ほととぎす なくやさつきの あやめぐさ あやめもしらぬ こひもするかな
ほととぎす 鳴くや五月の あやめぐさ あやめも知らぬ 恋もするかな
よみ人知らず
ほととぎすが鳴く五月に咲く菖蒲草ではないが、文目(あやめ)の名の通り筋道もわからない恋をするものだなあ。
ここから巻第十一「恋歌一」が始まります。恋歌は巻第十五「恋歌五」まで続く、古今集でもっとも歌数の多い題目で、0828 まで360首が採録されています。春歌(134首)や秋歌(145首)も多かったですが、やはり歌と言えば恋歌というところでしょうか。しかし360首ということは、今日からほぼ1年間、恋歌のご紹介が続くということですね。何だか少し気が遠くなってきました ^^;;;
その巻頭を飾るこの歌。一句~三句が、四句の「あやめ」を導く序詞になっています。四句の「あやめ」は三句の「菖蒲」と同音の「文目」で、ここでは物事の筋道や分別の意。理屈ではどうにもならない「恋」を詠んでいます。