かすがのの わかなつみにや しろたへの そでふりはへて ひとのゆくらむ
春日野の 若菜摘みにや 白妙の 袖ふりはえて 人のゆくらむ
紀貫之
春日野の若菜摘みに行くのだろうか。白い袖をことさらに振って人が行くのは。
「白妙の」は「袖」にかかる枕詞なので、この歌だけからは袖が実際に白かったのかどうかはわかりませんが、春の情景ですし、実際に白い袖だったと解釈しても良さそうではあります。「ふりはふ」は漢字で書けば「振り延ふ」で、わざわざする、ことさらにするの意。さらにこの「ふり」は「袖を振る」の「振り」と「ふりはふ」との掛詞になっています。非常に技巧を凝らした歌ですね。