不条理な暴力に私たちはどう抗えるのか――内ゲバが激化した一九七二年、革マル派による虐殺事件を機に蜂起した一般学生の自由獲得への闘い。いま明かされる衝撃の事実。1972年11月8日、早稲田大学構内で一人の学生が虐殺された。その事件をきっかけに蜂起した一般の大学生たちの「自由」獲得への戦い。不条理な暴力に徒手空拳で立ち向かい、怯え慄き、傷つけられ……。だが、最後まで非暴力による闘いを貫いた。今も、暴力は様々な形で社会に蔓延し、ある日突然巻き込まれる人は増え続けている。不穏な時代に翻弄され、立ち竦むすべての人に捧げる渾身のルポ。
組織人間の悪魔性問いかけ [評]江上剛(作家)
一九七二年四月、評者は早稲田大学政経学部に入学した。キャンパスには暴力が満ちていた。奇声を発しながら鉄パイプを振るう集団が走り抜けた後には血痕が落ちていた。革マル派が敵対するセクトの学生を襲撃していたのだ。
著者も同じ年に文学部に入学した。文学部は、政経学部以上に革マル派の暴力支配下にあり、学生たちは怯(おび)えながら過ごしていた。しかし十一月八日、文学部生川口大三郎君が革マル派のリンチによって殺害される事件が起きた。これを契機に一般学生が革マル派排除に立ち上がった。大学当局は革マル派の暴力支配を許容し見て見ぬ振り。一般学生が勇気を奮わざるを得なかったのだ。運動は拡大し、やがて著者はリーダーとなるが、革マル派の襲撃で命の危機に陥ることになる。
本書は、革マル派の幹部だった人物のインタビューも含め、記録に基づき運動の発端から挫折に至るまでを詳細に再現している。しかし所詮(しょせん)、早大という閉鎖空間の問題であり、反革マル運動を「痛み」として心の底に沈め、今や老境に達した人間のノスタルジーを刺激するだけではないか等の意見もあるだろう。
著者は私たちに「寛容と不寛容」の問題を問いかける。「不寛容の行き着く先は『テロリズム=暴力』である」と。これは新左翼だけの問題ではない。私たちは誰もが何らかの組織に属している。その組織が不寛容になった時、暴力が発生するのだ。トランプ支持者が合衆国議事堂を襲撃した。我が国にも韓国人へのヘイトスピーチを声高に叫んでデモをする人たちがいる。企業内ではパワハラが横行する。著者のインタビューに当時の革マル派幹部は「暴力的な現場でこそ組織に貢献できると思っていた」と答えている。組織に属する人間は誰でも組織内での評価を高めたいと願う。その結果、他者に対し不寛容になり、これこそが自分の地位向上に資するという悪魔に魅入られてしまう。
本書は、私たちの心に潜むこの悪魔性の問題を突き付ける。川口君事件を知らない読者も「寛容と不寛容」の問題を考えてもらいたい。
(文芸春秋・1980円)
感想;
大学に入学した時は、学生運動が下火になっていたときでした。
しかし、その影響で、授業は5月からで、4月からは1科目だけの受講でした。
大学の正面出口のすぐそばに、警察の特型警備車が待機していました。
受験を控えた時に、浅間山荘事件があり、受験勉強を放り出してTVを見ていました。
各大学で内ゲバがあったようです。
巻き込まれた学生も多かったでしょう。
読み終えて思ったことは、明らかな犯罪行為が行われているのに、大学が警察を呼ばないことでした。
学校という前置きがあると、虐めや暴力があっても、警察を呼ばずに対応しているのです。
川口さんが連れ去られても、警察への連絡をせず、殺害されてから警察に連絡するという当時の大学のマネジメントのお粗末さでした。
そしてどんな理由があっても、暴力に訴えることは決してしてはいけないし、どんな言い訳も成り立たないことです。
今、それがロシアによって行われています。
これを認めると、「いうことを聞かない相手には暴力で以って従わせる」ことが是となってしまいます。
そして、ロシアが次に新たな国を攻撃することを認めてしまうことになります。
鈴木宗男氏はロシアとの関係改善に尽力されて来られましたが、今の発言見ているの、単なるロシア信奉者で事の善悪も分からない人だということを自らPRされているように思えてなりません。
「虐めがあると、虐めらた方にも責任がある」との考えと同じです。
相手がどうであろうと、暴力で虐めることはあってはならないのです。
昔の学生はエネルギーがあったようです。
今はエネルギーがなく、理不尽なことがあっても我慢するだけの学生が増えているようです。
日本の未来を背負う若者対策が不十分です。
奨学金制度と看板の実は低金利ローンです。
現場に派遣が認められ、正規労働の口が減っています。
正規労働に就くだけでも大変です。
共稼ぎでないと子ども持てない状況です。
国を守るための防衛費2倍するより、守る国が崩壊して言っています。
守るに値する国づくりに、それは若者支援、貧困者支援にもっとお金を使って欲しいです。
働いたお金の多くが防衛費に、米国の古い装備購入に回っているかと思うと、税金を納めたいという気持ちが失せてきます。