昨日、津軽地方に雨を齎した低気圧が東に抜けると、
シベリア育ちの冷たい空気が高気圧から吹き出して日本海の波は荒くなる。
天気は断続的に晴と曇りを繰り返す日本海特有の冬気候。
リゾートトレインに乗った客が望む冬の日本海が今日は拝めそうだ。
風合瀬は、沿線でも特に沿岸漁業が盛んなエリアでかつては貝や雲丹、海鼠に岩海苔が漁師の生計を支えたのも
今となっては昔の話で、漁師の大半はハンバ仕事で遠くは福島の被災者支援住宅関連の仕事までも熟し生計の足しとする。
最近の漁場は、国際的な密漁で津軽の漁師たちはそんな「平成の海賊」に頭が痛い。
ごくごく最近、遺体を乗せた漂流船がこの界隈に打ち上がったばかり。
餌を啄む鳥たちが去り潮の満ちとともに、消波ブロックに当たる波は潮を吹くようになる。
昼前後の密度ある列車の往来の〆は、主のヨンマルで。
かつて手軽にプチ俯瞰ができた背後の斜面には、
オーバーズボンをも引き裂く茨の群生が藪漕ぎを阻み、
電関人学生時代のオマージュとばかりに、浜辺より挑む。
沿岸漁業の衰退とともに、漁師小屋とヨンマルの景観もやがて過去帳入りとなる。
2018年 睦月 風合瀬
先ずはベースキャンプ地最寄駅をじっくりと観察。
千畳敷駅=氷柱というくらい有名だが暫くのらしくない天候にその大半が落ちてしまったらしい。
海岸段丘はしばしば浸水(しみず)を抱きこうして湧き出た水が凍る。
そこへ北西の季節風が運んだ波飛沫で氷柱は時にモンスター的に育つ。
巨人の洗濯板宜しく海に突き出した段丘の岩盤に打ちつけた波は、
長い歴史の中で、人々をも飲み込んだ。
故の毘沙門さまや観音さまなのだろう。
午後に向け一段と風速を上げる季節風に、
きちっと顎紐かけた凛々しい姿には好印象を抱く。
どうやら今日も日東流の季節風で五能線が止まることはなさそうだ。
2018年 睦月 千畳敷
季節風の厳しき風土に、生まれ出るもの。
それは昇る陽。
荘厳に輝く日東流=津軽富士のモルゲンロート。
その傍らで死して土に還るものがある。
遡上してきて、産卵を済ませて息絶える鮭の屍。
一段と強くなった北西の季節風で打ち寄せる波際を
ヨンマルが下る。
2018年 睦月 陸奥赤石付近
冬の北金ヶ沢の朝は、マジックアワーから始まる。
仄かに山入端が紅になり
それから30分経つか経たないかのうちに一列車限りのラッシュアワーを迎える。
一日で一番駅が賑わうひと時。
この時間帯の海は、その賑わいに耳を聳てるかの如く凪いでいた。
2018年 睦月 北金ヶ沢駅
雨が上がり雲が流れ、低気圧が東に移ると西高東低が強まる。
今日は凪いでいても、明日は時化るであろうと。
かつて遠くは天竺から現北海道までの海を我が物顔で跋扈していた
安東水軍の末裔であろう日東流=津軽の民は、海を知り尽くす。
海が時化る前の穏やかな小雨降る鯵ヶ沢駅に寄ってみた。
舞の海関の故郷でもある駅の待合室には、昭和なゆっくりした空気が漂い、
鉄道に用事が無い町民も集まって大相撲をテレビ観戦する和気藹々さ。
2018年 睦月 上)鳴沢~鯵ヶ沢、下)鯵ヶ沢駅