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修羅場をくぐって笑えるか? サントリー社長が語る「人本主義経営」基盤づくり ”人が育つ企業かどうか”

2023-06-29 19:19:19 | 社会

社員が個性や能力を最大限に発揮できる日本発のグローバル企業を目指して、新浪剛史はさまざまな施策を打ち出してきた。2015年4月には企業内大学「サントリー大学」を開校し、国内外にいる4万人の社員に数多くの人材育成プログラムを提供している。「人本主義」を掲げる新浪が考える、サントリーが「おもろい」会社であり続けるために必要な成長と学びの機会とはなにか。
──「人的資本経営」に世間の注目が集まるなか、あえて「人本主義」という言葉を好んで使っている。その意図は。

新浪:資本主義とは、お金を媒介とする経済のシステムだ。だが、ビジネスの本質は人が幸せになり、社会が豊かになることにある。だから経営者として、人的資本経営という言葉にはピンとこない。

──なぜ、このような考えを抱くに至ったのか。

新浪:人が育つことの喜びを常に感じてきたからだ。現場の意識が変わり、個が育つことが業績拡大につながるという経験を何度もしてきた。

人を育てるというのはおこがましい話で、その人自身が「自分を磨きたい」と思うことが重要だ。ワクワクすることを見つけたとき、人は初めてスキルを磨こうと懸命になる。目的意識をもって、やりたいと思うようになるための環境や仕組みをつくる。これが経営の役割だ。

──社員の能力開発の施策のなかで、特に肝いりのものは。

新浪:「サントリー大学」だ。サントリーグループがグローバルに発展していくために、「自ら学び、成長し続ける風土の醸成」をはじめ4つの視点からさまざまな気づきや成長の機会を提供している。

グローバル化は簡単ではない。サントリーの場合、国内と海外の社員が共に集い、議論し、お互いから学ぶ仕組みが必要だと考えた。サントリーの創業精神やカルチャーは、本社や現場に来てもらわないと伝わりにくい。例えば、創業者・鳥井信治郎の「やってみなはれ」という言葉にしても、最初は「Go for it」と訳していたが、これでは伝わらない。

特に、14年に買収したビームはステータス・クオ(現状)を維持しながら収益を上げるという考え方が根強く、ビーム サントリーになるためには発想を変えてもらう必要があった。それには本社や現場を体感してもらうことが不可欠だった。

──国内外の社員の学び合いで得られた成果はあったか。

新浪:「自分たちはメーカーであり、マニュファクチャラーなのだ」という強いこだわりが伝わり、経営陣と現場との間で信頼感が高まり、いいものをつくって世界中に届けるという意識が高まった。結果、北米や欧州に加え、インドやASEANでもビジネスが拡大している。

──とはいえ、コミュニケーションを通じて社員の意識に変革をもたらすには、それなりの時間がかかる。どう乗り切ったのか。

新浪:私の気持ちがはやればはやるほど、相手は理解しなくなる。買収当初はシカゴ(ビームの本社所在地)と東京本社との間に不調和もあったが、開高健氏の「悠々として急げ」を意識しながら理解を求めていった。親会社という立場から「こうやれ」と言うのは楽かもしれないが、彼らの意見も聞きながら大局観をもって振る舞うなかで、相手の信頼を獲得することができた。

「運を連れてくるのはトップの力量」

──国内外の社員のエンゲージメントは高まっているか。

新浪:最近の調査では、社員の9割弱がサントリーグループで働くことに誇りをもっていると回答している。

サントリーは創業以来、事業で得た利益は事業への再投資のほか、お客様や取引先へのサービス、社会貢献に役立てる「利益三分主義」を掲げている。例えば、サントリーは行政や森林保有者と協力し、森林保全を行うために各地で「天然水の森」を展開している。ある海外の社員は天然水の森に行き、その取り組みに感激し、帰国後すぐに地元のNPOなどと一緒になって同じような活動を始めた。

こういった類いのことは、やれと言ってやれるものではない。サントリー大学を通じて現場を訪れ、サントリーの「水と生きる」という社会との約束と「やってみなはれ」の意味を体感した結果だろう。こういうことをやっていいのだと思った瞬間、解き放たれた。

自分たちのコミュニティを守り、水という大切な地球資源を次の世代に渡していくという意識を強くもち、ロングタームでコミュニティにコミットする。その結果、我々が社会になくてはならない存在となる。そんな海外の社員の姿勢が、日本にいる社員にも前向きなピアプレッシャーを与えている。

──日本国内における人材面での課題はなにか。

新浪:とりわけ20代、30代の人たちは、自身のキャリアへの関心が高いと感じる。その理由のひとつは、サントリー以外の企業でも面白そうな仕事ができるチャンスが増えていることだ。このままではやりたい仕事に到達するまで時間がかかりそうだという現実に、若手社員は直面しているように思う。これからは、優秀な若い人たちを積極的に抜てきしていかなくてはいけない。

さらに、若いうちに修羅場を経験する機会を増やすことが重要だと考えている。例えば、「自分が採用されるポジションを探してこい」と言って、トレーニーとして1〜2年、海外に送り出す。そのときは「なんでこんなことを」と思ったとしても、悩み苦しんだ経験は、その後の仕事やキャリアの役に立つ。

ウイスキーは、仕込みにかかる時間がとても長い。先々を考えて仕込んでも将来、売れるかどうかはわからない。私の次の社長、ひょっとしたらその次の人が「売れてよかった」と思うのか、それとも頭を抱えるのか。このような商売で将来をマネジメントするには、運も重要な要素のひとつだ。そして、運を連れてくるのはトップの力量である。

──サントリーは「おもろい」会社だと思うか。

新浪:おもろい会社だが、もっとおもろくならないと駄目だ。そのためには、社員にちょっときつい経験をしてもらう環境を整えなくてはいけない。修羅場をくぐってもニコッとしている。そんな社員たちがいればサントリーは前例主義に陥ることなく、永遠におもろい会社になれる。
にいなみ・たけし◎ハーバード大学経営大学院でMBA取得。三菱商事、ローソン社長を経て14年より現職。経済財政諮問会議議員。世界経済フォーラムInternational Business Councilメンバー。外交問題評議会(米国)Global Board of Advisorsメンバー。The Business Council(米国)メンバー。

感想
 人を育てている組織長が評価されるかどうか?
何故なら、人を育ててもその結果がでるのは、5年後、10年後です。
多くの組織長は人を育てている時間を仕事をさせて成果を出させて、自分の評価をたかめることに熱心です。
 私にも前の会社で一人、育てて下さったと思う人がいます。
しかし、その人は人材育成での評価はされませんでした。

 今、その方はもう亡くなられているので、返すことはできませんが、その方の意志を継いで、他の企業の品質保証の人材を育てることに注力しています。

以下を行っています。
1)知っている情報はHPに掲載して、無料で見てもらう
2)メールでの相談は無料で行う
3)初回であれば、2時間までの相談または講演を無料で実施する