おとにのみ きくのしらつゆ よるはおきて ひるはおもひに あへずけぬべし
音にのみ きくの白露 夜はおきて 昼は思ひに あへず消ぬべし
素性法師

あの人のことを噂に聞くばかりで、夜に置いて昼には消えてしまう菊の白露のように、私も眠れぬ夜を過ごし、昼には恋しい思いにこらえ切れずに消えてしまいそうだ。
「音」は噂の意。掛詞が多用されており、「きく」は「音に聞く」と「菊の白露」、「おきて」は「(白露が)置きて」と「(自分が)起きて」、「ひ」は「思ひ」と「日」が掛けられています。巧みな技法で、置きては消える白露と恋に悩む自身とを二重写しに詠み込んでいますね。