【現代思想とジャーナリスト精神】

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【2017茨城県知事選挙結果へのひとつの視点】

2017-08-29 21:11:39 | 政治・文化・社会評論
2017茨城県知事選挙結果へのひとつの視点

             櫻井 智志

 茨城県知事選挙は、自民公明が推薦した大井川和彦氏が当選した。
▽大井川和彦(無所属・新)49万7361票
▽橋本 昌 (無所属・現)42万7743票
▽鶴田真子美(無所属・新)12万2013票


<構成>

①東京新聞【社説】新茨城県知事 「原発動かさず」尊重を

②社説を読んでの私見  櫻井智志(*本来は知事選を闘った各候補の政策・支援・結果得票の分析とその背景・今後の展望が必要である。社説読後の印象のみであることをお断りしておく。)

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東京新聞【社説】新茨城県知事 「原発動かさず」尊重を
2017年8月29日

 やはり原発再稼働反対の民意は重い。茨城県知事選を制した大井川和彦氏は胸に刻んでほしい。県民の命と暮らしを預かる責任者として原発とどう向き合うのか。「再稼働ありき」は許されない。

 安倍晋三首相が求心力の回復を期した内閣改造後、初めての大型地方選として注目を集めた。原発立地自治体の首長選びという性格も、併せて前面に出た。だが、活発な論戦が交わされたとは言い難く、残念だ。

 元IT企業役員大井川氏は、自民、公明両党の推薦を得て、現職橋本昌氏と、共産党が推薦したNPO法人理事長鶴田真子美氏を破った。

 もっとも、民進党は自主投票に流れ、中央での与野党対決の構図は反映されなかった。地方での激しい保守分裂の様相は、かえって安倍政権への不信と憤怒の根深さを印象づけたのではないか。

 なにより大井川氏は、七選を目指した橋本氏の多選阻止を唱えるばかりで、橋本、鶴田両氏が打ち出した日本原子力発電東海第二原発(東海村)の再稼働に反対する姿勢に対して、真正面から応えようとはしなかった。

 地元の関心が殊に高い原発について、トップとしての立ち位置を明らかにしないのでは、再稼働を推し進める政権の「傀儡(かいらい)」と批判されても仕方あるまい。

 大井川氏は「民意を吸い上げながら、県民が納得できるような形で進めていきたい」と語る。ならば、その民意を見てみたい。

 共同通信が実施した投票所の出口調査では、再稼働に賛成の声は三割程度にとどまったのに対し、反対は七割近くを占めた。さらに、橋本、鶴田両氏を合わせた得票数は約五十五万票に達し、大井川氏のそれを上回った。

 大方の民意は慎重と見るのが自然ではないか。その重みをしっかりと心に留めねばならない。多くの県民にとって、政治経済的な利害得失を超えた切実な問題だ。

 国の原子力災害対策指針に基づき、広域避難計画づくりを義務づけられる原発から三十キロ圏内には十四市町村がふくまれ、全国最多の九十六万人が暮らす。大がかりな避難を想定せねばならないこと自体が、エネルギー源として不合理極まりない。

 しかも、東海第二は来年十一月に運転期限の四十年を迎える老朽原発だ。電力事業者の原電は最長二十年の延長運転を目指しているが、人間の営みと自然を守るために不可欠とは思われない。新知事にはそのことが問われるのだ。

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社説を読みながら感じた印象  

 さっそく九州電力は28日に玄海原発原発3号機を来年1月に再稼働、関西電力は来年1~3月に福井県大飯原発3号機、4号機に再稼働させると発表した。東海村第2原発自身が容認派の候補当選で再稼動が選挙前から織り込み済みの選挙だったのに。
 知事選を自民党の様子について少し触れたい。 


 自公候補大井川氏を当選させようとする自民党本部・国会議員団の意気込みは、並々ならぬ取り組みであった。これだけのエネルギーを国政の改善に向けてとりくんだら、もう少し今の惨憺たる実態よりはよかったろうに。

 しかし逆に考えれば、国家主義軍国主義憲法改悪にこれだけのエネルギーを注いだら、それも恐ろしい予感を感じる。
「岸田文雄」「野田聖子」「河野太郎」「小泉進次郎」「石破茂」、これらの安倍晋三氏とは距離感のある人物も、頭に「自民党の」とつくと豹変するものだ。彼らの個人としての主張などすべて埋没し、「自民党集団主義」は、いまの段階で愕然とする。

 自公両党の選挙対策幹部は、自公が結束すればこの力となると胸をはった。だが自公が離反した東京都議選でも、自民の惨敗に比べ公明は全員当選だった。

 自民・公明-公明・都ファー。この構図から、自民、公明、小池都知事グループがひとつの環を成して権力掌握の構図が見える。橋下徹勢力よりも小池百合子勢力のほうがしたたかで狡猾だ。橋下-小池連携はあるかわからないが、自民党がこれだけのちからを発揮したのは、やはりいつも自民党の背後でてこいれしてきたアメリカ政府・軍部の決して無視できない強権力の意思が透けて見える。


 なお、この社説の掲載された日の東京新聞朝刊に、社説が論じた茨城県に関わるつぎの記事が心をとらえた。

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  悲劇の東海村     鎌田 慧

 先週の土曜日。「東海村で『原発NO!』を叫ぼう 人間の鎖行動」に参加した。薄曇りだったからやや助かったが、それでも原発周辺だから木立のない炎天下、さすがに気分が悪くなった。

 東海第二原発は、来年で運転40年目、ボロ原発だ。あと20年間の操業をたくらんでいる。無謀というべき自殺行為、というか他殺行為だ。いまだ原発を「主力電源」と言い放つ内閣と取り巻き官僚たち、原子力規制委員会、日本原電は事故が起きたときどんな責任をとるつもりか。

 「ヒバクシャ」の悲惨を見捨てて「核兵器禁止条約」に背をむけた安倍内閣、「フクシマの悲劇」を繰り返さないと決意したドイツなど原発脱却諸国の叡智を迷惑顔に再稼働を進める政府。
 東海村は日本最初の原子炉が臨海に達した「原子力の村」であり、死者が出た最初の臨海事故が発生した村であり、最初に廃炉作業がはじまった村だ。最近では近くの大洗町の研究所で放射性物質が飛散、労働者が被ばくする事故が発生した。

 1950年代末、マスコミで喧伝された原子力栄光のトップランナーが真っ先に転倒した悲劇の村(その二番手が靑森県六ケ所村だ)である。

 茨城県知事選挙は、現職が*ようやく「再稼働反対」を主張したが、自公政権の執拗な「多選阻止」を掲げた攻撃によって敗退した。

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写真は鎌田慧さん。今回の記事とは無関係の写真です。

(注*現職が「再稼働反対」を選挙戦中にうちだしたのは、反原発政策を体系的に告示から問題提起した共産党含め市民と政党・団体の6グループ推薦の鶴田まこみ候補が立候補していたことが大きい。)




=======<了>========================