櫻井 智志
構成
➀(新聞紙面から)安保法違憲訴訟 原告敗訴 札幌 全国22地裁で初判決
②【社説】安保法制判決 何も答えぬ司法に失望
③(紙面から)安保法初適用 自衛隊MFO(「多国籍軍・監視団」)幹部2人に防衛相辞令
④安保法廃止法案を提出 参院 5野党、共闘政策の柱
➄私見
Ⅰ:(新聞紙面から)安保法違憲訴訟 原告敗訴 札幌 全国22地裁で初判決
2019年4月23日【社会】面
この記事は電子版では発見できなかったが、同日に、社説は次のように明確に見解を述べている。
Ⅱ:【社説】安保法制判決 何も答えぬ司法に失望
2019年4月23日
健全な司法か。「安全保障法制は違憲」と訴えた訴訟の全国初の判決が札幌地裁であった。だが、「訴えの理由がない」と原告敗訴。原告や証人の尋問も認めず、一刀両断する司法には失望する。
集団的自衛権の行使を可能にした安全保障法制は憲法に反するのではないか-。多くの国民が抱いた疑問だ。長く日本政府が個別的自衛権のみを認め、「集団的自衛権の行使はその枠を超え、憲法上、認められない」と国民に説明してきたからだ。明らかに矛盾している。
原告四百人余りは国家賠償を求める形で訴訟を起こした。平和的生存権の侵害による精神的苦痛などを理由とした。だから、原告たちには法廷で語らせないと、苦痛への理解は深まらない。証人尋問をしてこそ、裁判官も事実の認定ができるはずである。それらを排斥し、強引に審理を打ち切ったのは、乱暴である。原告の弁護団が「司法権力の乱用だ」と反発したのも理解できる。
判決では「不安は抽象的」「自衛隊の海外派遣の蓋然(がいぜん)性はいまだ低い」などとの言葉が並んだ。しかし、この訴訟の核心は法律そのものが違憲か否かという点だ。
政府答弁の矛盾に加え、安保法制の合憲性の裏付けとしている「砂川判決」にも致命的な問題がある。駐留米軍に関する一九五九年の最高裁判例である。ここで確かに固有の自衛権を持つと明示した。だが、あくまで個別的自衛権であるのは常識である。集団的自衛権はここでは全く問題になっていない。さらに判例には「一見極めて明白に違憲」ならば、行政行為を「無効」とできると踏み込んだ表現もある。だから、裁判官は「一見極めて明白に違憲」かどうかのチェックが求められるのではないだろうか。
憲法との整合性への検討が全く見られない。むしろ判断を回避する理屈を駆使しているように感じる。司法に期待される役割の放棄とも受け止める。自衛隊のイラク派遣訴訟で、二〇〇八年に名古屋高裁は「平和的生存権は基本的人権の基礎で、憲法上の法的な権利」と認めた。今回はそれを「具体的な権利と解せない」と後退させた。納得できない。
判決の根底には、司法は政治的問題に関わりたくないという消極姿勢がありはしないか。あと全国二十四の裁判所の判断が残る。三権分立の基本を踏まえれば、司法権こそ個人の権利侵害の訴えに誠実に向き合うべきだ。
Ⅲ:(紙面から)安保法初適用 自衛隊MFO(「多国籍軍・監視団」)幹部2人に防衛相辞令
(略)
「新任務の規制事実化」明治大学特任教授纐纈(こうけつ)厚氏に聞く
―派遣の意味は。
「中東の平和と安定に日本が貢献することは必要だ。だが、エジプトとイスラエルの軍事衝突の恐れは現在ほぼなく、MFOの役割も形骸化しっつある。派遣には、安保法の実績を重ねて自衛隊の新任務を既成事実化するとともに、海外での自衛隊の存在感を高めたい安倍政権の政治判断があったのではないか」(後略)
Ⅳ:安保法廃止法案を提出 参院 5野党、共闘政策の柱
2019年4月23日 朝刊
立憲民主、国民民主、共産、自由、社民の野党五党は二十二日、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法を廃止するための法案を参院に共同提出した。夏の参院選に向け、安倍政権への対立軸として違憲との批判が根強い安保法制の廃止を掲げ、野党共闘の基本政策の柱とする。
安保法の廃止法案は、二〇一六年三月の同法施行に先立ち、同年二月に当時の民主、共産、維新、社民、生活の野党五党が衆院に共同提出したが、審議されないまま一七年九月の衆院解散で廃案となった。今回は再提出で、関連法を安保法制定前の状態に戻す内容。
一六年七月の参院選では廃止法案を提出した野党五党のうち維新を除く四党が三十二の改選一人区全てに統一候補を擁立し、十一選挙区で勝利した。
法案提出後の記者会見で国民の大野元裕氏は「参院選を前に、野党として統一した歩調をしっかりと打ち出すのが目的」と説明。立民会派の小西洋之氏も「他の野党と提出するのは、参院選前の野党共闘の観点からも大変重要で意義深い」と同調した。 (村上一樹)
Ⅴ:私見
このような一連の流れを頭の中でぼおーっと考えながら、仕事の帰途、駅売りの夕刊フジのトップに『安保法廃棄5野党狂走』の見出しが飛び込んできた。その記事には、大和大学政治経済専任講師岩田厚氏の文章「5野党のあきれた安保法廃止法案提出」が掲載されている。 雑誌『世界』や『週刊金曜日』の読者は読まなくとも、スポーツ、芸能情報から風俗情報、セクシャルな記事・写真の掲載されている夕刊紙を仕事帰りのサラリーマンはさらっと飛ばし読みしつつ、いつの間にか、<野党はあきれたことやってる・・・>と情報は無意識に沈殿していく。
野党の共闘が「安保法廃止」法案を提出したことは、きわめて貴重な行動である。小泉純一r郎内閣・安倍内閣は、連続して、中東への介入を契機に軍事立法と莫大な軍事兵器製造・米国からの爆買いに膨大な膨張予算を展開してきた。
国内は政府決定にノー!と意思表示するものをことごとく潰しにかかる。政治団体、政党、報道局、ジャーナリスト、芸能人、音楽家。政府が危険とマークした人物には、別件で追い落とすためのネタ探しにカメラマンから公安刑事まで監視の目を光らせている。
まさに、社会の表層での異変にとどまらない。日本の社会の仕組み全体の構造が変形し歪み崩れていく状態になっている。その根源は、日本社会の軍事システムへの無理矢理の強制移行にある。
安倍自民党政権の即時退陣が要求される。同時に、日本の社会の構造、社会経済構成体の歪みを少しずつでもただしていく政治家や政党でなけtれば、なんら安倍自民党政権と本質は変わらない。
改めて言うが、5野党共同の【安保法案廃止法案】は、軍事社会に坂を転がる勢いの 日本国を救う需要な問題提起である。―了―
構成
➀(新聞紙面から)安保法違憲訴訟 原告敗訴 札幌 全国22地裁で初判決
②【社説】安保法制判決 何も答えぬ司法に失望
③(紙面から)安保法初適用 自衛隊MFO(「多国籍軍・監視団」)幹部2人に防衛相辞令
④安保法廃止法案を提出 参院 5野党、共闘政策の柱
➄私見
Ⅰ:(新聞紙面から)安保法違憲訴訟 原告敗訴 札幌 全国22地裁で初判決
2019年4月23日【社会】面
この記事は電子版では発見できなかったが、同日に、社説は次のように明確に見解を述べている。
Ⅱ:【社説】安保法制判決 何も答えぬ司法に失望
2019年4月23日
健全な司法か。「安全保障法制は違憲」と訴えた訴訟の全国初の判決が札幌地裁であった。だが、「訴えの理由がない」と原告敗訴。原告や証人の尋問も認めず、一刀両断する司法には失望する。
集団的自衛権の行使を可能にした安全保障法制は憲法に反するのではないか-。多くの国民が抱いた疑問だ。長く日本政府が個別的自衛権のみを認め、「集団的自衛権の行使はその枠を超え、憲法上、認められない」と国民に説明してきたからだ。明らかに矛盾している。
原告四百人余りは国家賠償を求める形で訴訟を起こした。平和的生存権の侵害による精神的苦痛などを理由とした。だから、原告たちには法廷で語らせないと、苦痛への理解は深まらない。証人尋問をしてこそ、裁判官も事実の認定ができるはずである。それらを排斥し、強引に審理を打ち切ったのは、乱暴である。原告の弁護団が「司法権力の乱用だ」と反発したのも理解できる。
判決では「不安は抽象的」「自衛隊の海外派遣の蓋然(がいぜん)性はいまだ低い」などとの言葉が並んだ。しかし、この訴訟の核心は法律そのものが違憲か否かという点だ。
政府答弁の矛盾に加え、安保法制の合憲性の裏付けとしている「砂川判決」にも致命的な問題がある。駐留米軍に関する一九五九年の最高裁判例である。ここで確かに固有の自衛権を持つと明示した。だが、あくまで個別的自衛権であるのは常識である。集団的自衛権はここでは全く問題になっていない。さらに判例には「一見極めて明白に違憲」ならば、行政行為を「無効」とできると踏み込んだ表現もある。だから、裁判官は「一見極めて明白に違憲」かどうかのチェックが求められるのではないだろうか。
憲法との整合性への検討が全く見られない。むしろ判断を回避する理屈を駆使しているように感じる。司法に期待される役割の放棄とも受け止める。自衛隊のイラク派遣訴訟で、二〇〇八年に名古屋高裁は「平和的生存権は基本的人権の基礎で、憲法上の法的な権利」と認めた。今回はそれを「具体的な権利と解せない」と後退させた。納得できない。
判決の根底には、司法は政治的問題に関わりたくないという消極姿勢がありはしないか。あと全国二十四の裁判所の判断が残る。三権分立の基本を踏まえれば、司法権こそ個人の権利侵害の訴えに誠実に向き合うべきだ。
Ⅲ:(紙面から)安保法初適用 自衛隊MFO(「多国籍軍・監視団」)幹部2人に防衛相辞令
(略)
「新任務の規制事実化」明治大学特任教授纐纈(こうけつ)厚氏に聞く
―派遣の意味は。
「中東の平和と安定に日本が貢献することは必要だ。だが、エジプトとイスラエルの軍事衝突の恐れは現在ほぼなく、MFOの役割も形骸化しっつある。派遣には、安保法の実績を重ねて自衛隊の新任務を既成事実化するとともに、海外での自衛隊の存在感を高めたい安倍政権の政治判断があったのではないか」(後略)
Ⅳ:安保法廃止法案を提出 参院 5野党、共闘政策の柱
2019年4月23日 朝刊
立憲民主、国民民主、共産、自由、社民の野党五党は二十二日、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法を廃止するための法案を参院に共同提出した。夏の参院選に向け、安倍政権への対立軸として違憲との批判が根強い安保法制の廃止を掲げ、野党共闘の基本政策の柱とする。
安保法の廃止法案は、二〇一六年三月の同法施行に先立ち、同年二月に当時の民主、共産、維新、社民、生活の野党五党が衆院に共同提出したが、審議されないまま一七年九月の衆院解散で廃案となった。今回は再提出で、関連法を安保法制定前の状態に戻す内容。
一六年七月の参院選では廃止法案を提出した野党五党のうち維新を除く四党が三十二の改選一人区全てに統一候補を擁立し、十一選挙区で勝利した。
法案提出後の記者会見で国民の大野元裕氏は「参院選を前に、野党として統一した歩調をしっかりと打ち出すのが目的」と説明。立民会派の小西洋之氏も「他の野党と提出するのは、参院選前の野党共闘の観点からも大変重要で意義深い」と同調した。 (村上一樹)
Ⅴ:私見
このような一連の流れを頭の中でぼおーっと考えながら、仕事の帰途、駅売りの夕刊フジのトップに『安保法廃棄5野党狂走』の見出しが飛び込んできた。その記事には、大和大学政治経済専任講師岩田厚氏の文章「5野党のあきれた安保法廃止法案提出」が掲載されている。 雑誌『世界』や『週刊金曜日』の読者は読まなくとも、スポーツ、芸能情報から風俗情報、セクシャルな記事・写真の掲載されている夕刊紙を仕事帰りのサラリーマンはさらっと飛ばし読みしつつ、いつの間にか、<野党はあきれたことやってる・・・>と情報は無意識に沈殿していく。
野党の共闘が「安保法廃止」法案を提出したことは、きわめて貴重な行動である。小泉純一r郎内閣・安倍内閣は、連続して、中東への介入を契機に軍事立法と莫大な軍事兵器製造・米国からの爆買いに膨大な膨張予算を展開してきた。
国内は政府決定にノー!と意思表示するものをことごとく潰しにかかる。政治団体、政党、報道局、ジャーナリスト、芸能人、音楽家。政府が危険とマークした人物には、別件で追い落とすためのネタ探しにカメラマンから公安刑事まで監視の目を光らせている。
まさに、社会の表層での異変にとどまらない。日本の社会の仕組み全体の構造が変形し歪み崩れていく状態になっている。その根源は、日本社会の軍事システムへの無理矢理の強制移行にある。
安倍自民党政権の即時退陣が要求される。同時に、日本の社会の構造、社会経済構成体の歪みを少しずつでもただしていく政治家や政党でなけtれば、なんら安倍自民党政権と本質は変わらない。
改めて言うが、5野党共同の【安保法案廃止法案】は、軍事社会に坂を転がる勢いの 日本国を救う需要な問題提起である。―了―