つれもなき ひとをやねたく しらつゆの おくとはなげき ぬとはしのばむ
つれもなき 人をやねたく 白露の おくとは嘆き 寝とはしのばむ
よみ人知らず
私の思いに気づかずににいるあの人のことを、しゃくなことに白露の置く朝に起きては嘆き、夜寝ては慕うのであるなあ。
「ねたく」は「妬く」でくやしい、しゃくだといった意。「おく」は「(白露が)置く」と「(朝)起く」の掛詞になっています。この一首だけを単独で解釈すれば、冒頭の「つれもなき人」は、こちらの思いを知っているのに応えてくれない冷たい人、との意にもとれます。ですが古今集全体として見ると、恋歌の巻が始まったばかりでこちらの思いをまだ相手が知らない段階の歌が並べられている位置に配列されていますので、この歌の解釈としても、相手はまだ読み手の恋心を知らずにいるとするべきでしょう。