たちかへり あはれとぞおもふ よそにても ひとにこころを おきつしらなみ
立ち返り あはれとぞ思ふ よそにても 人に心を おきつ白波
在原元方
繰り返し幾度も愛しいと思う。離れていても人の心に寄せて来る沖の白波のように。
「おき」が「置き」と「沖」の掛詞になっていて、初句の「立ち返り」が単に自身の思いが繰り返されることを表現しているだけでなく、第五句でそれを寄せては返す白波に喩えていることがわかります。散文で普通に書けば「寄せては返す白波のように、あの人のことを幾度も繰り返し思う我が心」ということですが、白波を最後にもってくることで言わば種明かし的に比喩を用い、読み手を第五句から初句へと循環させる巧みな修辞ですね