【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

【「小沢一郎」という政治思想問題~孫崎亨・本澤二郎・上脇博之三氏にまなぶこと~】   櫻井 智志

2018-12-25 17:40:52 | 政治・文化・社会評論


❶序

 孫崎享氏の『アメリカに潰された政治家たち』を読んでいる。その中に小沢一郎があげられている。孫崎氏は、少なくとも小沢一郎が対米従属路線てはなく、対米自立派であろうとしたことが、アメリカによって潰されたと見ている。小沢一郎氏に対しては、反体制派の中でも評価は二分される。

 小沢氏をめぐる西松建設違法献金事件について上脇博之氏から科学的法学的な分析と事実に基づいた生産的な論議の必要性が提起されている。私は上脇氏の提案に納得しつつ、別のことを考えている。
 宇都宮徳馬氏を師と仰ぎ、ジャーナリストとして独自の独創的な政治評論の実績のある本澤二郎氏の見解である。日本の支配は財閥であるという本澤氏の指摘には、正直疑問もあるが、以下の本澤氏の論文の報道についての指摘にはほぼ賛成である。

 「小沢問題」に話を戻すと、「小沢一郎という思想」の問題を私は考える。金権政治をめぐる法的政治倫理的問題については、佐高信氏の「クリーンなタカとダーテイなハト」の優れた比喩が適切である。法学的倫理的な小沢氏をめぐる検討については、ここでは譲る。

 日本の独立を担う日本人の自立を阻害している大手マスコミという文脈で小沢一郎に対する分析を考えると、事実としての金権政治や法的違反の問題が大切な問題であることを踏まえたうえで、政治思想としての小沢一郎問題について論ずることはそれほど荒唐無稽ではあるまい。

 まだ述べたいことはあるが、読者諸氏に本澤二郎氏の見解を紹介したいので、私の見解はここまでとする。
(ナンバリングと最初の項目の列記は小生がつけた。)

❷ 本澤二郎氏の評論
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本澤二郎の「日本の風景」(1250)
1<日本の“民主主義”>
2 <民意と政治・政策の乖離>
3<反映されない民意>
4<つくられる民意>
5<新聞テレビを信じる日本人>
6<操作される新聞テレビ>
7<金と権力に屈する新聞テレビ>
8 <財閥支配の日本>

1<日本の“民主主義”>
 日本の“民主主義”は、民意が反映される本来の民主主義ではない。国民の間に、こうした見方が広がっていると信じたい。たとえば、政治的な分野では小沢一郎に期待をかけている市民は、間違いなくそうした認識を抱いている。財政の悪化を少しでも和らげようとして、その負担を弱者に押し付ける10%消費税に疑問を持つ市民もそうだろう。これは前進である。
 アメリカに有利な貿易政策を強行することに反対する農林漁業者や医療・福祉の分野で働く人たちも「日本の民主主義はおかしい」と感じている。2度と戦争をしないと約束した平和憲法を「破壊する」と公約した改憲軍拡の、アジアに緊張をもたらす安倍内閣に対して怒りを抱く平和市民も、そうであろう。
 極右政権を必死で弁護する読売グループなどのマスコミの存在に疑問を抱く市民は、やはり同じ思いだろう。3・11による原発事件報道を隠ぺいする政府・東電・新聞テレビに失望する民衆は、日本の“民主主義”に重大な懸念を持ち始めている。
 極論すると、日本に民主主義は存在していない。らしいものがあるとしても、韓国にも劣ることは間違いないだろう。ひょっとして、ネット社会が生育した中国にも劣るかもしれない。ことほど日本の“民主主義”は怪しい。不存在といえるかもしれない。

2 <民意と政治・政策の乖離>
 関税ゼロという疑問だらけのTPPを、臆面もなく「国民の6割以上が賛成している」と報道するテレビが電波を牛耳り、そのことを大々的に報道して、国民の脳を支配している。ドイツ・ヒトラーの時代を知らないが、何となく連想してしまいそうだ。改憲・再軍備のラッパを高々と吹聴する政権は、戦後の政治史に存在しなかった。正に極右政権そのものだが、そんな安倍内閣を7割前後の国民が支持している、とマスコミは報道している。
 貨幣乱発で人工的に円安にするという狂気じみた安倍・経済政策を、過半数の国民が浮かれて支持しているという。広島・長崎に次いで核被害を受けた日本国民が、原発再稼働・原発輸出に突進している政府を選択、昨年の12・16総選挙に次いで、今夏の参院選挙でも勝利させるというのだ。
 民意と政治・政策の乖離は際立っている。このことに重大な疑問と関心を抱く知識人はいるに違いない。勇気を出して、気付いたら声を出してもらいたい。

3<反映されない民意>
 経済が破綻すると、政治も混迷化する。マルクスに言われなくて通用する政治経済原則である。しかし、それよりも何よりも、根本は民意が反映されているか否か、がその国の安定を測定できるモノサシである。
 すなわち、民衆の声が政治に反映されれば、その国や地域は安定する。これも政治の大原則である。民意が反映されない日本に、いま重大な危機が襲いかかっている。このことに為政者は心すべきだろう。中国の腐敗問題は深刻きわまりないが、それゆえに当局の対応は従来になく真剣である。それは民意だからだ。これを処理しないと、現体制の崩壊を約束させるからだ。
 日本は2009年にそうした選択をしたが、成功しなかった。昨年の12・16ではその反対の結果を出してしまった。不正選挙疑惑もまとわりつき、遂に恐ろしいほどの保守的な裁判所が「憲法に違反する」との判決を相次いでしている。
 安倍内閣は有権者の10%台の得票で3分の2近い議席を手にした。現在、国民の5割近い人たちが、そんな自民党を支持していると公共放送までが、塩を送り続けている。民意が反映されない日本に政治的危機が内在している。なぜ民意は反映されないのか。そのからくりを伝える義務がジャーナリストの責任である。

4<つくられる民意>
 安倍内閣は日銀を制圧した。貨幣乱発派の黒田とかいう総裁にする。これに国際的な投資ファンドが、円安想定で株と為替に資金を大量投入している。ただそれだけの事実を、メディアは正確に報道しない。円安による副作用は弱者を直撃する。そのことを伝えない新聞テレビである。
 悪しき政府によって民意は変えられる、新たにつくられるのである。世論操作こそが、政府与党の主たる任務となっている。本来、この壁をぶち破る装置は民主主義には存在する。一つは議会だ。もう一つが新聞テレビなどのマスコミである。「この二つが正常に機能すれば、民主主義は確立することになる。しかし、これの腐敗が日本を危機に追い込んでいる」と宇都宮徳馬は生前、声をからして筆者に指摘していた。
 「新聞テレビの腐敗、特に読売の腐敗に怒りをみなぎらせていた」のだが、これは改まるどころか、一層悪化している。本来、権力を監視する使命のあるマスコミが腐敗し、民意をねじ曲げてしまう、それが今日の日本の姿なのである。民意は作られるのだ。

5<新聞テレビを信じる日本人>
 人民の、人民による、人民のための政治は、欧米先進国でも多国籍企業や1%富豪に支配されて、大分怪しくなっているが、日本も財閥に支配されて、この原理が通用しなくなり、事実上、存在していない。この真実に民衆は覚醒すべきである。
 この覚醒を邪魔している実態が、新聞テレビなどのマスコミなのである。このことに気付いた時に、日本の民主主義は誕生することになろう。あえて指摘しておきたい。
 民意が反映される社会が、いうところの民主主義である。
 韓国では韓米自由貿易協定に弱者の氾濫が相次いでいる。反映されない民意に民衆が反撃している。これを抑制するために韓米の為政者は、南北の緊張を演出する。これにまんまと利用されるだけの北の若い指導者だ。
 韓国の財閥批判はすさまじい。民主主義が機能している証拠だ。政権交代時に暴利をむさぼる財閥のボスが拘束されることなど珍しくない。日本は「財閥は存在しない」ことになっている。日本共産党までが財閥の存在を隠している日本だ。マスコミからも「財閥」は消されている。
 日本人の最大の弱点は、新聞テレビを正直に信用することに尽きる。これは多くの先進国にも通用するが、日本人は特別である。新聞テレビの報道に左右される。この点で、中国人と異なる。中国人は逆である。中国の人民は日本人よりもはるかに賢い。すぐれた民衆によって成り立っていることに気付くべきだろう。

6<操作される新聞テレビ>
 新聞テレビを信用する日本人は、簡単に自己の判断を変えたりする。まことに自由自在である。新聞テレビの報道に従順だからである。
 「日本人は柔軟性がある」と評価する外国人が少なくない。「欧米の文化を容易に受け入れて、近代化を実現した」という分析が一般に通用するほどだ。これはお上(かみ)に従順、新聞に従順な結果なのだ。
 自ら思考する日本人ではない。「寄らば大樹」「集団主義」の日本人は、新聞テレビに従順なのだ。個人主義が確立していない。
これが文化になっている。
 困ったことに新聞は全国紙数社に限られている。そこがテレビも所有している。これでは独裁国の報道と変わらないだろう。しかも、その新聞テレビ報道を信用するという特性・弱点・恥部の日本人だ。
 地方の新聞は共同通信の報道でコントロールされている。テレビは中央の全国新聞傘下のテレビ局に組み入れられている。「新聞テレビが操作されている」という事実に気付くことが出来れば、日本の姿をかなり正確に分析出来るだろう。

7<金と権力に屈する新聞テレビ>
 日本の新聞テレビは、スポンサーである経済界・その中核である財閥資本にコントロールされている。政府と財界・財閥は一体関係にある。
 ここまで理解できれば、日本の姿が見えてくるだろう。これの基本構造はアメリカなど先進国でも当てはまる。9・11後のワシントンにおいて、報道の自由は消滅した。戦争反対派のジャーナリストは、活躍の場を失ってしまった。当時、そんなアメリカ人ジャーナリストの取材を受けた記憶がある。
 「日本には言論の自由があると思い、東京に来たが、東京にもなかった。これからどこに行けばいいのか」と、本心をさらけ出した。その厳しいジャーナリストの苦悩に応えることが出来なかった筆者であった。悔しい思い出となっている。
 「権力に屈するな」が宇都宮の叫びだったが、それは日本の新聞テレビへの警鐘でもあった。かつてNHKは、歴史認識にからむ報道で、安倍が官房副長官時代に圧力を受けて、あっさりと屈した。多くのジャーナリストが承知している事件だ。
 ことほど権力には弱い。金にはもっと弱い。筆者でさえも身近に気付かされた事件があるが、いずれ公開したい。広告スポンサーに対する報道は、それが広報宣伝であれば問題はないが、その逆だと出来ない。

8 <財閥支配の日本>
 結論を急ぐことにする。日本の支配者は財閥である。大企業ではない。大企業をたくさん所有している財閥である。財閥はたくさんの天下り官僚を受け入れている。日本の政策(立法)を作成して、永田町に送りつけている霞が関は、財閥の意向を受けて動いている。永田町ばかりに目を向けていた筆者が以前、知らなかったことである。日本国民の多くがまだ知らない。学者もジャーナリストも、とも決めつけていいだろう。外国の日本研究者は全く理解していない。
 ある特定の国を理解するためには、真っ先にその国の権力の源を知る必要がある。さすがにアメリカは、日本を占領した国だからよく知っている。CIA工作が、おおむね成功する理由なのだ。権力の源を分析出来なければ、民主主義を開花させることなど不可能である。このことについて誰ひとり指摘しない。知らないのだ。知っていても沈黙することで、生活基盤を確立しているキツネのような知識人ばかりの日本である。日本に民主主義が存在しない根源でもある。民意に従う政治経済社会の日本にする作業が、21世紀の最大の課題なのだ。3・11をその契機にしなければならない。「日本人はフランス革命をもう一度学ぶべきだ」との宇都宮遺言を覚えている。 =======================================================================

❸ 上脇博之氏との対話


櫻井 智志 様

教えてください。小沢一郎氏が安保条約を破棄しろと行ったという話は聞いたことがありませんが、「対米独立派」とは何でしょうか? 教えてください。以前、小沢一郎氏が、社会民主主義者であるかのようなご説明があったように記憶していますが、その場合の、「社会民主主義」の中身を教えてください。

小沢一郎氏が、対米独立派であること、社会民主主義者であることについて、具体的に事実を指摘して教えてください。

9条改憲論者、小選挙区論者も、「対米独立派」「社会民主主義者」なのか、教えてください。

なお、渡辺治先生が小沢一郎氏を社会民主主義と評したということですが、 いつ、どこで、そう評されたのか、教えてください。

急ぎませんので、時間に余裕のあるときに、宜しくお願いします。私は、すぐに返信できないかもしれませんので、御容赦ください。

上脇博之


上脇 博之様
いつもミクシイでもこちらでもお世話になっております。
護憲の側からの改憲阻止のブックレット出版など私にとり上脇先生は、先生と呼ぶに足る知識人として尊敬しております。
さて、今回のメールで少し異なることも入っているので腑分けしつつ以下に記します。
小沢一郎氏の対米従属路線からの自立派ということについては後から述べます。
小沢氏は「社会民主主義者」ではありませんし、私が以前に述べた記憶は自身異なります。この問題に関連して、私はある新書での分析を読んだ記憶がありますが、今自分の書棚を見ましたがみつかりませんでした。しかし、記憶はあるのでそれを書きます。
自民党政権から、民主党連立政権へ政権交代するときに、民主党内部では三つの潮流がありました。
新自由主義派、開発主義派、社会民主主義派。
民主党は、社会民主主義政党ではありません。
しかし、政権交代の頃に中堅層の人々が福祉や社会保障についての政策を立案しました。
小沢一郎は社会民主主義派ではなく、開発主義派と思います。
けれど鳩山首相やその前に民主党代表だった小沢一郎は、中堅スタッフが立案した政策を使って政権を運営しようとしました。
それはアメリカからの強力な懸念に基づく抑圧により、鳩山政権は徹底的な潰しにあいます。
その時に呼応して鳩山政権を潰す役割を果たしたのが、新自由主義派の前原、岡田、野田らの政治家でした。
さて、渡辺治氏は、小沢氏を社会民主主義とは評してはいません。私がどこかでそう書いたのなら、それは私の誤謬です。今現在、渡辺氏は、保守二大政党制のもくろみはいままで自民党と民主党であわせて七割を占めていたのが、昨年冬の総選挙で自民党と民主党をあわせて四割台となり保守二大政党から保守連合(維新の会、みんなの党を含めて)へと移らざるを得ない総選挙結果に陥っていると述べています。

これは福祉国家構想研究会での発言が動画で公開されています。 (以下参照)
-----------------------------
> 紅林進です。
> 昨日3月17日(日)、明治大学リバティタワーで開催されました
> 福祉国家構想研究会公開研究会「いま、対抗構想を考える!
> 安倍新政権の新自由主義構造改革とは何か」のユーストリーム
> 録画は下記サイトで観ることができます。
> 03.17福祉国家構想研究会公開研究会・前半
> http://www.ustream.tv/recorded/30034975
> 03.17福祉国家構想研究会公開研究会・後半
> http://www.ustream.tv/recorded/30034975#/recorded/30036783

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そこで渡辺氏は小沢氏を保守二大政党ブロックでのメンバーと見ています。

さて、最後に小沢氏が「対米従属路線でなく対米自主派」であるということについて。
参考になったのは孫崎享氏の『戦後史の正体』創元社2012年8月『アメリカに潰された政治家たち』小学館2012年9月です。
特に後者は具体的です。

第2章 田中角栄と小沢一郎はなぜ葬られたのか
2.最後の対米自主派、小沢一郎
この中で孫崎氏は、自らが外務省で情報担当の局長であったところから知り得たこともあっさりと書いています。p93~104
小沢氏は、アメリカの諜報機関でCIAではなく国防総省の情報局DIAという諜報機関が工作をしかけていた対象です。孫崎氏は言います。
「この時代(自民党幹事長で海部政権や橋本政権の時期-櫻井)の小沢一郎は、はっきり言えば『アメリカの走狗』と呼んでもいい状態で、アメリカ側も小沢を高く評価していたはずです。」p95~96
「1993年に出版してベストセラーになった小沢の『日本改造計画』では、抜本的な規制緩和を行うアメリカ的、新自由主義的な経済政策を主張していましたが、民主党に合流して以降は、地方経済と雇用を重視する政策に転換し、東北地方出身の議員だけを集めた東北議員連盟を結成しています。
 外交政策についても、対米従属から、中国、韓国、台湾などアジア諸国との連携を強めるアジア外交への転換を主張するようになりました。国連中心主義を基本路線とするのもこのころです。」(中略)「つまり、沖縄の在日米軍は不要だと明言したわけです。」 (p96~97)
小沢一郎氏は、対米従属主義でアメリカの諜報機関の対象であったのです。しかし、小沢氏自身が政治的に進化していくなかで、アメリカは小沢氏の変化を警戒して、徹底的に警戒していくように変わっていったのです。
 私も小沢氏を金権政治の対米従属主義者と思い込んでいました。そのような小沢氏の時期も確かにあったのです。自民党幹事長の頃には宮沢喜一、中曽根康弘をよびつけるだけの権力主義者でした。その頃に金権政治家とレッテルを貼られてもやむをえないでしょう。それが変わったとは多くの国民は、信じられません。イメージは定着して、ダメージへとダウンしていったのでしょう。

上脇先生、思わぬお手間をとらせました。私の立論の全貌はそのようなものなので、後はマイペースに戻り、改憲策動を学問的に明確にされたお仕事を推進なさってください。
いろいろ失礼な段がありましたら、ご寛恕ください。それでは、一応の返信とします。
またなにかわかったら、ご報告いたします。
櫻井 智志拝


櫻井 智志 様

以前、小沢一郎氏のことを書かれている文章の中で、以下のように書かれておりました。

民主党鳩山政権の政権交代には、交代前後には民主党内の三つの勢力のなかで中堅層をもとに社会民主主義をもとに福祉社会論の立場に立つひとびとが政策構想をリードしました。そのことは、渡辺治、孫崎享などの理論家も認めています。それが鳩山総理・小澤幹事長の民主党政権だったと思います。そしてそれが倒れたのは、アメリカからの強力な抑圧が働いたからだと私は考えています。

私は、「それが鳩山総理・小澤幹事長の民主党政権だった」を誤読したようですね。
大変失礼いたしました。

孫崎享氏の文献の紹介ありがとうございます。これと、小沢氏の政治的立場については、またの機会に。

取り急ぎ、お詫びまで。

上脇博之


上脇 博之さま

率直な内容のご返信に、頭がさがる思いが致します。
私の小沢一郎観は、鳩山政権が崩壊する前後までの政局を見ていて自分で考えたものです。
しかしながら、孫崎享氏の著作が影響力としてありますね。

『日本人のための戦略的思考入門-日米同盟を超えて』2010年祥伝社新書
『日本の国境問題-尖閣・竹島・北方領土』2011年ちくま新書
『戦後史の正体』2012年創元社2012年創元社
『アメリカに潰された政治家たち』2012年小学館
『日本の「情報と外交」』2013年PHP新書
*この本は2009年にPHP研究所から出た単行本『情報と外交』を改題したものです。

以上の著書を購読しました。ただし、読了したのは、『戦後史の正体』『日本の「情報と外交」』だけです。
私は芝田進午氏の著作は編著作以外の著書は全部もっています。そして購読してすぐに一気にラインをひきながら、読了しました。
孫崎氏の著作は、芝田氏の著作のようには読めません。それが私の年齢による気力体力の変化なのかわかりません。
孫崎氏については、世間では評価がわかれています。
私自身は、尊敬する医師にして研究者であり社会運動家でもある色平哲郎氏が孫崎氏を支持していることで私も孫崎氏をよく読むところがあります。
孫崎氏は、三木武夫総理を対米従属派とみなしています。
納得がいかない私は、三木武夫は対米従属派以外の護憲などの側面はなかったでしょうか、とツイッターで直接孫崎氏に質問しました。
孫崎氏は、「私は他の面もあるでしょうが、対米従属の関係を最重要視しています」と返信をくださいました。私は感銘をうけました。

孫崎氏の略歴も参考となります。
東大法学部中退で外務省に入省しています。イギリスに二回、ソ連に二回、アメリカにはハーバード大学留学、イラク、カナダ勤務を経て、情報局分析課長
駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授七年間。

本来なら官僚の出世コースを経て、体制側の要職を務めて自民党など保守政党の国会議員などをのぼりつめるコースです。
孫崎氏の特色は、実際の国際政治の第一線にたち、政治のダイナミクスを熟知しています。一本調子ではなく現実分析は追随を許さぬものがあります。
通説と異なり、大胆な理論派です。岸信介に対する評価などは、評価がわかれるでしょう。しかし、孫崎氏によって国民が得るところも大です。

時間の経過は孫崎氏または小澤氏についての実態を明確にしていくでしょう。
私は私の考えが正しいとか、的確だとか思っているわけではありません。
私の孫崎観は変わらないと思いますが、小沢観は一度転換しています。
週刊金曜日創刊第三号の投書欄にとくとくと投稿した文章が、その後大きく揺らぎ小沢観を変えざるを得ないと判断した時に、自らの意見は合理的根拠が発生したら変えざるを得ないことに自信を失いました。でも考えてみれば、私は自らの地位や評価などを気にする立場にはありません。
自らが納得するところにしたがって、言動を選択することを私の立論の土台としています。
それは、古在由重氏が日本共産党から除籍された時もそうでした。
古在氏と日本共産党の創造的な側面とを同一にとらえていた私は、古在氏除籍問題について疑問に思い、悩み、文通させていただいていた芝田氏に自分の憤りを記しました。
芝田氏は、おだやかにこう記されました。
私よりは芝田氏のほうが年長で判断する経験的蓄積をもっていること、古在氏と共産党とのかかわりでいくつかの公表されていない事実もあること。
その返信を読み、私はこう考えました。
この問題は多面的複合的要素をもつから、簡単に断定できないということ。
しかし、すべてを知り得ない私は、古在氏を擁護する執筆を続けようと思ったこと。そしてそのように行動しました。
芝田先生は、そのような文筆を続ける私に、今までと少しも変わらぬ態度で接して、生涯私に対するあたたかなご指導をくださいました。
そのような芝田氏を「偲ぶ会」で友人代表として挨拶された上田耕一郎氏は芝田氏は党員50年の永続党員であったことを公開の席上で述べられました。
私は芝田進午氏が日本共産党員であったことを、共産党のひとつの事実としてふまえるべきだと思いました。
芝田先生のようなすぐれた知識人も共産党の一員であったことを十二分に踏まえて日本共産党のことをまっこうから正面からうげとめないと、あいまいな共産党批判はそうとうな誤謬を犯すと想い至ったのでした。

脱線して長くなりました。
今後もどうぞよろしくご指導をお願い申しあげます。

《了》

小沢一郎氏への強権的特捜を斬る 2013 櫻井智志

2018-12-25 16:03:13 | 政治・文化・社会評論

はじめに

 この評論は、いまから5年ほど前の論考である。なぜ今頃掲載したか。現在の反専制安倍政権にとりくむ小沢一郎氏を、自民党幹事長当時に批判していた私が見直した由来を明確にし、民主党創立ころから、国民側の政治家として身を賭して闘う姿に共感を持っているゆえにである。
 


【第一部】小沢一郎氏への強権的特捜を斬る 2013.3.20


 小沢一郎氏の秘書を務めていた現職の国会議員が、政治資金規正法違反により逮捕された。自民党や公明党、共産党は、徹底した政治資金に関する説明を、今度の国会で追及する構えを見せている。

 私は、別の二つの視点からこの問題を考えたい。日本の国政は、表面の政治とは別に、多額のカネを使用することで政治の流れを形成してきた。市町村から国政に至るまで、選挙には莫大な資金を必要とする。落選してしかも法定得票に達しなければ、多額のカネを支払わねばならな
い。また、当選するには、法律に定められた規定内でも、莫大な資金を必要とする。

 この視点からすれば、長らく自民党の幹事長など要職を務めた経験のある小沢一郎氏が、庶民には考えられないほどの多額の政治的金銭と関わりがあったことは容易に推測できる。

 しかし、問題は、政治の資金が政治資金規正法の枠を超えたかどうかだけにとどまってはいない。二つ目の視点とは、民主党連立政権の樹立による自公政権の打倒と新しい政権が、どのような国政再建の行政をなし得るかどうかにある。

 政権発足以来、鳩山首相は、今までの自民党政治とは異なる手法で政治に取り組んできた。たどたどしさや民主党内部の意見の相違や連立政党同士の調整などがあって、決して一直線に改善されたとは言えないまでも、あの自公政権の時期とは異なる政治の風穴が感じられるようになってきた。
 しかし、民主党には様々な動きがある。今回の小沢氏周辺の逮捕は、自らの幹事長休職の意向表明(2010年1月16日現在)など新たな波紋を呼びつつある。

 私見によれば、巨大な自公政権の打倒のためには、小沢氏のような権力中枢に居たことのある小沢氏のようなマキャベリストの働きがなかったら、かなわなかったことも多くあったであろう。通常国会開始から始まる今夏の参院選へと一気に連なる政治の季節直前に、小沢氏を強い力で牽制することには、明確な政治的意図が感じられる。もちろん、そうはいっても、小沢氏が護憲と平和を守る政治家であるとは言えない。
 一説には、国会での内閣法制局長官の答弁禁止は、単なる官僚の国会答弁禁止と同じではなく、これから憲法改悪にむけて、現憲法の外堀である教育基本法改悪に続き、さらに憲法改悪を行い易くするひとつの手立てとなるだろうと言われている。民主党連立政権は、社民党が入ったことで、護憲の重しもあるけれども、肝心の民主党は憲法護憲よりも改憲にウェィトがある。小沢氏も護憲政治家ではない。
 だが、国民は、民主党連立政権を、自公政権時の安部晋三政権のような明確な反動的な国家主義政権とは異なる政権として、政治に期待を持たせている。それが改憲政治家の鳩山氏や小沢氏を、軍国主義ではなく、民主主義に軸足を置かせる結果ともなっている。

 これから東京地検特捜部が、小沢氏を逮捕や起訴するようであれば、民主党連立政権の政治的求心力は低下するかもしれない。その時、民主党と自民党の内外の政治家たちは、右往左往して分裂と融合をきたし、いわゆる政界再編成が起こるだろう。それが、社民党排除となって二大反動政党ができることも考えられる。憲法改憲をよしとする政治家たちが、国会の三分の二を占めることは確実であろう。
 その時、日本の政界は、容易にアメリカ軍部の意向を容認する政権に占められる。今回の小沢氏を揺さぶる捜査は、そのような政治的背景と連動していることが危惧される。それゆえに、私は、「現在」の民主党連立政権の立役者である小沢幹事長をめぐる政治的圧力に、傍観者として沈黙してはいられない。一連のプロセスの流れの中で、情勢を把握せず、政治家はクリーンなカネの使い手でなければならないと、当たり前のことをオウム返しに反復するだけでは、いまの危機的政治状況の解決策にはなるまい。

 アメリカ政府との米軍基地の移転問題と参院選に連動する通常国会直前に、平和と国民生活保護、雇用と社会福祉を前進させるための国民の意思を国会に反映させなければならない。資金規正問題で、政党の政争に明け暮れたままでは、日本社会はますます崩壊の度合いを強めるしかない。


【第二部】 再論・「小沢一郎」という政治思想 2013.3.22

櫻井智志です。
以下の文章で、回答1の最後に(後略)としました。
石井さんと上脇さんのやりとりを拝見していて、事実とずれた方向にどんどん進んでいくのに、一応最初に問題提起した者の責任としてもそのまま黙過することができません。
(後略)の後に、新たに書き加えます。
----- Original Message -----
>> From: 櫻井 智志
>> To: civilsocietyforum21@yahoogroups.jp
>> Date: 2013-03-21 10:03:15
>> Subject: Re: [civilsocietyforum21] 「小沢一郎」という政治思想問題

>> 櫻井智志です。
>> 回答1
>> 孫崎享氏の『アメリカに潰された政治家たち』p97.98に以下の叙述があります。
>> この発言の時小沢氏は、細川政権を経て新進党、自由党と新党を結成しながら2003年に民主党に合流しています。1993年の『日本改造計画』では新自由主義的な経済政策を主張していましたが、民主党に合流してからは、地方経済と雇用を重視する政策に転換し、「東北議員団連盟」を結成しています。外交政策についても対米従属からアジア諸国との連携を強めるアジア外交への転換を主張、「国連中心主義」を基本路線とするのもこのころです。
>> --------------------------------
>>  小沢一郎は、09年2月24日に奈良県香芝市で、
>> 「米国もこの時代に前線に部隊を置いておく意味はあまりない。軍事戦略的に米国の極東におけるプレゼンスは第七艦隊で十分だ。あとは日本が自らの安全保障と極東での役割をしっかり担っていくことで話がつくと思う。米国に唯々諾々と従うのではなく、私たちもきちんとした世界戦略を持ち、少なくとも日本に関係する事柄についてはもっと役割を分担すべきだ。そうすれば米国の役割は減る」
>> と記者団に語っています。つまり米国の在日米軍は不要だと明言したわけです。
>>  この発言を、朝日、読売、毎日など新聞各紙は一斉に報じます。『共同通信』(09年2月25日)の配信記事「米総領事『分かってない』と批判  小沢氏発言で』では、米国のケビン・メア駐沖縄総領事が記者会見で、「『極東における安全保障の環境は甘くない。空軍や海兵隊などの必要性を分かっていない』と批判し、陸・空軍や海兵隊も含めた即応態勢維持の必要性を強調した」と伝えています。アメリカ側の主張を無批判に垂れ流していたのです。
>>  この発言が決定打になったのでしょう。非常に有能だと高く評価していた政治家が、アメリカ離れを起こしつつあることに、アメリカは警戒し、行動を起こします。(後略)
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【出典:引き続き孫崎享氏の『アメリカに潰された政治家たち』を要約・引用したものです】
 小沢氏の上記の発言から、一か月も経たない2009年3月3日、小沢一郎の資金管理団体「陸山会」の会計責任者で公設秘書をも務める大久保隆規と、西松建設社長の國澤幹雄ほかが、政治資金規正法違反で逮捕される事件が起きたのです。小沢の公設秘書が西松建設から2002年からの4年間で3500万円の献金を受け取ってきたが、虚偽の記載をしたという容疑です。

 しかし、考えてもみてください。実際の献金は昨日今日行われたわけではな、3年以上も前の話です。第七艦隊発言の後に「たまたま」検察が情報をつかんだのでしょうか。
私(注-孫崎氏のこと)にはとてもそう思えません。
 アメリカの諜報機関のやり口は、情報をつかんだら、いつでも切れるカードとしてストックしておくというものです。ここぞというときに検察にリークすればいいのです。

 この事件により、小沢一郎は民主党代表を辞任することになります。しかし、小沢は後継代表に鳩山由起夫氏を担ぎ出します。選挙にはやたらと強いのが小沢であり、2009年9月の総選挙では、「政権交代」の風もあり、民主党を圧勝させ、鳩山由起夫政権を誕生させます。ここで小沢は民主党幹事長に就任しました。
 ここから小沢はアメリカに対して真っ向から反撃に出ます。
 鳩山と小沢は、政権発足とともに「東アジア共同体構想」を打ち出します。対米従属から脱却し、成長著しい東アジアに外交の軸足を移すことを堂々と宣言したのです。さらに、小沢は2009年12月、民主党議員143名と一般参加者483名という大訪中団を引き連れて、中国の胡錦濤主席を訪問。宮内庁に働きかけて習近平副主席と堪能陛下の会見もセッティングしました。
 沖縄の米軍基地を「最低でも県外」に移設することを宣言し、実行にうつそうとします。
 しかし、「在日米軍基地の削減」と「対中関係で先行すること」はアメリカの”虎の尾”です。これでアメリカが怒らないはずがないのです。
その後、小沢政治資金問題は異様な経緯を辿っていきます。
 事件の概要は煩雑で、新聞などでもさんざん報道されました。私(孫崎氏)が異様だと感じたのは、検察側が2010年2月に証拠不十分で小沢を不起訴処分にしていることです。結局、起訴できなかったのです。もちろん、法律上は「十分な嫌疑があったので逮捕して、捜査しましたが、結局不起訴になりました」というのは問題ないのかもしれません。 しかし、検察が民主党の党代表だった小沢の秘書を逮捕したことで、小沢は党代表を辞任せざるをえなくなったのです。この逮捕がなければ、民主党から出た最初の首相が畑山由起夫ではなく、小沢一郎になっていた可能性が極めて高かったと言えます。小沢首相の誕生を検察が妨害したということで、政治に対して検察がここまで介入するのは、許されることではありません。
 小沢は当初から「国策捜査だ」「不公正な国家権力、検察権力の行使である」と批判してきましたが、現実にその通りだったのです。
 この事件には、もう一つ不可解な点があります。検察が捜査しても証拠不十分だったため不起訴になった後、東京第5検察審議会が審査員11人の全会一致で「起訴相当」を議決。検察は再度捜査しましたが、起訴できるだけの証拠を集められず、再び不起訴処分とします。それに対して検察審査会は2度目の審査を実施し「起訴相当」と議決し、最終的に「強制起訴」にしているところです。
 検察は起訴できるだけの決定的な証拠をまったくあげられなかったにもかかわらず、マスコミによる印象操作で、無理やり起訴したとの感が否めないのです。これではまったく中世の魔女裁判のようなものです。
**この後孫崎氏は、東京地検特捜部とアメリカの歴史的な深いかかわりをしるし、1947年の米軍による占領時代に発足した「隠匿退蔵物資事件特捜部」という組織が東京地検特捜部の前身であり、特捜部長の中にはゾルゲ事件の担当検事だった布施健氏がいて、後に検事総長になって数々の問題があったことも書いていますが、ここでは長文になりますので割愛します。なお、ここまでの記述箇所には私はほぼ孫崎享氏の言説に賛成する立場で引用しています。