はるきぬと ひとはいへども うぐひすの なかぬかぎりは あらじとぞおもふ
春来ぬと 人はいへども 鶯の 鳴かぬかぎりは あらじとぞ思ふ
壬生忠岑
春が来たと人が言っても、鶯が鳴かない限りはそうでないだろうと思う。
暦の上で立春になろうと、またそれによって人が「春が来た」と言おうと、鶯が鳴いてこその春。暦や他者の感覚ではなく、鶯の声を聞くことで自ら春を実感したいという思い。
作者の壬生忠岑は、紀友則、紀貫之、凡河内躬恒とともに、古今和歌集の選者の一人。三十六歌仙にも名を連ね、古今和歌集には歌人別では4番目に多い36首が採録されています。中でも 0625 の次の歌は、百人一首(第30番)にも採られていて有名ですね。
ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし
有明の つれなく見えし 別れより あかつきばかり 憂きものはなし
古今集にあるということは、このシリーズを続けていければいつかメインに取り上げることになるということですが、このまま一日一首続けていけたとして 0625 にたどり着くのは2年近くも先のこと。我ながら気の長い話です。 笑