【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

孫崎享氏の卓越した見解と私見

2016-03-23 17:54:35 | 政治・文化・社会評論
孫崎享氏の卓越した見解と私見

前説
ベルギー・ブリュッセルでの自爆テロは悲惨だ。アメリカとヨーロッパは、中近東に対する外交政策を民族自決と民族融和を基調とした政策に根本から再建するべきだ。テロは許されない。しかしなぜテロを起こすか、それをもっと分析する必要はないのか。十字軍や古代からの文明史の教訓から学ぶべきだ。櫻井 智志






【孫崎享のつぶやき】
ベルギーの首都でのテロ攻撃、この際、ISのテロを根本問題から考えてみよう。『小説外務省Ⅱ陰謀渦巻く中東』から主人公西京寺が本省に意見具申をする所の引用
2016-03-23 06:584



「ベルギーの首都ブリュッセルで22日朝、ブリュッセル国際空港と、欧州連合(EU)本部などがある官庁街の地下鉄駅で大きな爆発が相次いで起こった。

 ベルギー公共放送によると、少なくとも計34人が死亡、約200人が負傷した。イスラム過激派組織「イスラム国」が犯行声明を出した。テロを受け、欧州全域の空港や交通機関で、緊急厳戒態勢が敷かれた。

 「イスラム国」系のメディアによると「イスラム国」は22日の犯行声明で、「戦闘員たちが爆弾ベルトで一連の爆破を実行した」とし、テロ攻撃の理由について、ベルギーが「(『イスラム国』掃討の)有志連合に参加している」と指摘した。ベルギーのミシェル首相は記者会見で、「(空港と地下鉄駅の)二つの攻撃は、卑劣な攻撃だ。我々が恐れていたテロが起こった」と述べた。

 これは単にベルギーだけの問題ではない。

『小説外務省Ⅱ陰謀渦巻く中東』を引用する。

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(バリテロ攻撃をうけて)

いいずれにせよ、大量の犠牲者が出ることは間違いなかった。西京寺は事態を把握するとすぐに机に向かった。

西京寺には東京に伝えなければならないことがあった。今回は絶対に東京に電報を打つという決心をして、筆をとった。

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 13日午後9時パリで、コンサート会場やレストランなどで銃撃や爆弾攻撃が相次ぎ、130人近くが死亡し180人が負傷し80人は重体という。フランス政府は国家非常事態を宣言した。

今後、世界中の人々はフランス国民への同情と、実施した「イスラム国」への憎悪を新たにするとみられる。


これを契機に、世界中で、テロとの戦いでの国際連帯が強く叫ばれていくとみられる。

しかし、私達はこのテロ行為がどの様に発生したかを冷静に見極める必要がある。。

何故、我々は「イスラム国」の行動を憎むのか。一般市民に対する犠牲を生み出しているからである。

しかし、立場を変えてみよう。西側諸国のシリア空爆でどれだけの一般市民が巻き添えになったか。パリへのテロ行為に対する報復としてフランスはシリアへの空爆を行った。多分一般市民も巻き添えを食らっている。何故これが許され、「イスラム国」の報復だけが非難されるのか。

多くの人は今度のパリでのテロ行為は青天の霹靂と思うかもしれない。違う。これは起こるべきして起こったこと、もっと強い言い方をすれば、オランド大統領に責任がある。

「イスラム国」はこれまで、シリアやイラクでの陣地の獲得を主眼に置いた。これの転換が今年夏には明白に起こっていた。各国の情報機関は、本年9月の時点で「“イスラム国”は欧州、特にフランスで同時多発テロを実施する準備をしている」との情報を共有している。

オランド大統領は、この情報に接して、シリアへの空爆を再開した。「イスラム国」側に、当然報復の機運は高まる。今度のパリテロ事件はオランド大統領の行動に一端の責任がある。世界は多分この点にほとんど言及しないと思うが、この認識がなくて、事件の正確な判断は出来ない。

そもそも「テロとの戦い」は全く成功しないだけでなく、逆にテロ活動を活発化させている。

米国国務省発表の、テロでの犠牲者の数字がある。

本年6月19日、米国国務省は「2014年国別テロリズム報告(Country Reports on Terrorism: 2014 )を発表した。

ここではテロリズムを「秘密組織などによって非戦闘員に対して用いられる政治的動機による計画的暴力と定義されている。

今次報告においては次の重要な指摘がある。

① テロリズムの現象は攻撃回数、殺傷性、テロリストの組織の規模で一段と深刻化している。

攻撃件数は2013年の9,707件から、2014年の32,727件に増えている。

死亡は2013年の 17,891 名から83%増え、32,727 名である。

2002年には世界で,死者 725名であった。

2010年は13,186名である。

いくつかのグループのサイズが拡大した。特にISである。2013年はイラクに1,000から 2,000名、シリアに26,000名とみられたが、2014.年には20,000 名から 31,500名の戦闘員とみられている。

これに加えて2014年には33の新たなテロリスト集団がテロ攻撃を行った。

② 全攻撃の63%がイラク、アフガニスタン、パキスタン。インド、ナイジェリア、シリアで起こっている。

世界全体のテロ犠牲者数は次のとおりである。


  2000年       405

     1年      3,547

     2年       725

     3年       625

     4年      . 1,907

     5年      14,602

     6年      20,498

     7年      22,685.

     8年      15,765

     9年      14,971

    10年      13,186

    11年      12,533

    12年      11,098

    13年      17,891

    14年      32,727

以上から、「テロとの戦い」は決して成功しない。

それだけではなく、テロとの戦いに入ることによって、日本人への攻撃が必ず起こる。

しかしながら、安倍首相は必ず、「テロとの戦い」に参加することを積極的に打ち出すとみられる。

それは必ず日本人の犠牲を招く。

我々は後藤氏殺害の時に、「イスラム国」が警告した台詞を今一度思い起こすべきである。

“アベよ、戦いに参加するというおまえの無謀な決断で、このナイフはケンジを殺すだけでなく、おまえの国民を場所を問わずに殺戮する”

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西京寺はこの電報案を一気に書いた。

「明日、いやもう今日だ。10時になったら、大使の所に持っていこう。大使がどういうか、発電できるのか」                                 ---------------------------





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私見

 孫崎享氏のような卓越した見解は、日本の政治家に理解しうるのか。後藤健二さんに関わる時も、日本の国会は全会一致で、安倍政権を支持して「イスラム国」を批判する決議をあげた。

 私の記憶では、この時に自らの思考で、アメリカの国際政策にも批判しうる余地があることに言及したのは、日本共産党の池内さおりさんただ一人だった。この時池内議員は、安倍総理が交渉中だから、安易な発言は誤解を招くから留意いることを志位和夫委員長から指導されたと私は記憶している。

 確かに普通の政権なら、交渉中に政党の一員が政党の方針とニュアンスが異なることに慎重であってほしいという志位委員長の指導は、正しいし池内議員が慎重さを求められることも納得する。

 ただこの時に驚くべきことだが、人質救出交渉を全く行っていなかった。しかもカイロで有志国の一員としてイスラム国に打撃を与える支援の厖大な大金を提供すると公言した。この 言葉によって、後藤健二さんたちは処刑れた。

 シリアの上空から、フランス、イギリス、ロシア、アメリカら軍事兵器先進国の爆弾が空爆としてシリアをほぼ無制限に近い壊滅的爆撃を行った。このような非道で非人道的攻撃をおこなった世界の主要先進国に、フランスやベルギーの自爆テロやテロの反撃を批判する資格があるのか。

 私は欧米ロシアよりも、第三世界、開発途上国の国民の声を聴きたい。国家シリアを崩壊させた欧米は、やがて歴史の舞台から長い歳月をかけて消滅していくことだろう。人類史をたどると、欧米ロシア中国は、大昔から先進国だったわけではない。未開の後進国だった。チグリス・ユーフラテス川流域のメソポタミア文明のときにヨーロッパ大陸は遅れた地域だった。

 人類史の法則にそって、歴史を俯瞰することで、耐えず謙虚な視点に基づく国際社会認識が求められている。有志国連合など、人類史の仇花に過ぎない。歴史はたえず新たに生成されている。












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