ことにいでて いはぬばかりぞ みなせがは したにかよひて こひしきものを
言に出でて 言はぬばかりぞ 水無瀬川 下にかよひて 恋しきものを
紀友則
言葉にして言わないだけのこと。地下を流れて表には水が見えない水無瀬川のように、表には出さずに心の中であなたのことをいつも恋しく想っているのだよ。
weblio古語辞典によれば「水無瀬川」とは、「水のない川。伏流となって地下を流れ、川床に水の見えない川。和歌では、表に現れない、表に現せない心をたとえることがある。『みなしがは』とも。」とあります。現在では淀川水系の河川を指す固有名詞ですが、当時は上記の意味の普通名詞だったようです。古今集ではこのあと 0760、0793 にも登場します。