「失敗」への道のりを丹念にたどることで、「失敗から学ぶ」特集番組の第2弾。今回は、かつての乳製品のトップメーカー・雪印を取り上げる。2000年と2002年、わずか2年足らずのうちに立て続けに起きた2つの不祥事で事実上の解体に追い込まれた雪印グループ。なぜ事件は起きてしまったのか? 企業にとって、組織にとって、大切なこととは何か? 2つの事件、そして信頼回復と再生にかけた20年の取り組みを追う。
感想;
雪印乳業は八雲食中毒事件を起こしましたが、その時は社長が陣頭指揮で対応しました。なぜその時出来て、二度目では出来なかったのかが取りあげられていませんでした。雪印乳業の食中毒事件を考えるなら、八雲食中毒事件抜きには考えられません。
コメンテーターが「よく雪印メグミルクがこの取材を受けた」と感心されていました。この放送は雪印メグミルクさんにとったらプラスのイメージUpです。
でもなぜ「八雲食中毒事件も取り上げて欲しい」と要望出さなかったのでしょう?
それは多くの人が「八雲食中毒事件」のことを知らないので、知られたくなかったのかと思いました。それを取り上げると寝た子を起こし、又イメージダウンを恐れたのかもしれません。
雪印メグミルクさんのHPではきちんと紹介されています。
過去の失敗を生かしていなかったのです。当時本社の品質管理室長が空席で、品質管理の重要性が忘れ去られていました。この点も紹介されていませんでした。
それと事件の一番の原因が紹介されていませんでした。
実は大樹工場で停電が起き、微生物が増え規格不適になりました。
工場の品質管理は、「微生物は殺菌すれば死ぬ」とのことで殺菌して、規格適合になり出荷しました。
しかし、微生物には毒素を出す菌がいます。その知識がなかったのです。その知識があれば、菌の同定をすれば黄色ブドウ球菌とすぐにわかりました。黄色ブドウ球菌は毒素を出すことはネットでもすぐにわかります。毒素があるかも知れないと思って、外注で試験すれば該当ロットの廃棄だけで終わりました。
工場長が新聞社のインタビューに正直に答えておられました。
「微生物が毒素を出すことは知らなかった」
食品工場は微生物管理です。それを知らない人が工場長に昇格させる経営の問題もあります。また本人が微生物について学ぼうとしなかった問題もあります。しかし、微生物試験を行う組織の責任者と試験者に微生物の基礎的な知識がなかったのです。SOPに従って試験するだけで精一杯だったのです。同じレベルの問題が健康被害を出した福井県の小林化工でも起きています。試験とGMPの基礎知識があれば1ロットの廃棄だけで終わっていました。
つまり品質保証するためにベースの力がなかった。その力を持つ責任者でなかった。また教育もしていなかったことが問題でした。
番組で牛乳の生産者の思い、消費者の思いが雪印乳業側に欠落していた云々が重要視されていましたが、その前に物造りの品質保証の欠落があったのです。それ抜きに生産者の思いや消費者の思いを議論しても意味がありません。