うめがえに きゐるうぐひす はるかけて なけどもいまだ ゆきはふりつつ
梅が枝に 来ゐる鶯 春かけて 鳴けどもいまだ 雪はふりつつ
よみ人知らず
梅の枝に来て止まっている鶯が春をまちわびて鳴いているけれども、いまだに雪は降り続いている。
ひとつ前の 0004 では想像(まだ谷にいる鶯の凍った涙が解けつつあるだろうか)の中にしかいなかった鶯が、この歌では実際に梅の枝に来ているということで、季節が少し進んでいます。古今和歌集の巻頭からの章立ては春⇒夏⇒秋⇒冬と時の流れに沿ったものになっていますが、それぞれの季節の中でもその採録の順番は熟慮されていて、春の章にあっても暦の上での立春から始まって徐々に春が深まっていく流れに沿って歌が並べられています。古今和歌集の編纂に注がれた、紀貫之を中心とする選者たちの情熱と心ざしが伝わってきますね。