https://news.yahoo.co.jp/articles/de09bad3a21ed3ae723ac087a6cda95c892cb3b3 1/22(日) 6:01ダイヤモンド・オンライン
「朝礼」という言葉を聞くと、ムダで非効率な日本企業の悪習という印象を持っている人が大半ではないだろうか。しかし、「経営の神様」と称された稲盛和夫氏は毎日の朝礼を重視していた。他の経営者からも、「バカバカしい風習だ」と思っていた朝礼の効果的な側面に気付いて導入した、という言葉が聞かれる。それらの真意とは何か。(イトモス研究所所長 小倉健一)
● 誰もがムダだと思っている「朝礼」も 経営に役立つ一面がある
朝礼。小学校を卒業して約30年、社会に出て20年ほどたったが、私は中学校に入学して以来、「朝礼」の経験がない。日本国民のほとんどは朝礼などムダだと思っているのではないだろうか。もっと言えば、反論の余地もなく上司のメッセージを一方的に聞くだけの朝礼など、苦痛ではないだろうか。
こんな時代に朝礼が好きな会社の特徴について、ファミリーマート元社長の上田準二氏は、こんな指摘をしている。
「自分がオーナーなのだから、社員はもちろん、『竈(かまど)の下の灰まで』会社は全て俺のモノ。業績が向上したら自分の手柄で、悪化したら社員が悪い。相談者さんの会社の社長も、そういう考えを持っているんだろうね」
「こういうタイプの社長は、なぜかそろって朝礼が好きなんだよね。早朝に取引先を訪ねてみたら、整列した社員たちが訓示に耳を傾けていることがよくあった」(「日経ビジネス」電子版、2022年4月5日)
・・・
ちょっと野球の話に脱線するが、野村克也監督時代にヤクルトスワローズの黄金期をつくった古田敦也氏のエピソードをご紹介したい。古田氏はピンチになるとピッチャーの周りに野手を集めたが、その際に話すのは「気合入れてくぞ」という観念的なものではなく、基本動作の確認の徹底だったという。
つまり、「こういうシチュエーションになったら、こういう風に動く」という当たり前のことを、もう一回確認していたというのだ。プロ野球選手であれば、言われなくても分かりそうなものをとにかくおさらいしていく。これは、会社組織であっても同じように大事なことだろう。
・・・
そこで今回は、朝礼の実践例について述べたい。実は、「経営の神様」と称された稲盛和夫氏は毎朝1時間の朝礼を実践していたという。他社の事例と併せて、その内容がどんなものだったのかをご紹介しよう。
● 一見バカバカしい朝礼を 経営者が実施しようと思う真意とは
年商10億円の企業を経営する事業家bot氏は、朝礼の意義についてこう語っている。
「会社員のほとんどは凡人であり、実際の会社経営では理想的な組織論は通用しない。毎日同じ時間に出社するなど、あたりまえのことを社員に浸透させるためには、一見バカバカしい朝礼を実施することが効果的だ」
「かつて『バカバカしい風習だな』と思っていたことを、逆に導入する側に回ることが何度もあった。その中で代表的なものが『朝礼』だ」
「会社が小さいときは、そもそも黙っていてもやる気があるから創業期に参画したわけで、働くことが好きなメンバーが集っている。また、残業したくないとか、朝早く来るのは嫌だとか、そういう細かい話をするメンバーはいないし、そうじゃないと会社は大きくならない」
「しかし、事業を拡大するにあたり、どうしても『松竹梅』の『梅』の層を活用しないと、手が回らなくなってくる。そのとき、『梅』のメンバーをマネジメントする方法として、『朝礼』『日報』のような一見バカバカしい手段に着地するのである」(「プレジデントオンライン」21年2月26日)
つまり、組織は優秀でやる気がある人ばかりではないという現実を考えたときに、朝礼の持っている「当然」を再確認させる場が必要だというのである。このあたり、前述の黄金期のヤクルトにも似た考えであろう。
● 全国ホテルチェーンは朝礼で 「自律型社員」を育成
次に、国内有数の全国ホテルチェーンであるスーパーホテルの事例を取り上げたい。同社は、マニュアルに頼らない「自律型人間」の育成の成功例として、「一橋ビジネスレビュー」(21年12月17日)に、取り上げられている。そして、朝礼を効果的に実践しているのだ。
「平日の朝10時。スーパーホテル東京・赤羽駅南口のフロント横の朝食ラウンジには、支配人、副支配人とともに日勤で業務開始する清掃スタッフ11人が集まっていた。スーパーホテルの全店舗で毎朝欠かさずに行われている『フェイスアップ』の時間である」
「フェイスアップとは、端的にいえば朝礼であるが、全店舗共通の決まったルールがある。それは、スーパーホテルの経営理念や行動指針を各自が念頭に置き、最近あった自分の体験やその日の行動目標など、各スタッフが自由に話すことである」
「スタッフが話したことに対しては、支配人や他のスタッフが感想や内容に関する自分の考えを丁寧に伝える。その場の全員の手には、『Faith(フェイス)』という、スーパーホテルの理念や行動指針などがコンパクトにまとまった手のひらサイズの冊子が収まっている」
「スーパーホテルでは、全員がFaithを常に携帯し、書かれていることを解釈・意識しながら行動し、さらに言葉にする習慣が根づいている。それによって、1人1人が自ら考えてお客様を感動させるサービスを提供できる仕組みを整えているのである」
細かいマニュアルを作らずに、顧客への臨機応変な対応を必要とする場合では、基本的な行動指針を共有しなくてはならないことになる。体験を共有し、こういうときにはこう対処しようというイメージを持っておかなければ、顧客サービスはバラバラになる。体験を語るということは、業務に対して積極性を増す効果もあるのだろう。
● 「経営の神様」稲盛式の朝礼は 毎日こうやっていた
では、「経営の神様」といわれた稲盛氏は、朝礼をどう実践していたのだろう。「日本経済新聞」電子版ニュース(16年12月20日)、「週刊ダイヤモンド」(13年6月22日)を参考にすると、稲盛氏が創業した京セラの朝礼は、以下のように行われている。
まず、管理職や幹部の朝礼は午前7時30分に始まる。ここで、全社員を対象とした午前8時からの朝礼に向けた情報共有が行われる。
「前日付の累計を発表します。A班、○○円の目標に対して××円! (目標の)△%!」というように、京セラでは、会社の経営状況が全従業員に向けて、1日ごとに毎朝開示されるのだ。
午前7時50分には、全従業員に向けて「社歌」が流れる。
午前8時にチャイムが鳴り、10分ほどの間に、安全確認や連絡事項の伝達、体操が行われる。
体操が終わると、課ごとに分かれて朝礼。課の朝礼が終わると係(3~6人の班。稲盛氏が考案した「アメーバ経営」の最小単位である「アメーバ」と呼称することもある)ごとに朝礼が始まる。
最後に京セラの経営理念を唱和して、朝礼は終了する。毎日30分以上かけて、こうした朝礼を行うのである。
工場全体、課、アメーバの3段階に分け、毎日30分以上(幹部は1時間)かけて行う朝礼を通して、京セラでは日々の業績や経営理念を全社員に浸透させていく。毎日、前日の実績を1円単位で確認し、目標を下回ったらすぐに原因を突き止めて対策を講じ、遅れを取り戻すよう指示する。
稲盛氏が指揮した会社では、こうした細やかさと素早さが収益を支えている。
● 朝礼嫌いの人に向けた ファミマ元社長の上田氏の助言
それにしても前日の数字をすぐに確認し、また、1時間もかけて朝礼を行うというのは、業務に入る前の基本動作の確認がいかに経営にとって大事であると稲盛氏が考えていたかの表れだろう。
朝礼すべてが悪いのではなく、朝礼を有効に使うすべはあったのだ、私の過去の判断が甘かった、と反省した次第だ。前出のファミリーマート元社長の上田氏は、朝礼嫌いの人のために、こんなアドバイスをしてくれている。
「朝礼に参加するのは業務の一環。給料の中には社長の話を長々と聞くことが含まれていると考えれば、少しはましになるんじゃないか。僕は若い頃上司に怒鳴られまくっていたけれど、そういうマインドを持っていたから決して心が折れなかった」(「日経ビジネス」電子版、22年4月5日)
リモートワークが進み、社員の意識がバラバラになってしまうことが懸念されるようになった。昭和の遺物とも思われている朝礼を再評価する時期に来ているのかもしれない。
小倉健一
感想;
基本を着実に行うことの大切さ、そのために基本を自分の身体に沁み込ませることが必要なようです。
今日の仕事での注意事項を確認する。
そのときに3Hを確認することです。
初めて、変更、久しぶり。
今日初めての業務はあるか? 初めてやる人はいるか?
何か変更があるかどうか? その変更はどういうことで何に注意が必要か?
久しぶりだと、手順書をもう一度見るとか、前回行った人に尋ねるとか。
朝礼でそれを徹底します。
また皆から疑問があればそれを確認します。
わかっているはずは、わかっていません。
口に出して言って確認をとることです。
「朝礼」という言葉を聞くと、ムダで非効率な日本企業の悪習という印象を持っている人が大半ではないだろうか。しかし、「経営の神様」と称された稲盛和夫氏は毎日の朝礼を重視していた。他の経営者からも、「バカバカしい風習だ」と思っていた朝礼の効果的な側面に気付いて導入した、という言葉が聞かれる。それらの真意とは何か。(イトモス研究所所長 小倉健一)
● 誰もがムダだと思っている「朝礼」も 経営に役立つ一面がある
朝礼。小学校を卒業して約30年、社会に出て20年ほどたったが、私は中学校に入学して以来、「朝礼」の経験がない。日本国民のほとんどは朝礼などムダだと思っているのではないだろうか。もっと言えば、反論の余地もなく上司のメッセージを一方的に聞くだけの朝礼など、苦痛ではないだろうか。
こんな時代に朝礼が好きな会社の特徴について、ファミリーマート元社長の上田準二氏は、こんな指摘をしている。
「自分がオーナーなのだから、社員はもちろん、『竈(かまど)の下の灰まで』会社は全て俺のモノ。業績が向上したら自分の手柄で、悪化したら社員が悪い。相談者さんの会社の社長も、そういう考えを持っているんだろうね」
「こういうタイプの社長は、なぜかそろって朝礼が好きなんだよね。早朝に取引先を訪ねてみたら、整列した社員たちが訓示に耳を傾けていることがよくあった」(「日経ビジネス」電子版、2022年4月5日)
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ちょっと野球の話に脱線するが、野村克也監督時代にヤクルトスワローズの黄金期をつくった古田敦也氏のエピソードをご紹介したい。古田氏はピンチになるとピッチャーの周りに野手を集めたが、その際に話すのは「気合入れてくぞ」という観念的なものではなく、基本動作の確認の徹底だったという。
つまり、「こういうシチュエーションになったら、こういう風に動く」という当たり前のことを、もう一回確認していたというのだ。プロ野球選手であれば、言われなくても分かりそうなものをとにかくおさらいしていく。これは、会社組織であっても同じように大事なことだろう。
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そこで今回は、朝礼の実践例について述べたい。実は、「経営の神様」と称された稲盛和夫氏は毎朝1時間の朝礼を実践していたという。他社の事例と併せて、その内容がどんなものだったのかをご紹介しよう。
● 一見バカバカしい朝礼を 経営者が実施しようと思う真意とは
年商10億円の企業を経営する事業家bot氏は、朝礼の意義についてこう語っている。
「会社員のほとんどは凡人であり、実際の会社経営では理想的な組織論は通用しない。毎日同じ時間に出社するなど、あたりまえのことを社員に浸透させるためには、一見バカバカしい朝礼を実施することが効果的だ」
「かつて『バカバカしい風習だな』と思っていたことを、逆に導入する側に回ることが何度もあった。その中で代表的なものが『朝礼』だ」
「会社が小さいときは、そもそも黙っていてもやる気があるから創業期に参画したわけで、働くことが好きなメンバーが集っている。また、残業したくないとか、朝早く来るのは嫌だとか、そういう細かい話をするメンバーはいないし、そうじゃないと会社は大きくならない」
「しかし、事業を拡大するにあたり、どうしても『松竹梅』の『梅』の層を活用しないと、手が回らなくなってくる。そのとき、『梅』のメンバーをマネジメントする方法として、『朝礼』『日報』のような一見バカバカしい手段に着地するのである」(「プレジデントオンライン」21年2月26日)
つまり、組織は優秀でやる気がある人ばかりではないという現実を考えたときに、朝礼の持っている「当然」を再確認させる場が必要だというのである。このあたり、前述の黄金期のヤクルトにも似た考えであろう。
● 全国ホテルチェーンは朝礼で 「自律型社員」を育成
次に、国内有数の全国ホテルチェーンであるスーパーホテルの事例を取り上げたい。同社は、マニュアルに頼らない「自律型人間」の育成の成功例として、「一橋ビジネスレビュー」(21年12月17日)に、取り上げられている。そして、朝礼を効果的に実践しているのだ。
「平日の朝10時。スーパーホテル東京・赤羽駅南口のフロント横の朝食ラウンジには、支配人、副支配人とともに日勤で業務開始する清掃スタッフ11人が集まっていた。スーパーホテルの全店舗で毎朝欠かさずに行われている『フェイスアップ』の時間である」
「フェイスアップとは、端的にいえば朝礼であるが、全店舗共通の決まったルールがある。それは、スーパーホテルの経営理念や行動指針を各自が念頭に置き、最近あった自分の体験やその日の行動目標など、各スタッフが自由に話すことである」
「スタッフが話したことに対しては、支配人や他のスタッフが感想や内容に関する自分の考えを丁寧に伝える。その場の全員の手には、『Faith(フェイス)』という、スーパーホテルの理念や行動指針などがコンパクトにまとまった手のひらサイズの冊子が収まっている」
「スーパーホテルでは、全員がFaithを常に携帯し、書かれていることを解釈・意識しながら行動し、さらに言葉にする習慣が根づいている。それによって、1人1人が自ら考えてお客様を感動させるサービスを提供できる仕組みを整えているのである」
細かいマニュアルを作らずに、顧客への臨機応変な対応を必要とする場合では、基本的な行動指針を共有しなくてはならないことになる。体験を共有し、こういうときにはこう対処しようというイメージを持っておかなければ、顧客サービスはバラバラになる。体験を語るということは、業務に対して積極性を増す効果もあるのだろう。
● 「経営の神様」稲盛式の朝礼は 毎日こうやっていた
では、「経営の神様」といわれた稲盛氏は、朝礼をどう実践していたのだろう。「日本経済新聞」電子版ニュース(16年12月20日)、「週刊ダイヤモンド」(13年6月22日)を参考にすると、稲盛氏が創業した京セラの朝礼は、以下のように行われている。
まず、管理職や幹部の朝礼は午前7時30分に始まる。ここで、全社員を対象とした午前8時からの朝礼に向けた情報共有が行われる。
「前日付の累計を発表します。A班、○○円の目標に対して××円! (目標の)△%!」というように、京セラでは、会社の経営状況が全従業員に向けて、1日ごとに毎朝開示されるのだ。
午前7時50分には、全従業員に向けて「社歌」が流れる。
午前8時にチャイムが鳴り、10分ほどの間に、安全確認や連絡事項の伝達、体操が行われる。
体操が終わると、課ごとに分かれて朝礼。課の朝礼が終わると係(3~6人の班。稲盛氏が考案した「アメーバ経営」の最小単位である「アメーバ」と呼称することもある)ごとに朝礼が始まる。
最後に京セラの経営理念を唱和して、朝礼は終了する。毎日30分以上かけて、こうした朝礼を行うのである。
工場全体、課、アメーバの3段階に分け、毎日30分以上(幹部は1時間)かけて行う朝礼を通して、京セラでは日々の業績や経営理念を全社員に浸透させていく。毎日、前日の実績を1円単位で確認し、目標を下回ったらすぐに原因を突き止めて対策を講じ、遅れを取り戻すよう指示する。
稲盛氏が指揮した会社では、こうした細やかさと素早さが収益を支えている。
● 朝礼嫌いの人に向けた ファミマ元社長の上田氏の助言
それにしても前日の数字をすぐに確認し、また、1時間もかけて朝礼を行うというのは、業務に入る前の基本動作の確認がいかに経営にとって大事であると稲盛氏が考えていたかの表れだろう。
朝礼すべてが悪いのではなく、朝礼を有効に使うすべはあったのだ、私の過去の判断が甘かった、と反省した次第だ。前出のファミリーマート元社長の上田氏は、朝礼嫌いの人のために、こんなアドバイスをしてくれている。
「朝礼に参加するのは業務の一環。給料の中には社長の話を長々と聞くことが含まれていると考えれば、少しはましになるんじゃないか。僕は若い頃上司に怒鳴られまくっていたけれど、そういうマインドを持っていたから決して心が折れなかった」(「日経ビジネス」電子版、22年4月5日)
リモートワークが進み、社員の意識がバラバラになってしまうことが懸念されるようになった。昭和の遺物とも思われている朝礼を再評価する時期に来ているのかもしれない。
小倉健一
感想;
基本を着実に行うことの大切さ、そのために基本を自分の身体に沁み込ませることが必要なようです。
今日の仕事での注意事項を確認する。
そのときに3Hを確認することです。
初めて、変更、久しぶり。
今日初めての業務はあるか? 初めてやる人はいるか?
何か変更があるかどうか? その変更はどういうことで何に注意が必要か?
久しぶりだと、手順書をもう一度見るとか、前回行った人に尋ねるとか。
朝礼でそれを徹底します。
また皆から疑問があればそれを確認します。
わかっているはずは、わかっていません。
口に出して言って確認をとることです。