あめにより たみののしまを けふいけど なにはかくれぬ ものにぞありける
雨により 田蓑の島を けふ行けど 名にはかくれぬ ものにぞありける
紀貫之
雨が降ったので、濡れないように田蓑の島に今日行ったけれども、蓑という名がついているというだけでは、雨から身を隠してはくれないものであったよ。
詞書には「難波にまかりける時、田蓑の島にて雨にあひてよめる」とあり、第四句の「名には」には地名の「難波」も詠み込まれていることがわかります。雨が降ったので「蓑(=雨を防げるはず)」の名を持つ田蓑の島に行ったが、その名だけでは雨は防げずに濡れてしまった、という諧謔味のある歌ですね。