はるくれば かりかへるなり しらくもの みちゆきぶりに ことやつてまし
春くれば 雁かへるなり 白雲の 道ゆきぶりに ことやつてまし
凡河内躬恒
春が来れば、雁が北へと帰っていく。その白雲の道中に言伝を託してみようか。
遠く北の国に行ってしまった人(友人でしょうか)に、そちらの方向に飛んで行く雁に託してでも言葉だけでも届けたいという思い。
作者の凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)は古今和歌集の撰者の一人で、三十六歌仙にも名を連ねる大歌人。古今集には60首が入集していて、百人一首(第29番)にも採られた 0277 は有名。
こころあてに をらばやをらむ はつしもの おきまどはせる しらぎくのはな
心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花
個人的には、0041 の次の歌が何とも言えず好きです。
はるのよの やみはあやなし うめのはな いろこそみえね かやはかくるる
春の夜の 闇はあやなし 梅の花 色こそ見えね 香やはかくるる