はるのひの ひかりにあたる われなれど かしらのゆきと なるぞわびしき
春の日の 光にあたる 我なれど かしらの雪と なるぞわびしき
文屋康秀
東宮(皇太子=後の清和天皇。)とその后(二条の后=藤原高子。)の寵を受けている私だけれど、年老いて白髪になってしまったのはもの寂しいことです。
「東宮」を「春宮」とも書くことにも表れていますが、「春の日の光にあたる」は、時の皇太子の恩寵に与っていることの比喩。詞書に、二条の后が東宮の御息所であったときにお召しがあって詠んだ歌とありますから、東宮、后双方から恩愛を受けていたのでしょう。降る雪が前の二首(0006、0007)では花でしたが、ここでは白くなった自らの頭髪に見立てられていますね。
作者の文屋康秀は言わずと知れた六歌仙の一人。古今和歌集には、百人一首にも採られた 0249 の
ふくからに あきのくさきの しをるれば むべやまかぜを あらしといふらむ
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
も含めて全部で5首が採録されています。