漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0474

2021-02-15 19:36:21 | 古今和歌集

たちかへり あはれとぞおもふ よそにても ひとにこころを おきつしらなみ

立ち返り あはれとぞ思ふ よそにても 人に心を おきつ白波 


在原元方

 

 繰り返し幾度も愛しいと思う。離れていても人の心に寄せて来る沖の白波のように。

 「おき」が「置き」と「沖」の掛詞になっていて、初句の「立ち返り」が単に自身の思いが繰り返されることを表現しているだけでなく、第五句でそれを寄せては返す白波に喩えていることがわかります。散文で普通に書けば「寄せては返す白波のように、あの人のことを幾度も繰り返し思う我が心」ということですが、白波を最後にもってくることで言わば種明かし的に比喩を用い、読み手を第五句から初句へと循環させる巧みな修辞ですね