まかねふく きびのなかやま おびにせる ほそたにがはの おとのさやけさ
まかねふく 吉備の中山 帯にせる 細谷川の 音のさやけさ
よみ人知らず
吉備の中山が帯のように巡らせている細谷川の流れの音のなんとすがすがしいことよ。
左注には「この歌は、承和の御嘗の吉備国の歌」とあります。「承和」は第54代仁明天皇の御代。「御嘗」は大嘗祭のことですね。仁明天皇の大嘗祭が執り行われたのは 833年のことです。「まかねふく」は「吉備」にかかる枕詞。漢字で書けば「真金吹く」で、鉄を溶解して精錬する意。吉備が鉄の生産で栄えた地なので、その枕詞となったとのこと。「細谷川」は細い谷川の意で、固有名詞ではないようです。