あふみのや かがみのやまを たてたれば かねてぞみゆる きみがちとせは
近江のや 鏡の山を たてたれば かねてぞ見ゆる 君が千歳は
大友黒主
近江国には鏡山という名の山が立っているので、わが君の長寿が今からもう見えています。
左注には「これは今上の御嘗の近江の歌」とあります。「今上」が指すのは第60代醍醐天皇。その大嘗祭が執り行われたのは 897年のことです。近江の鏡山を詠んだ歌は 0899 にもありました。よみ人知らずの歌ですが、そこに「この歌は、ある人のいはく、大伴黒主がなり」とあるのは、あるいはこの 1086 が黒主歌であるためかもしれません。