漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0027

2019-11-26 20:00:48 | 古今和歌集

あさみどり いとよりかけて しらつゆを たまにもぬける はるのやなぎか

あさみどり 糸よりかけて 白露を 玉にもぬける 春の柳か


僧正遍昭





 浅緑色の縒り糸を玉に通しているかのように、白露を貫いている春の柳であるよ。

 柳の枝を糸に、そこについている白露を玉に見立てて詠んだ歌。
 作者の僧正遍昭は六歌仙、三十六歌仙の両方に名を連ねている歌の名人。古今和歌集にも14首が入集していますが、「仮名序」に記された貫之の遍昭評は「歌のさまは得たれどもまことすくなし(歌の趣向は良いが真情にとぼしい)」ということでなかなかの酷評。六歌仙の他の歌人に対しても「心あまりてことばたらず」(業平評)とか、「ことばたくみにてそのさま身におはず」(文屋康秀評)、「そのさまいやし」(大友黒主評)などなどといった具合です。まあ、何かそれまでと異なる新しいことを始めようとする人が、前時代の大家を辛辣に批判するのは世の常。900年の時を経て貫之自身が正岡子規に悪しざまにこき下ろされたのも、その類のことと言えるでしょうか。