はるたてば はなとやみらむ しらゆきの かかれるえだに うぐひすのなく
春立てば 花とや見らむ 白雪の かかれる枝に 鶯の鳴く
素性法師
もう立春になったので、花だと見ているのだろうか。白雪のかかっている枝で鶯が鳴いているよ。
春がまだ浅く、実際は花は咲いていないのに鶯が枝で鳴いているのは、枝の白雪が花に見えているのだろうかという雅な想像を詠んだ歌。歌人(詩人)の持つ豊かな感受性の発露という感じがします。
作者の素性法師は、桓武天皇の曽孫、僧正遍昭の子にして、三十六歌仙の一人。僧正遍昭も三十六歌仙の一人(六歌仙の一人でもありますね)ですから、親子して三十六歌仙に名を連ねていることになります。それぞれ百人一首にも採られている、
いまこむと いひしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな 素性法師
あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ 僧正遍昭
がつとに有名ですね。両歌とも、古今和歌集にも採録されています。(0691、0872)