考えている。いつもの姑息なやり方です。有権者が本当の争点に気づいて踏みとどまらないと、原発再稼働の流れが止まらなくなる。そのツケは国民に押し付けられるのです」(横田一氏=前出)
原発推進の闇は深い。茨城県知事選は安倍政治の破滅の縮図だ。ここで自民党を惨敗させなきゃウソである。
======<了>===========
2017/08/24
櫻井 智志
第一部 反原発の良心のもとにフル回転する鶴田まこみ候補
水戸藩は御三家のひとつ。茨城は近世から名門。近現代、私の知る牛久沼の住井すゑさんの小説と評論。戦前から活躍した住井さんを平成版にしたら鶴田さん。茨城の地に、戦後初めての本格的市民選挙は今日もフル稼働。北海道5区から始まった池田まきさんの市民選挙を鶴田まこみさんが見事に発展させた。
衆院の青森4区補選・愛媛3区補選・院新潟5区補選・川崎市長選、すべて10月10日告示、22日投開票。分裂した野党では当選は無理。民進党代表選の野党共闘論に注目。自民、民進は既に候補決定。「市民+野党」共闘の広範な共闘の茨城県知事選での鶴田まこみ候補の勝敗が、10月補選に大きな影響を与える。小泉進次郎筆頭副幹事長を選挙の顔とした自民党は、野党が準備できていない同10月22日に解散総選挙の動きも。茨城県知事選鶴田まこみ候補の善戦と勝利は、安倍政権の連続失政暴政に「県民・国民ファースト」意思表示の最適な方法だ。
読売・産経・朝日・毎日・東京など新聞が茨城県知事選予測。選挙予想自体が選挙戦術。「橋本大井川競り合い、鶴田さんは浸透今ひとつ」。がっくりした県民の動きが鈍る、それが狙いの選挙力学。日常の国政や県政はなおざりで選挙の時だけ「国政なみ以上」。鶴田さんの演説に政治再生の心が宿る。橋本候補や大井川候補は、自民が基盤の親戚。だが鶴田まこみ候補は違う。選挙そのものが、新しい立憲民主主義運動であり、市民運動であり、市民と野党六つの政党・政治団体の新・統一戦線運動である。当選が目的だが、選挙戦そのものに重要な意義がある。茨城知事選後に、実りの土壌が形成されている。
応援演説には、海渡雄一弁護士や桜井勝延南相馬市長などの反原発市民が意欲的に現地に入った。元運輸大臣・公明党元副委員長、二見伸明氏も公明党とは全く異なる立場で終始一貫して鶴田まこみ候補応援の陣頭に加わっている。日本共産党からは田村智子副委員長や小池晃書記局長なども応援の最初と後半押し上げに。紙智子参院議員は岩渕友参院議員と共に、参院選東北地区1人区で11人の野党共闘勝利に貢献した日本共産党議員。塩川鉄也衆院議員、塩村さえこ衆院議員は北関東選出。地元の共産党県議や市議も演説や下働きにも熱心に取り組む。六政党・団体が稼働。当選はさだかではないけれど、新潟茨城両県で原発に正面から対峙する知事の実現は、福島や全国に展望をもたらす。
自民党応援隊の旗頭に立たされた小泉進次郎氏は小泉元総理の次男。自民党はあいつぐ国政選挙に自民党の顔として大量得票効果を見込んでいるという。進次郎氏ははっきりいって若い頃のシンタロー(石原慎太郎氏)が全国で二百万、三百万得票した力量はない。ただ石原氏よりは穏健で常識がある。安倍汚政を隠すため登用されるのは、小泉進次郎氏の立場を考えるとむごいことだ。なりふりかまわぬ自民党の背景には、第二部で掲げる日刊ゲンダイ巻頭特集記事がわかりやすく的確である。
茨城県知事選 良心宣言2017
昭和亭魯迅
政治社会前進を求めて
力およばずして斃れることを辞さないが
力尽きずしてくじけることをこばむ
一党一派の独裁でなく 広範な ふつうのお母さんの眼で立候補した見識ある知識人
茨城県民は真の勇気ある良心を見捨てるか
茨城県民の判断が日本の政治のゆくすえを握る
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第二部 「日刊ゲンダイ」【巻頭特集】転載
原発容認候補の応援に自民党総がかり 茨城県知事選の異様
2017年8月23日バックナンバー
今週末の27日投開票の茨城県知事選に自民党が総力戦を仕掛けている。自公が推薦する経産省出身の新人、大井川和彦氏(53)の応援に大臣や党幹部を次々と送り込み、ラストサンデーの20日には人気者の小泉進次郎筆頭副幹事長が駆けつけるなど、国政選挙並みの態勢だ。
自民党陣営は、7選を目指す現職の橋本昌氏(71)の多選批判に照準を定めているが、実はこの選挙の最大の争点は原発だ。東海村にある日本原子力発電東海第2原発は、2011年の東日本大震災で自動停止して以降、再稼働の前提となる適合性審査が続いている。運転開始から40年になる来年11月が運転期間延長の申請期限だが、最長20年の運転延長を認めるのかどうか。
現地で取材を続けているジャーナリストの横田一氏が、選挙の構図をこう説明する。
「現職の橋本氏は告示日の第一声で『再稼働を認めない方向にかじを切りたい』と明言しました。
その主張は政見放送でも流されています。共産党などが推薦する新人候補も再稼働反対と廃炉を主張している。一方、自公が推す新人は、3月の立候補表明の時は『住民の直接の意思表明という機会を与えてもいい』と口をすべらせたのですが、自民党に猛反対され、住民投票について発言しなくなりました。選挙戦でも再稼働にはほとんど触れていません。自民党の候補ですから中身はバリバリの原発推進派で、古い自民党そのものです」
首長の反対で原発再稼働の道が閉ざされては困る。だからこそ、自民党は地方選である茨城県知事選にここまで力を入れているのだ。事実上、原発容認のための総がかり戦なのである。
■世界は脱原発に向かっている
「老朽化原発を動かすために、党を挙げて知事選にシャカリキになるなんて、正気の沙汰ではありません。福島原発事故の深刻さを見て、ドイツが2020年までに原発を全廃する方針を打ち出すなど、世界が脱原発に向かっている。世界一の原発依存国であるフランスでさえ、脱原発に踏み切ったのです。事故の当事国の日本は真っ先に脱原発を決めるのが普通なのに、なぜ原発にしがみつき再稼働に突き進んでいるのか。世界中が奇異の目で見ていますよ」(政治評論家・本澤二郎氏)
フランスは2年前に脱原発の「エネルギー転換法」を成立させた。5月に誕生したマクロン政権の転換担当相は、国内の原発全58基のうち17基を25年までに閉鎖すると表明。フランス原発会社のアレバが事業難に陥っていることも脱原発の流れを加速させた。
ドイツのシーメンスは11年に原発事業からの撤退を表明。米国のGEも原発から手を引いた。そして、東芝が高値で買収したウェスチングハウス(WH)は破算。ハイリスク・ローリターンな原発ビジネスは、世界中で成り立たなくなっている。
「そんなことはお構いなしで、安倍政権は原発再稼働に前のめりになり、原発輸出を成長戦略の柱に据えている。福島の事故を経てもなお、悪魔のエネルギーでカネもうけをしようなんて、マトモな人間の考えることではありません。脱原発を決めれば、自然エネルギーが日本の一大産業として発展するかもしれないのに、原発推進しか頭にない。だから、ゾンビ企業の東電も東芝も潰せない。“経産省政権”と呼ばれる安倍政権が続くかぎり、国民の多くが望む脱原発はできず、核のゴミの問題も先送りされる。この国の未来は真っ暗です」(本澤二郎氏=前出)
日本を代表する名門企業の東芝が倒産の危機に瀕しているのも、原発事業が要因だ。「原子力ルネサンス」が叫ばれていた06年、経産省が「原子力立国計画」を策定。第1次安倍政権の時だ。この国策に乗っかる形で、東芝は原発ビジネスへの傾注を強めていく。手始めとして06年にWHを買収したことが転落の始まりだった。
ちなみに、「原子力立国計画」を書いたのは、経産省の柳瀬唯夫審議官だという。当時は資源エネルギー庁の原子力政策課長だった。現在は加計学園問題のキーパーソンとして知られる。首相秘書官だった一昨年4月に今治市の企画課長らが官邸を訪れた際の面会相手ではないかと国会で追及され、「記憶にございません」を連発した。
東芝が原発事業にのめり込むあまり、粉飾に手を染めた経緯は、大西康之氏の著書「東芝 原子力敗戦」に詳しい。
その中で、東芝の無謀ともいえる経営判断に多大な影響を与えた人物として名指しされているのが、安倍首相の最側近といわれる今井尚哉首相秘書官である。
<今井は、アベノミクスを成立させるために、何が何でも原発パッケージ型輸出を実現したかったはずだ>
<今井にとって東芝は、阿吽の呼吸で無理を聞いてくれる便利な会社であり、三菱重工業や日立製作所よりずっと使い勝手が良かった。一方の東芝は今井という後ろ盾を得て、身の丈を超えたリスクテイクに走ってしまった>
バックには今井秘書官と官邸がついている。そういう甘えと驕りが、東芝を採算の合わない原発事業の拡大に走らせた。その結果、5兆円企業が倒産の淵に追い込まれたわけだが、過去に例を見ない規模の粉飾が明らかになっても、債務超過の実態が白日の下にさらされても、東芝は潰れない。国策企業だからだ。
<東芝に消滅されては、政府も困る。経産省は福島の事故を経てもなお、「原発推進」の方針を堅持しており、原発の再稼働を急いでいる。再稼働すれば、核燃料の供給や定期点検を担う企業が必要になる。東芝はその筆頭格なのである。東芝を見殺しにすることは、原発推進の旗を降ろすことにつながりかねない>
■失政のツケは国民に押し付けられる
「東芝 原子力敗戦」には、こうも書いてある。
<官僚は犯罪や不祥事を除けば、どんな失敗をしても個人の名前で責任を問われることがない。「国のため」と言いながら無責任に大きな絵を描き、失敗のつけは企業や国民に押し付ける>
<東芝という百四十年の歴史を持ち、十九万人の雇用を抱える名門企業を吹き飛ばしたのは、紛れもなく「原発輸出」という「国策」である>
東芝の粉飾経営陣の責任は免れないが、国策の犠牲者という側面もあるということだ。経産省を盲信し、官邸の意向に翻弄された。
脱原発という世界の潮流から取り残され、負けが見えていても経産省が亡国のエネルギー政策を死守するのは、原発が大きな利権だからだ。自分たちが推し進めた原発立国が失敗だったと認めたくないという勝手な事情もあるだろう。それが国策としてまかり通り、失政を認めず、意地で遂行する無責任体質は、太平洋戦争のインパール作戦に通じるものがある。
考えてみれば、安倍政権で経産官僚が跋扈するようになってから、ロクなことがない。シャープも東電も東芝もボロボロになった。経産省が主導して産業革新機構が2000億円を出資したジャパンディスプレイも暗礁に乗り上げている。日本の産業は衰退の一途だ。結局、アベノミクスの目玉だった原発パッケージ型輸出だって、ひとつも実現していない。
そういう亡国官僚に操られた政権が、原発推進のために茨城県知事選に全力投球しているのだ。「たかが県知事選」と傍観できない理由がここにある。
「官邸主導で経産省出身者を担いだことで、自民党の狙いはハッキリしています。多選批判で原発を争点から隠し、とにかく勝ってしまえば、再稼働もなんとかなると考えている。いつもの姑息なやり方です。有権者が本当の争点に気づいて踏みとどまらないと、原発再稼働の流れが止まらなくなる。そのツケは国民に押し付けられるのです」(横田一氏=前出)
原発推進の闇は深い。茨城県知事選は安倍政治の破滅の縮図だ。ここで自民党を惨敗させなきゃウソである。
======<了>===========