メディア・安倍政権・ジャーナリスト
櫻井 智志
【孫崎享のつぶやき】
鳥越俊太郎「メディアが政治をチェックするのでなく、政治がメディアをチェックする時代になった。安倍さんは批判に耐えられない異常な体質」
2016-04-06 06:553
鳥越俊太郎はもともと毎日新聞の記者。1988年4月、サンデー毎日編集長。1989年8月に毎日新聞社を退職し、テレビ朝日『ザ・スクープ』の司会に就任。テレビ朝日『スーパーモーニング』のレギュラーアンカー等を経る。『月刊マスコミ市民』2016年 4 月号は、鳥越俊太郎「安倍政権下におけるメディア」を掲載した所、その抜粋。
・安倍政権は、自分への批判に神経を尖らせ、露骨にメディアに介入してきました。官邸ではすべての報道番組を細かくチェックすると同時に、メディアのトップと会食を頻繁に重ねています。
・今の安倍政権はテレビ局の上部にプレッシャーをかけて現場に降ろしていくやり方です。現場では、最初はおかしいと思っても、このまま続けるとまずいと感じるようになり、自粛と萎縮が進んでいます。
・この3月で報道ステーションの古舘さんが降り、ニュース23の岸井さんが降り、クローズアップ現代の国谷さんが降ります。民放もNHKも日本のテレビ局はこれから先、安倍政権を正面から批判する番組はなくなると思います。
暫くは政権を強く批判したり、間違っていることを厳しく指摘する言論は、放送では封殺に近い形になるのは間違いないと思います。コメンテーターにしても、安倍政権を批判する人は使われません。まずアンカーマンがはずされ、キャスターがはずされ、コメンテーターも淘汰されていくでしょう。
・日本のメディアは宣伝とまではいかなくとも、都合の悪いことは言いませんね。
・一応は権力に是々非々で臨んでいたTBSテレビとテレビ朝日が「是々」の部分だけを言って、「非々」をあまり言わなくなりました。
・NHKは本当に変わりました。安倍さんがまだ一国会議員の時に従軍慰安婦の問題でNHKに介入しましたが、あの時の経験が生きていると思うのです。政治の力で介入すれば、一時は抵抗できても、最終的には権力構造の中で政治が勝つことを学んだのです。僕はそれが突破口だったと思います。
・安倍政権になってからは、あからさまにメディアチェックを始めました。自民党政権といえども、これまではそんな露骨なことはしませんでした。
・政権に都合の悪いことを書かれると支持率が落ちますので、自民党は体験してメディアに欠かせないことを学んだのです。これに対してメディアは何もできません。
・日本のメディア経営者の頭にあるのはジャーナリズムではなくて、いかに会社の経営をうまくやるかです。それぐらい日本のメディアの世界は腐っています。
・日本の新聞は一九〇〇年代の終わり頃から、朝日、毎日、東京などのリベラルグループと産経・読売、日経のライトウィングに二分されました。そうした中で朝日は一応リベラルのリーダーとして位置を保っていましたが、従軍慰安婦問題で狙い打たれ、ガタガタに崩されました。かつての朝日のリベラリズムの気概は、薄くなってきたのでないでしょうか。
・安倍さんの国会答弁を見ていても、自分に対する批判を受け止められないのがよくわかります。同じように、メディアが自分の言動を批判的に報じることに耐えられない、そういう異常な体質なのです。今までの歴代総理でそんな人はいませんでしたね。
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私見
①「官邸ではすべての報道番組を細かくチェックすると同時に、メディアのトップと会食を頻繁に重ねています。」
②「一応は権力に是々非々で臨んでいたTBSテレビとテレビ朝日が「是々」の部分だけを言って、「非々」をあまり言わなくなりました。」
③「朝日は一応リベラルのリーダーとして位置を保っていましたが、従軍慰安婦問題で狙い打たれ、ガタガタに崩されました。かつての朝日のリベラリズムの気概は、薄くなってきたのでないでしょうか。」
いずれも鳥越俊太郎氏の見解である。私はTBSNEWS23に注目してきた。岸井アンカーは最終番組まで権威におもねず、権力に屈しない見解を示しつづけた。かわりに朝日新聞社から政治部長など歴任された星浩氏がTBSNEWS23のキャスターとして入った。
星浩氏は、「人情派キャスター」のTBSの宣伝どおりおだやかで率直な人柄とお見受けした。ウィキペディアで検索して、驚いた。
④「(師資相承の)大先輩と2人1組で、朝日・讀賣・毎日新聞各社の計6人からなる『コラムニストの会』というグループがあって、星はそのメンバーであり、総理大臣や各党の党首や役所の次官などと会食していると大阪のラジオ番組で明かした[7]。(脚注の〔7〕 衆議院解散総選挙はいつ?政局を占う(2009/05/26〜05/30放送) ニュース探偵局 - ABCラジオ。)
星氏がどの総理の時に一緒に会食していたか、それは定かではない。だが、朝日の筑紫哲也氏や本多勝一氏が総理と会食していたら、あの気骨あるジャーナリストとしての仕事をなしえなかっただろう。
テレビ朝日の報道ステーションは、久米宏、古館伊知郎と両氏ともに反骨のキャスターぶりだった。古館氏は交代直前は、批判的なとらえかたが多かった。しかし、しだいに市民運動が反原発運動の官邸前抗議など高まるにつれて、丁寧に報道した。今後若手アナウンサーの富川悠太氏がかわるが、私はこのアナウンサーは古館氏を継承するよりも、テレ朝経営陣の意向で動くマリオネットとしてしか動かないと思う。「報道ステーションが変わる」と宣伝しているが、どんなふうに変わるのかが大事であり、反骨精神を変える内容となるだろう。
TBSnews23も、交代後見ているが、予想通り岸井=膳場の報道精神は、換骨奪胎されている。4月6日、福岡高裁宮崎支部は、川内原発の原発停止を認めず、住民の抗告を退けた。この判決について、news23はどういうふうに番組全体の構成の中で報道しどのように論評するか。それを以て、「新しい」news23の視聴を続けるかどうかを決めたいと私は考えている。
それらの番組がどう変わろうと、戦後70年たって、日本の現代民主主義は、左翼にとどまらず、国民全体各層におよぷ浸透を見せている。アメリカ軍産複合体と組んだ安倍晋三の両者がどうあろうと、彼らを取り巻く海外と日本の民衆は、それほどやわではない。
櫻井 智志
【孫崎享のつぶやき】
鳥越俊太郎「メディアが政治をチェックするのでなく、政治がメディアをチェックする時代になった。安倍さんは批判に耐えられない異常な体質」
2016-04-06 06:553
鳥越俊太郎はもともと毎日新聞の記者。1988年4月、サンデー毎日編集長。1989年8月に毎日新聞社を退職し、テレビ朝日『ザ・スクープ』の司会に就任。テレビ朝日『スーパーモーニング』のレギュラーアンカー等を経る。『月刊マスコミ市民』2016年 4 月号は、鳥越俊太郎「安倍政権下におけるメディア」を掲載した所、その抜粋。
・安倍政権は、自分への批判に神経を尖らせ、露骨にメディアに介入してきました。官邸ではすべての報道番組を細かくチェックすると同時に、メディアのトップと会食を頻繁に重ねています。
・今の安倍政権はテレビ局の上部にプレッシャーをかけて現場に降ろしていくやり方です。現場では、最初はおかしいと思っても、このまま続けるとまずいと感じるようになり、自粛と萎縮が進んでいます。
・この3月で報道ステーションの古舘さんが降り、ニュース23の岸井さんが降り、クローズアップ現代の国谷さんが降ります。民放もNHKも日本のテレビ局はこれから先、安倍政権を正面から批判する番組はなくなると思います。
暫くは政権を強く批判したり、間違っていることを厳しく指摘する言論は、放送では封殺に近い形になるのは間違いないと思います。コメンテーターにしても、安倍政権を批判する人は使われません。まずアンカーマンがはずされ、キャスターがはずされ、コメンテーターも淘汰されていくでしょう。
・日本のメディアは宣伝とまではいかなくとも、都合の悪いことは言いませんね。
・一応は権力に是々非々で臨んでいたTBSテレビとテレビ朝日が「是々」の部分だけを言って、「非々」をあまり言わなくなりました。
・NHKは本当に変わりました。安倍さんがまだ一国会議員の時に従軍慰安婦の問題でNHKに介入しましたが、あの時の経験が生きていると思うのです。政治の力で介入すれば、一時は抵抗できても、最終的には権力構造の中で政治が勝つことを学んだのです。僕はそれが突破口だったと思います。
・安倍政権になってからは、あからさまにメディアチェックを始めました。自民党政権といえども、これまではそんな露骨なことはしませんでした。
・政権に都合の悪いことを書かれると支持率が落ちますので、自民党は体験してメディアに欠かせないことを学んだのです。これに対してメディアは何もできません。
・日本のメディア経営者の頭にあるのはジャーナリズムではなくて、いかに会社の経営をうまくやるかです。それぐらい日本のメディアの世界は腐っています。
・日本の新聞は一九〇〇年代の終わり頃から、朝日、毎日、東京などのリベラルグループと産経・読売、日経のライトウィングに二分されました。そうした中で朝日は一応リベラルのリーダーとして位置を保っていましたが、従軍慰安婦問題で狙い打たれ、ガタガタに崩されました。かつての朝日のリベラリズムの気概は、薄くなってきたのでないでしょうか。
・安倍さんの国会答弁を見ていても、自分に対する批判を受け止められないのがよくわかります。同じように、メディアが自分の言動を批判的に報じることに耐えられない、そういう異常な体質なのです。今までの歴代総理でそんな人はいませんでしたね。
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私見
①「官邸ではすべての報道番組を細かくチェックすると同時に、メディアのトップと会食を頻繁に重ねています。」
②「一応は権力に是々非々で臨んでいたTBSテレビとテレビ朝日が「是々」の部分だけを言って、「非々」をあまり言わなくなりました。」
③「朝日は一応リベラルのリーダーとして位置を保っていましたが、従軍慰安婦問題で狙い打たれ、ガタガタに崩されました。かつての朝日のリベラリズムの気概は、薄くなってきたのでないでしょうか。」
いずれも鳥越俊太郎氏の見解である。私はTBSNEWS23に注目してきた。岸井アンカーは最終番組まで権威におもねず、権力に屈しない見解を示しつづけた。かわりに朝日新聞社から政治部長など歴任された星浩氏がTBSNEWS23のキャスターとして入った。
星浩氏は、「人情派キャスター」のTBSの宣伝どおりおだやかで率直な人柄とお見受けした。ウィキペディアで検索して、驚いた。
④「(師資相承の)大先輩と2人1組で、朝日・讀賣・毎日新聞各社の計6人からなる『コラムニストの会』というグループがあって、星はそのメンバーであり、総理大臣や各党の党首や役所の次官などと会食していると大阪のラジオ番組で明かした[7]。(脚注の〔7〕 衆議院解散総選挙はいつ?政局を占う(2009/05/26〜05/30放送) ニュース探偵局 - ABCラジオ。)
星氏がどの総理の時に一緒に会食していたか、それは定かではない。だが、朝日の筑紫哲也氏や本多勝一氏が総理と会食していたら、あの気骨あるジャーナリストとしての仕事をなしえなかっただろう。
テレビ朝日の報道ステーションは、久米宏、古館伊知郎と両氏ともに反骨のキャスターぶりだった。古館氏は交代直前は、批判的なとらえかたが多かった。しかし、しだいに市民運動が反原発運動の官邸前抗議など高まるにつれて、丁寧に報道した。今後若手アナウンサーの富川悠太氏がかわるが、私はこのアナウンサーは古館氏を継承するよりも、テレ朝経営陣の意向で動くマリオネットとしてしか動かないと思う。「報道ステーションが変わる」と宣伝しているが、どんなふうに変わるのかが大事であり、反骨精神を変える内容となるだろう。
TBSnews23も、交代後見ているが、予想通り岸井=膳場の報道精神は、換骨奪胎されている。4月6日、福岡高裁宮崎支部は、川内原発の原発停止を認めず、住民の抗告を退けた。この判決について、news23はどういうふうに番組全体の構成の中で報道しどのように論評するか。それを以て、「新しい」news23の視聴を続けるかどうかを決めたいと私は考えている。
それらの番組がどう変わろうと、戦後70年たって、日本の現代民主主義は、左翼にとどまらず、国民全体各層におよぷ浸透を見せている。アメリカ軍産複合体と組んだ安倍晋三の両者がどうあろうと、彼らを取り巻く海外と日本の民衆は、それほどやわではない。