しらたまと みえしなみだも としふれば からくれなゐに うつろひにけり
白玉と 見えし涙も 年ふれば 韓紅に うつろひにけり
紀貫之
白玉のように見えた涙も、年月を経て真っ赤な色に変わってしまったことよ。
表面的な歌意はわかりやすく、本来白玉(=真珠)のようであるはずの涙さえも、耐えがたい苦しみに血の色にかわってしまったという詠歌です。撰者である貫之が自ら恋歌の巻に収めたのですから恋の歌であることに疑いはありませんが、表題も詞書もないので、歌だけからは恋歌であることがわからない気がします。まだ不勉強で良くわかりませんが、当時「血の涙」は、主には恋の苦しみについて表現する言葉だったのかもしれません。